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摺りの勲章

木版画をしていると、バレンダコというものが手指に現れます。

「バレン」とは、木版画を摺る時に用いる、竹皮で包まれた円盤状の道具の名称です。

それを握って和紙に圧力を与え、版木の絵具を染み込ませることにより、木版画の作品が完成します。

そんなバレンですが、ただ力任せに扱うわけではありません。

まず、紙の下部は、掌底と呼ばれる手首の付け根あたりの所に力を入れてバレンを動かします。

そして、紙の真ん中は、掌底に加えて指の第一関節に力を入れます。
(バレンは、料理上の「猫の手」のような形で握るので、指の第一関節が当て皮という黒い部分に接面します。)

最後に、紙の上部は、先述した指の第一関節のみに力を入れます。

このように、バレンの最適な摺り方というものは計三つの部分によって分かれています。

そんな中の第一関節に、バレンダコは現れます。

実際に摺りの職人さんの手を見ると、親指を除いた全ての指の第一関節に、丸い小さな突起がうかがえます。

それは、何千、何万回とバレンを動かした証で、まさに「勲章」のようなものです。

僕自身も、バレンダコに憧れを抱いていたので、初めて自分の右手に現れた時は感慨深かったです😭

ただ、木版画作家の場合、摺りだけに注力するわけではないので、当然彫りに多大な時間を費やす作品を制作する場合、その間にバレンダコは治りかけてしまいます。

この記事を書いている時も、明瞭なタコは小指にしか確認できません……。

木版画作家としての「摺りの勲章」を掴む為に、これからも地道に摺りを重ねてきます!

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