見出し画像

まるでマンガのようにスイスイ読んだ時代小説、『みをつくし料理帖』

唐突ですが、時代劇や時代小説がずっと苦手でした(小説=フィクション自体、めっきり読まなくなっていたのですが)。

時代劇はコスプレを見ているような感覚。自分の日常とは関係ないもののような気がしていました。

ところが昨年、高田郁さんの『みをつくし料理帖』(ハルキ文庫、全10巻)に出会って、ヘビーローテーションするほどに。

大坂生まれの主人公・澪が、縁あって江戸に渡り、いろんな出会いのなか、料理人として成長していくというシリーズもの。

もともとは夫が読んでいたのがきっかけ。夕食を食べ終わるやいなや、続きが気になって本を取り出していたり、「江戸には茶碗蒸しがなかったんだって(大阪にはあったけど)」と、本の中に出てくる話をしてくれたり。

小説、しかも時代小説に興味は……でも試しにと読み始めたところ、同じようにスキあらば本を手にとって、ページを繰るようになってしまった。

画像1

高田さんは、レディースコミックの漫画原作者をしていた方。登場人物のキャラクター設定、次はどうなる?という見事なヒキ……その経験が生かされているのを感じます。

また、高田さんは全体の構成をかためてから、執筆にとりかかるタイプとのこと。設計図がしっかりしているから、伏線回収がそれはもう見事です。

『みをつくし料理帖』は、幾度かドラマ化・映画化されていたようですが、本を読んでいる間、誰がどの役を演じたのかは一切見ないようにしていました。

舞台が現代ではない、文字だけで綴られた物語。なのに、人物やお店、町並みが浮かんできて、知る必要がなかったのでした。むしろ、自分の中に出来上がった世界(イメージ)をそっとしておきたくて、映像化についての情報を入れないようにしていたほど。

「止まらーん」と、まるで面白いマンガを読むように、すいすい読み進んでいました。「娯楽小説」という名前にふさわしい楽しみを教えてもらいました。

画像1

『みをつくし料理帖』は、こんな変化も、もたらしてくれました。

それは、「江戸時代には外食を楽しむようになっていたんだな」とか、「グルメランキングのようなもの(番付)やゴシップ記事もあったんだな」と、江戸と現代が地続きになっているのを感じられたこと。

書いているのは現代を生きている高田さん。時代考証など資料にもとづいて書かれているとはいえ、現代に創作されたもの。だから違和感なく読めたとも思うのです。

それでも、『みをつくし料理帖』を読んでから、時代劇を見たり、江戸時代について書かれた情報を読むのに抵抗がなくなっていたことに気づきました。

これって、すごいことだと思っています。時代は違えど、おんなじ人間の話。垣根をとっぱらってもらった。

全10巻ですが、特別巻として出ている「花だより』は続編と呼べるもの。こちらもぜひご一緒に。

*タイトル画像は、第4巻『小夜しぐれ』に出てくるエピソードをモチーフにしました。

ようこそ。読んでくださって、ありがとうございます。