日記(パン屋)

今日は、駅中のパン屋さん「ぱんだらけ」に寄る。

こぢんまりしてはいるものの、

それなりに人気のパン屋さんだ。

店内はかなり狭く、

人2人通れるか通れないかくらいの規模感だが、

美味しいパンが焼きたてで並ぶ。


そんな「ぱんだらけ」に行くと、

今日は人だかりができていた。

なにごとか。

店の前の看板を見ると

「粉(ふん)ちゃん来店!11/13(日)14:00」

とある。

時計を見ると14:03、ちょうど今粉ちゃんが来店している感じか。

ラッキー。

粉ちゃんは「ぱんだらけ」専属の白いウサギのキャラクターで、

パンを買うともらえるレジ袋やスタンプカード、店内ポップなどでたびたび目にはしていた。

「ぱんだらけ」のパンは小麦だけでなく、米粉、ライ麦などさまざまな種類の粉が使われており

「粉ちゃん」という名前はそこから来ているらしい。

ゼミの友達から聞いた。


そんな粉ちゃんが今店にやって来ているらしい。

人だかりの隙間から中を覗くと、白い影のようなものがちょうど奥から出て来るところだった。

粉ちゃんの長いお耳は天井すれすれだ。

コック帽のお兄さんが、粉ちゃんを先導する。

お兄さんのコック帽も天井すれすれだった。

「粉ちゃん、みなさんにごあいさつを!」

お兄さんが促すと、

粉ちゃんは手を振って私たちの方にお辞儀してくれる。

かわいい。

人だかりから拍手が起こる。

かわいすぎて。

粉ちゃんがお辞儀から起き上がる。

その瞬間、バサバサっと音がして

粉ちゃんの周辺一帯の、パンが陳列されたカゴが床に落ちてしまう。

長いお耳にいかれてしまったようだ。

結構な量のパンが床にぶちまける。

それを見た粉ちゃんは慌てて、あたふたする。

するとしっぽが背後のパンカゴに引っかかり
バサバサっと床に落下する。

えげつない量のパンが床に落ちてしまった。

コック帽のお兄さんは苦笑する。

人だかりも苦笑する。

お兄さんは笑顔を作って

「粉ちゃんったらもう〜、一緒にごめんなさいしよう。」

と促す。

粉ちゃんとお兄さんは、お辞儀する。

「はい、ごめんなさ〜い」

「さ〜」のところでバサバサっと落下、

今度はお兄さんのコック帽一帯のパンカゴも
いかれてしまった。

ぶちまけるパン。

お兄さんと粉ちゃんの足元は、2度の落下で

床から15センチほどパンで埋まっている。

人だかりは苦笑し続けている。

店内にいたコック帽のおばはんがやって来て、
店前に出ていた

「粉(ふん)ちゃん来店!11/13(日)14:00」

の看板を撤去する。

申し訳なさそうに

「パン地獄だこりゃ」

と小声で言っていた。

たしかに。


コック帽のお兄さんは苦笑しながら

「ごめんなさい〜粉ちゃん一回休憩しようか、ね?」

と粉ちゃんをバックヤードに連れて行く。

連れていかれながら粉ちゃんは、

床の大量のパンにつまづいて転んでしまう。

お兄さんが引き上げようとするものの、

お兄さんも一緒に転んでしまう。

「あちゃ〜」

と苦笑お兄さん。

2人してパン地獄に絡め取られてしまった。

2人はバックヤードまで続くパン地獄を、

クロールの要領で掻き分けながら引き上げていった。

しばらくして、

お兄さんが1人で戻って来る。

なんとかつまづかずに戻って来れた。

「みなさん、本日のイベントはここまでにさせていただきます。なんかすいません。ご来店ありがとうございました。」

とだけ言い、捌けていってしまう。

去り際に

「それ落ちたの何のパン〜?」

と人だかりから子供の声。

お兄さんは

「これね、全部バゲットといっても過言ではないという感じかな!」

と返す。

子供は黙ってしまう。

お兄さんもうちょっとなんか、言い方があるだろう。



今日はもう帰ろう。

スーパーで、丸ごとソーセージを買って帰った。

丸ごとソーセージを食べながら

「ぱんだらけ」の公式インスタを見てみると、ストーリーが更新されている。

見ると、

「粉ちゃん来店イベント、来週に延期!」

とのことだった。

画面をスクショしてゼミの先輩にLINEで送る。

すると、

「行こ」

と言われ一緒に行くことになった。

楽しみ。

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