初めて修復した仏像

質問箱の方に、「はじめて修復した仏像」について質問されたので、こっちにも書いておきます。
独立して初めて修復させていただいたのは、まだ埼玉県大宮に住んでいて、「独立したらどうしよう。子供も生まれるのに」と、うだうだしていた時に、ちょうど新潟県五泉市に住んでいた叔母の家に遊びに行ってたら、親戚の皆から、近くの慈光寺様に行ってみればいいと言われ、それまで営業活動なんかしたことなかった私は、しぶしぶ「ちょっと話を聞いて下さい」と、ジーパン姿で、初めての営業活動しました。慈光寺様は話を聞いてくれて、その場で歴代住職のお位牌の修復をさせていただくことになりました。そして、その次に同じお寺の聖僧文殊菩薩を修復させていただきました。このお像を修復している時に、父から、「独立祝いに何が欲しい?」と言われ、赤外線撮影のできるSonyのサイバーショットというカメラを買ってもらい、試しに御像の像底を見てみたら、肉眼では見えない「永正十五年、慈光寺、聖僧、檀那、道三」などの墨書が見えてとても驚きました。

修復の内容は下記
https://www.syuuhuku.com/page/rei2/butuzou/monnjyu/monjyu.html

肉眼で見えなくても、墨書が見えるものなんですね。見てみるものです。永正十五年は1518年で、江戸時代以前、室町時代の末期になります。
修復を終えて、そしてこれを、ブログに上げていましたら、当時東京国立博物館におられた山本勉先生がご覧になられて、お問い合わせいただき、資料をお渡ししたのが、山本先生と初めてお話させていただいたご縁にもなります。

そして、慈光寺様は新潟の曹洞宗の四ヶ道場の一つの古く格式の高いお寺だったので、新潟でご信用もいただけるようになって、お仕事いただけるようになって、新潟に越してしまったという。何か色々導いてくれた御像でした。

その後、この御像は、だいぶ経って五泉市の指定有形文化財にしていただきました。慈光寺様は、その県指定にもなっている杉並木でも分かるように、曹洞宗になる以前からの古刹ですが、江戸時代に火事で建物の殆どを焼亡し、復興されていますので、お寺の中でも中世の痕跡としても大事な御像です。お寺の名前も入っていますし。
「道三」というのが誰か分かると、より地域の歴史とリンクしていいなと思います。

最初に修復した御像で銘文が出てきて、自分では銘文の引きが強いのかなと思っていたりします。他の運は全くないのですが。。じゃんけんも最弱ですし。


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