日記
今日は、ランチに出かける。
駅で友達のともこちゃんと待ち合わせをして、
1週間前から予約していたイタリアン「要塞」へ。
「要塞」はイタリア語で「mettyaoisii」と言うらしい。
ホームページに載っていた。
ともこちゃんと駅で落ち合い、お店に向かう。
「やっほー」
と、ともこちゃんは、黄色いワンピースでやってきた。
私は黄色いTシャツを着ていたので、
ひとしきり黄色で盛り上がった。
はしゃぎながら2人とも「要塞」の方向に向かって歩いているつもりだったが、
なかなか辿り着かないので改めてグーグルマップを見てみると、
完全に反対の方向に進んできてしまっていた。
残念だった。
「北かと思ってたら、まさかの南だったか〜」
と、ともこちゃん。
かなり北に来てしまっていたので、これから「要塞」に戻っても予約の時間には間に合わない。
店に時間変更できるか電話してみようと提案したものの、
ともこちゃんは
「いや、全然今からでもイタリアン以外の口にもできるよ」
と言うので、今日は「要塞」は諦めることに。
私も全然イタリアン以外の口にもできるなあと思ったので、
2人で歩きながら別のお店を探すことに。
じゃんけんで私が負けてしまったので、東の方向に進んでみることになった。
私は絶対に西の方がいいと思っていたのだが、仕方ない。
東の方向に歩いていると、
100mくらい先に赤々と「タコス」と書かれた看板が見えた。
ともこちゃんは指摘して、
「分かった、メキシコの口にしよう」
と言ったので、私も賛同した。
「でも100mでできるかなあ」
と聞くと
「いや10万円でできるかなみたいに!」
と返ってきた。なんじゃそりゃと思った。
結局、店にたどり着くまでに2人ともメキシコの口にすることができた。努力をしたからだ。
とにかくメキシコをインプットするために、まずネットで「メキシコ」と調べた。
それから、出てきたメキシカンハットの画像や、メキシコの伝統的な死者の祭りの動画、メキシカンハット作りの動画、メキシコ人のLOOKBOOK動画を見るなどした努力の甲斐があった。
ともこちゃんは、とうもろこしの栽培方法の動画を熱心に見ていた。
「ヒゲの本数とタネの本数は別に同じになってるわけじゃないらしいよ」
と教えてくれた。完全に何を言っているか分からなかった。
「タコス」の店員さんはみんな現地の方で、タコスは本格的でおいしかった。
タコス5個のセットがお得だったので、私とともこちゃんで5つ食べた。奇数だったけれど、なんとか仲良く食べられてよかった。
「アディダス!」
と厨房のおじさんに見送られ、西に向かって歩いて帰る。
ともこちゃんは
「いやアディオスみたいに!」
と言っていた。
厨房のおじさんは嬉しそうな顔をしていた。
ホールのおじさんはどんな顔をしているのか分からなかった。
店を出ると外はすっかり夕暮れになっていた。
夕暮れにお互いの黄色が映えているではないか、という話ではしゃいだ気がする。はしゃいだほどではないかもしれない。
すると、
「これからどうする?」
とともこちゃん。
飲みに行くとかそういうことなのかなあと思ったので
「行くなら行ってもいいよ」
とふわっと返事をすると、
「いやいや」
と返ってきた。
私が
「どういうこと?」
と聞いたタイミングで、
私の携帯に着信があった。
取ってみると、かつて予約していたイタリアン「要塞」からだった。
「要塞ですけど、どうしたの?大丈夫?どうしたの?何回もかけたんだけど、大丈夫?え?待ったんだよ?最悪だよもう。予約しといてさあ。待ったよ長いこと。そう、長いこと?うちのパスタぐらい長く長く、長いよ〜もう、うちのパスタは。3mくらい、言い過ぎか〜。でもそのくらい、インパクトとしては。そう、インパクトとしては。あとね、そう、広い心でも待ったんだよ?広い、わかる?うちのピザの面積くらい。え?わかる?広いよ〜。もう。何等分にでもできるくらい広い。面積的にね。え?大丈夫?あとねあとね、丸〜い気持ちで…」
のところで通話を切った。
まくし立てながらおじさんはちょっと楽しそうになってきていたし、
ちょっとこっちも楽しくなってきていたので、もう少し聞きたかったものの
ともこちゃんが続きを話したそうだったので仕方がない。
電話を切った私に、
「何の話?」
とともこちゃん。
ちょっと説明が難しかったので、いったん
「うーん、なんだろう、面積の話」
と言うと、
「そんなことだろうと思った」
と返ってきた。
それから、ともこちゃんと面積の話をしながら帰路についた。
ともこちゃんは基本的に広い面積より狭い面積の方が好きらしい。何においても。
だからいまだにiphone5SEを使い続けているとのこと。
「iphoneで1番狭いから」
と言っていた。
そこから先何を話したかは内緒にしておいてくれと言われた。なので内緒にしておく。
ふとさっきともこちゃんが言いかけた「これから」の話のことを思い出した。
何だったのかと尋ねると、
「だいたいこういう感じの話がしたかったから、大丈夫ブイ」
と返ってきた。ならいい。
ともこちゃんとは、そのまま駅で別れた。
別れ際、ともこちゃんは
「ナイキ!」
と言い残して去っていった。
何のことか分からなかったので私は
「ばいばい」
と普通に手を振った。
ともこちゃんは雑踏に消えていった。
今思うと、ともこちゃんは
「アディダス!」
を待っていたんだろうなあ。
とっさに「アディダス!」できなかった不甲斐なさで、
家に帰ってだらだらだらだらしてしまった。
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