見出し画像

[report]『コレクション展ゴヤ版画』(神奈川県立近代美術館 鎌倉別館)


開催情報

「コレクション展 ゴヤ版画『気まぐれ』『戦争の惨禍』」
場所:神奈川県立近代美術館 鎌倉別館(神奈川県鎌倉市)
開催日:前期 2024.8.10.sat-9.8.sun(『気まぐれ』)
    後期 2024.9.10.tue-10.20.sun(『戦争の惨禍』)
入館料:250円(一般)

内容:ゴヤの四大版画集から『気まぐれ』と『戦争の惨禍』の計160点を、前後期に分けて紹介
※ 前期が『気まぐれ』、後期が『戦争の惨禍』に入れ替え

特集:「1959―スペインにいった現代日本版画展」
1959年スペインで行われた「現代日本版画展」に注目し、日本とスペインの間に展開した版画交流の一端を辿る。

※ 基本は撮影可。特集展示の一部(畦地梅太郎、浜口陽三など)が撮影不可。
(撮影不可マークのついているものが撮影不可)

主な登場人物

  • フランシスコ・デ・ゴヤ(1746-1828)
    スペイン北東、アラゴン地方の村サラゴサに鍍金師の息子として生まれる。
    1789年(43歳)スペインの君主カルロス4世の宮廷画家になる。
    46歳の時、病で聴覚を失い、決定的な転換となる。
    1824年(78歳)フランスに亡命。

  • 須田國太郎(1892-1961)
    洋画家。1919年から1923年にかけてスペインを中心に欧州へ留学。

  • 土方定一(1904-1980)
    神奈川県立近代美術館館長。エウダル・セラと交友し、1959年スペインで開催された「現代日本版画展」を企画。

  • エウダル・セラ(1911-2002)
    カタルーニャ出身の彫刻家。土方定一と交友。

単語

  • 【ゴヤ版画集『気まぐれ』】(原題 Losロス Caprichosカプリチョス)※  Los Caprichos は、スペイン語で「奇想」「気まま」の意味。
    ゴヤ四大版画集の一つ。1799年に刊行。全80点からなる。
    『ディアリオ・デ・マドリー』紙に打った広告には、この版画集は"人間のあらゆる愚かしさの中から「作者の空想」を最大限に発揮できる「嘲笑の対象」を選んで制作したものである"とし、"特定の個人の欠点を嘲笑する意図はもっていなかった"とある。
    教会の堕落、計略結婚、教育の不足、売春、迷信の蔓延など当時の社会の暗部への批評が描かれる。
    異端審問の告発を恐れて、わずか2日で販売を中止。売れ残った240部を銅板とともに王立銅版画院へ献上した。…にもかかわらず、ゴヤの存命中からスペイン国外でも流布し、芸術家たちに多大な影響を与えた。

 ※ 展示室内キャプションの内容より抜粋・編集

章構成覚書

・展示室入り口から向かって左手:ゴヤ『気まぐれ』80点を時計回りに展示。(前期)
・展示室入り口から向かって右手:特集「1959―スペインにいった現代日本版画展」

関連書籍

  • 雪山行二『ゴヤ ロス・カプリチョス: 寓意に満ちた幻想版画の世界』二玄社
    ISBN : 9784544020793
    (出版社品切れ・重版未定)

感想

美術館前の黄色の看板がクッキー缶のようで遠目に一見かわいらしい。
…「ゴヤの気まぐれクッキー」…"毒入り危険"な予感。

『気まぐれ』は、人間の愚かさ・目に見える醜さ・精神の醜さなどを、化け物や魔女などのモチーフに置き換え可視化した作品。
ゴヤの魔法の眼鏡をかけると、現実世界が魑魅魍魎が跋扈する魔界に見えるような、不思議な感覚。

全80点のうち、解説がついているのは9点。
不勉強につき、絵だけ見ても何を表現しようとしたのか、よくわからなかったりするのだが、モヤモヤと妄想するのも楽しい。

28.《しいっ》神奈川県立近代美術館  蔵
状況がよくわからないが、犯罪臭が漂っているような…
50.《チンチーリャ家の人々》神奈川県立近代美術館  蔵
51.《おめかしごっこ》神奈川県立近代美術館  蔵

…う〜ん…わからん。もう少し妄想していたい気もするが、識者の解説を聞いてみたい気もする。
雪山行二『ゴヤ ロス・カプリチョス: 寓意に満ちた幻想版画の世界』には、1点ずつプラド註釈書と雪山行二の解説がついているらしい。
この本は出版社品切だが、神奈川県立近代美術館(葉山)や国立西洋美術館、国立新美術館、東京都現代美術館などの図書室にあるようなので、機会があれば探しに行ってみたい。(…あるかな。作らないとないかも…)

34.《睡魔が彼女たちを圧倒する》神奈川県立近代美術館  蔵
…既視感というか、他人事に見えないというか、親近感というか…

↓ 魔女つながりでか、猫の登場率が高い。
 中でも下記Xポストの画像左下、当展広報担当者さんもおすすめの猫はかわいい。


展示室の右手側は、特集「1959―スペインにいった現代日本版画展」。
当時の神奈川県立近代美術館副館長・土方定一とカタルーニャ出身の彫刻家エウダル・セラとの交友により、1959年スペインで開催された「現代日本版画展」を中心に、神奈川県立近代美術館が1957年〜60年にかけて取り組んだ国内外での版画交流展の軌跡を辿る展示。
展示室入り口で、関連資料をまとめた小冊子が配布されている。
土方定一がエウダル・セラに宛てた書簡の和訳なども掲載されていて、興味深い。
展示室内には、版画家たちからの出品承諾書の葉書も展示されている。(撮影不可)
あっさり要件のみの葉書、挨拶に始まりみっちり文章が書いてある葉書、手書きの文字も様々で面白い。

3-22 《スペインにいく現代日本版画展 (画:村井正誠)》
1959/01/24-02/15
3_24 《 現代日本版画展(表紙:棟方志功)》
印刷物(カタログ)

版画作品の展示も良いが、意外と当時のポスターが楽しい。(広告も含めて)

2_2 《最近の世界版画展》
1956/11/10-12/09
3_40 《現代メキシコ版画展 (画:ルフィーノ・タマヨ)》
1960/07/16-08/14

たぶん、特集「1959―スペインにいった現代日本版画展」は展示替えなしの、全期展示だと思う。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?