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[report]『安井仲治 僕の大切な写真』


開催情報

『生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真』
場所:東京ステーションギャラリー(東京都千代田区)
開催日:2024.2.23.fri-4.14.sun(展示替え無し)
入館料:1300円(一般)

内容:写真家・安井仲治 生誕120年回顧展
   ヴィンテージプリント約140点+モダンプリント約60点+資料

愛知県美術館(2023.10.6-11.27)→兵庫県立美術館(2023.12.16-2024.2.12)と巡回しての最後。

東京ステーションギャラリー 公式サイト
https://www.ejrcf.or.jp/gallery/index.asp

※展示室内写真撮影禁止

主な登場人物

  • 熊谷守一(1880-1977)
    画家。「画壇の仙人」。安井生前最後の発表作は《熊谷守一氏像》

  • 望月芦都(?)
    写真家。銀鈴社を結成。

  • 米谷紅浪(1889-1947)
    写真家。銀鈴社を結成。

  • 梅阪鶯里おうり(1900-1965)
    写真家。銀鈴社を結成。

  • 杉原千畝ちうね(1900-1986)
    在リトアニア領事。「東洋のシンドラー」

  • 村山知義(1901-1977)
    小説家、劇作家。舞台「どん底」を演出。

  • 安井仲治なかじ(1903-1942)
    写真家。「偉大なる凡才」(花和銀吾の仲治追悼の言葉)

  • 小石こいし清(1908-1957)
    写真家。

  • 土門拳(1909-1990)
    写真家。安井を評価。

  • 森山大道(1938-)
    写真家。安井を敬愛。→写真集「仲治への旅」

単語

  • 【ヴィンテージプリント】撮影まもないうちに、写真家本人または専属の「プリンターがプリントしたもの。

  • 【ピグメント印画法】顔料でイメージを再現。顔料を自ら調整したり、印画時にトリミングしたり、絵画に近い仕上がりになる。

  • 【ブロムオイル印画】銀塩白黒写真の銀をインクに置き換える写真技法

  • 【オイルトランスファー】

  • 【ソフトモンタージュ】複数の写真を1枚の写真に合成する

  • 【絵画写真】1920年代、芸術表現として絵画に並ぶ写真表現を目指した写真。主にピグメント印画法を採用。

  • 【銀鈴社】 安井仲治、米谷紅浪、梅阪鶯里、望月芦都で1927年に結成した写真団体

  • 【丹平写真倶楽部】浪華写真倶楽部のメンバーの一部で結成した写真団体

  • (安井)【半静物】ものとものを組み合わせて、あるいは秩序ならざる秩序を示す「もの」を見つけ出して撮影すること

  • 【デペイズマン】異化作用(シュルレアリスム)

時系列覚書

1903 安井仲治 現在の大阪市中央区に生まれる
1914 第一次世界大戦はじまる
1918 第一次世界大戦終わる
1922 「浪華写真倶楽部」に入会
1927 「銀鈴社」結成
1929 世界経済恐慌
1930 「丹平写真倶楽部」に参加
1931 「独逸国際移動写真展」(ドイツから来た展覧会)
1933 小石清「初夏神経」
1937 日中戦争勃発
1939 第二次世界大戦はじまる
1940 杉原千畝、ユダヤ人難民に通過ビザを発行
1941 太平洋戦争はじまる
1942 安井仲治 病没(38歳)

章構成覚書(未整理の自分用メモ)

  1. Chapter 1:1920s- 仲治誕生
    「芸術写真」の流行
    ソフトフォーカス
    表面が画用紙のように凸凹している
    ブロムオイル
    [10](猿回しを)《眺める人》[11]《猿回しの図》
    [13]《或る学生の像》(田中雨月)「危ないような危なくないような画」
    回覧同人誌『AMITIE』(明星商業学校同級生)
    [14]《或る船員の像》トリミングして縦長に。日焼けした肌をブロムオイルで表現。
    [25]《路傍閑語》ゴム印画
    [28][42][45]銀鈴社

