記念日、何する

11月11日11時11分が何を意味するか分かりますか?
と英語で聞かれた。

頭の中はポッキーだったが、私は、
I don’t know.
と答えた。

私に尋ねてきたのは、イギリス出身の方で、母国語は英語だが、日本には、私が生きてきたよりも長く住んでいる。
ということで、流暢な、地方なまりを織り交ぜた日本語で会話が進む。


11月11日11時11分


それは、第一次世界大戦の終了を告げた日時。
アメリカや、ヨーロッパの多くの国で、黙祷が行われる、とのこと。

日本で、この事実が浸透していないことに、戦争へ参加した国として、平和ボケしている部分があるなあ、と思うと同時に、自分のもつ記念日という感覚へ違和感を抱いた。

記念日から、祝う日という意味を思い浮かべたからだ。

私はググりました。
記念 意味
検索。

大辞林 第三版の解説
きねん【記念】

① あとの思い出として残しておくこと。また、その物。
② 過去の出来事への思いを新たにし、何かをすること。
( https://kotobank.jp/word/記念-475179#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89 より一部抜粋)

誰も祝うなんて一言も言ってませんね。
終戦記念日なら、引用の②の意味で使われると思う。

何かをする。

のであって、その何かが、祝うことであるかもしれないが、人によっては、祈ることだったり、悲しむことだったり、怒ることだったりするだろう。

記念日を作るのは、そうやって何かをすることで、過ちや苦しみ、ときに喜びを、忘れないようにするためだと思う。

戻ることのない、その瞬間を。
地球が太陽の周りを公転する周期、地球が自転する周期によって位置づけた。
そうして、あの瞬間が、繰り返しやってくるように考えた。
その位置付けのおかげで、ある日や、ある時間に、記念すると決めることができる。

過ぎ去り、忘れゆくものを、どうにか失わないようにするためなのかもしれない。
繰り返してこられたことを記念したり、繰り返さないように記念したり。
何かをする。

誕生日だって、生まれたことを記念する日だと考えたいなあ、と思った。
人によっては、誕生日を記念することは、祝う以外の意味をもつかもしれないから。

回り回る地球に位置づけられた時間によって、様々なことを記念し、祝うのは、悪いことでないと思う。

出会った日を祝ってもいいし、出来上がった日を祝ってもいいし、新しくなった日を祝ってもいいし、終わった日を祝ってもいいし。

だけれど、人間が記念する際に、行うことは、祝うだけが全てじゃない。

私は、祝うだけの能なしだった。

ポッキーで盛り上がるのもいいけれど、忘れてはいけないことがあるという思いに、目を向ける記念日があるんだと覚えていたい。


私の頭の中がそうだったように、日本人が記念日を、祝う日、としか思わなくなると思うと怖い。

日本の辞典に、

過去の出来事への思いを新たにし、何かをすること。

という記念の意味に取って代わって、

過去の出来事を祝うこと

と記されるようになるなら。

記念するという言葉がもつ意味のほとんどを捨てることになると思う。

言葉は変わっていくものだけれど、その言葉の中身には、変わってはいけない気持ちがこもっていると思うと、日本語のもつ意味を大切にしたいと思った。


記念日、何する?



#言葉 #記念 #雑記