日記

今日は、鍋の具材を買いにスーパーへ。

買うものリストとしては

白菜
長ネギ
木綿豆腐
しいたけ

と言ったところだ。

スーパーにたどり着くと

入り口付近を小柄なおじいさんがうろうろしている。

見ると、背中にカゴを背負っていて

カゴの中には長ネギがパンパンに詰まっている。

手にはでっかいラジカセを提げており、

ラジカセから


ネギ〜いかが?
♪〜
とにかく長〜いよ
♪〜
ネギ〜いかが?
♪〜
それこそ、美味し〜いんだよ
♪〜
ネギ〜いかが?
♪〜
飛ぶように、まさに上空を飛ぶように売れてる〜よ
♪〜
ネギ〜いかが?
♪〜
ネギ〜いかが?
♪〜


とメロディに乗せて微音で流れている。

メロディと歌詞と絶妙な音量にきゅんとして、

せっかくならネギじいのネギを買ってみようかなあと思った。

どうせネギは買うつもりだったし。

私は、ネギじいに近寄り

「ネギ1本いただけますか?」

と声をかける。

ネギじいの胸元には『山田』とマジックで書いた養生テープが貼ってある。


ネギじいは背負っていたネギカゴを地面に置き、車止めに腰掛け

「ありがとうね〜1番長いの選ぶよ」

と言って、カゴを漁る。

ネギじいの声は、ラジカセの声と全く同じ声だった。

私は

「ラジカセ、えっと山田さんの声ですか?」

と聞いてみる。

するとネギじいは、なお丹念にカゴを漁りながら

「山田の声だよ。山田が録音したんだよ。」

とのこと。

「すごいですね。」

「タイトルは『山田が長ネギを背負って来る』だよ。」

ネギじいは、まだカゴの中をガサゴソ探しているのでもう少し聞いてみることに。

「思いがけない幸運みたいなことですか?」

「カモより山田の方がいいだろう。喋れるし。」

喋れるし。そうか。

「音量、絶妙ですね。」

「ラジカセが古いから6までしか上げられないんだよ。」

6。そうか。

「どこで録音したんですか?」

「スタジオβだよ。」

β。

ネギのことも聞いてみよう。

「山田さんが育てたネギなんですか?」

「違うよ。」

「どこで手に入れたネギなんですか?」

「いとこの、すみれ君の畑のネギなんだよ。」

「すみれさん、男性なんですか?」

「女性だよ。」

ぐらいのところで、

「これだよ。」

とネギを抜き取る。

2mほどある、長い長い長ネギだった。

カゴの中には、折りたたまれて入っていたようだ。

「長いですね。」

「自然薯ぐらい長いでしょう。」

「はい。」

「こいつは、長ネギと自然薯の、ハーフなんだよ。」

「というと?」

「交配させたということだよ。」

へえ。

「味もちょっと自然薯なんですか?」

「味は完全にネギだよ。」

「長さだけ自然薯?」

「長さだけ自然薯だよ。」

ネギじいは、長ネギの先端を持ち

鞭のようにしならせながら私に手渡す。

私はあわあわして、落としてしまう。

持ち慣れていないので、持ち方が分からない。

「重心が大事だよ。」

とのことだったが、結局2つに折ってエコバッグにしまう。

「いくらですか?」

と聞くと

「180円だよ。」

とのこと。

絶妙な価格設定だ。

ダメ元でPaypayが使えるか聞いてみると

「使えるだよ。」

とのことだった。

嬉しかった。

最後に、

『山田が長ネギを背負って来る』の歌詞の気になっていた部分を聞いてみる。

「飛ぶように売れてるんですか?」

「もう、上空を飛ぶように。」

「その歌詞、どこで思いついたんですか?」

「浜松町でだよ。」

結局、ネギじいとは1時間喋った。

確かに、カモよりよかったかも。

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