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[report]『「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容』


開催情報

開催日:2023.12.2.sat-2024.2.4.sun
 ※展示替えあり
 前期:12.2sat-1.9mon
 後期:1.10.sat-2.4sun
場所:渋谷区立松濤美術館
入館料:一般800円
 リピーター割引:有料の半券と引き換えに、通常料金の2割引
 ぐるっとパスで入場可

内容:瀧口修造、阿部展也、大辻清司、牛腸重雄の4人を結びつける、日本写真史における特異な系譜の紹介
「日常現実のふかい襞のかげに潜んでいる美」(瀧口)

千葉市美術館→富山県美術館→新潟市美術館と巡回してきた最後の展示です。

動画撮影禁止。展示作品及び展示室内撮影禁止。

主な登場人物

  • ウジェーヌ・アジェ(1857-1927)
    「芸術家のための写真屋」という看板を掲げ、資料としてパリの街の写真を撮り続けた。

  • 瀧口修造(1903-79) 美術評論家、詩人、芸術家

  • 阿部展也のぶや(1913-71) 絵画と写真で活躍
    瀧口と「前衛写真協会」を結成

  • 大辻清司きよじ(1923-2001) 写真家
    瀧口、阿部の影響を受け、思想を継承する形で写真家の仕事を開始
    「コンポラ写真」を言説で後押し

  • 牛腸重雄(1946-83) 写真家
    大辻が教鞭を取っていた「桑沢デザイン研究所」に入学
    大辻と相互に刺激を与え合う

章構成---覚書を添えて

  1. 第1章 1930-40年代 瀧口修造と阿部展也 前衛写真の台頭と衰退
    ウジェーヌ・アジェ
    『妖精の距離』(アメーバ状の流動体、有機的なコスモロージュ)
    『フォトタイムス』(阿部の大陸撮影旅行ルポルタージュ)
    瀧口「写真の本質は"記録性の重視"と"オブジェの発見"」
    アジェ:「記録写真」感情移入を排除←瀧口「一種の物のけを感じた」
    阿部:被写体を本来の姿勢
       機能から切り離して「発見」する姿勢=「オブジェ」の理念
    「前衛写真協会」永田一脩いっしゅう濱谷浩はまやひろし
    「ナゴヤアバンガルドクラブ」下郷羊雄しもざとよしお、坂田稔
    「浪華写真倶楽部」小石清

  2. 第2章 1950-70年代 大辻清司 前衛写真の復活と転調
    『APN』のためのカット
     APN=AsahiPictureNews
     北代省三、山口勝弘、勅使河原蒼風、斉藤義重、長谷川三郎
    『アサヒカメラ』
    瀧口渡欧(アンドレ・ブルトンに会う)
    大辻清司実験室、文房四宝…モノとスナップ
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    大辻
    「写真に映るのはモノ自体の姿なのであってそれっきりなのだ」
      ・オブジェ思想:物体そのもの存在の奇妙さを浮かび上がらせる
      ・写真家である「私」という枠組みへの問い
     ストレートなそのままの写真こそがシュルレアリスム
     モノがこの世界に存在するということの不思議さ
     影は写真に撮られた平面上にあらわれると、たちまち作品と等価値な造形物となる
    1968「コンポラ写真」 
    「大辻清司実験室」
    「私」によって撮影される写真は「私」の興味関心をどうしても反映してしまう。
    結局、モノに「私」の精神世界が影響してしまい、モノそれ自体が写っているとは言えない。
    では、写真とは「私」という固定をした一枚のフィルターを通して見えてくるモノなのだろうか
    「私」という存在は実に曖昧なものでしかなく、その意味で、どのようなフィルターがそこにあるのか、自分自身でも確かめようがない。
    ではいったい、写真に写っているモノとは、カメラを向ける私とはなんなのか。
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    阿部
    「レンズの視野を尊重し、それを通じて何かを表現する」
    「カメラを対象に向けて、高さや位置を決めて、シャッターを切るまでが写真の作業」
    「なんでもないものがなんでもなく撮られて何かを訴えなければな不可ない」

  3. 第3章 1960-80 年代 牛腸茂雄 前衛写真のゆくえ
    高梨豊
    「日々」(関口正夫)
    大辻「撮影者の関心だけが唯一の動機」「生きる意味の検証」
    多木浩二の批判「牙のない若ものたち」
    牛腸→アジェ「ふしぎに物体感の詰まった客観的世界」「物体の詩」「意外性」「驚異の美しさ」「にがいユーモア」「超現実感」

関連書籍

美術館入り口でも販売していますが、どちらも書店流通あり。
honto、HonyaClub、書店でのお取り寄せができます。

  • 「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容」(2970円)
    当展覧会の図録
    ISBN  9784865411690

  • 「大辻清司実験室」(2200円)
    1975年1月号〜12月号の月刊「アサヒカメラ」(刊行当時の発売元:朝日新聞社)に連載された、大辻清司の写真と文章による連載「大辻清司実験室」を忠実に再現。
    ISBN  9784862494443

感想

適切な例えかわかりませんが…
北の方に明るい星あるなー→あれ北斗七星っていうんだ?→北斗七星っておおいぬ座なんだ…みたいに、点と点が繋がっていくような展示でした。
大辻清司がもっと知りたくなったので、書籍購入してみたい。

※1.26追記・訂正:北斗七星があるのは「おおぐま座」デスヨ。恥ずかし…

終了間際だったので、混んでいるかなーと思ったら、落ち着いて鑑賞できました。

美術館について

白井晟一せいいち設計

入り口
非日常への入り口のようでワクワクします
中庭?の噴水
メタリックで素敵
無駄に上り下りしたくなる螺旋階段

時々、館内建築ツアーを行っています。(金曜日18時〜が多いみたい)




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