  2. Chapter 2:1930s-1 都市への眼差し
    「丹平写真倶楽部」に指導者的立場で参加
    1931「独逸国際移動写真展」の影響 芸術写真→新興写真
    [37]《平野町》電柱と電線、縦と横
    [41]《工事場》労働者の写真
    (安井)「そんな光景にカメラを向けるのは罪を冒してゐるのではないでせうか。或る人はさう云ふ風景のどこが美しいんだと反問もするだらう。美しいと答へるには気が咎める。美しくないならば写す必要はない。」
    [45]-[51]メーデーの写真
    [52]-[54]「該当断片」三部作
    小石清「初夏神経」

  3. Chapter 3:1930s-2 静物のある風景
    [101](安井)「「美しきもの」は実は随所にある。誰かが良き眼でそれを抽出してくれれば、吾々人間に感ぜられる美の範囲がそれだけ拡張されるのだ。」
    [102]「半静物」
    1937 村山知義「どん底」
    [112]-[116]「朝鮮集落」

  4. Chapter 4:1930s-3 夢幻と不条理の沃野
    1937 盧溝橋事件→社会の緊張感高まる
    国防のため「撮影禁止」→室内・静物モデルが撮影のメインに
    「新興写真」の退潮→シュルレアリスムを取り入れた「前衛」
    [140]半静物
    (安井)「調和ならぬものを調和するように組み立て」「現地でモンタージュするのが新時代の静物写真である」
    「心を空にして」「道を歩いていれば」
    マックス・エルンスト
    [155]《静物》(安井)「玉葱はまろく 胡瓜は曲り居り つくづく見れば 暫くは心足らひて 楽しや楽し」

  5. Chapter 5:Late 1930s-1942 不易と流行
    芭蕉「不易流行」→「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず」不易=いつまでも変わらないこと 流行=時代に応じて変化すること
    [166]-[171]被写体との距離感をその都度変える
    [172]-[174]「白衣勇士」
    [175]-[179]「山根騎馬団」
    杉原千畝「命のビザ」=ナチス・ドイツの迫害から逃れるユダヤ人難民に発給
    [180]- [190]「流氓ユダヤ」
    [196]-[197]「雪月花」
    [196]《月》(安井)「時難非常であるにしても月は月であり花は花である」「心は世のうつりかはりと共にある」
    [198]-[200]「上加茂にて」

    モダンプリント
    1950年代 棚橋紫水
    2004年 比田井一良
    2023年 比田井一良=プリント
        (株)アフロ=データ修正
        高村達=ネガデジタイズ

    ネガコンタクトプリント
    福島辰夫・福島都が1970年代以降に制作したものを複写

安井が暗室に通じる扉の上部に飾っていた浮世絵
・歌川芳員 《外国写真鏡之図》
・月岡芳年《新柳二十四時 正午十二 時》
・歌川芳員 《仏蘭西》

関連書籍

展覧会図録
「安井仲治作品集」3740円(税込)
河出書房新社
ISBN 9784309257235
※書店流通あり。

「安井仲治 ネガコンタクト集」月曜社より今秋刊行予定…とのこと

こんなチラシが置いてあったよ

関連サイト

↓兵庫県立美術館内の安井仲治展のページ(展示終了)
 3館の中では最も情報量が多い。
「展示構成」の文章は、東京ステーションギャラリー展示室の章の解説と同じ。(たぶん)

↓愛知県立美術館の中の安井仲治展のページ(展示終了)

↓Tokyo Art Beat サイト内の3館キュレーターが語り合う記事

↓AMeeT サイト内 兵庫県立美術館学芸員 小林公さんのインタビュー記事

↓ART AgendaA 内 安井仲治展紹介記事

感想

…ここまで記入するだけで、すっかり疲れてしまったので、感想は手短に。

難しいこと抜きに、安井が「ほら、見て!美しいね!」と見せてくれたものを、「うわー!ほんとだ、きれいだね。おもしろいね。ふしぎだね。」って、楽しく観れる展示でした。

チケット半券とチラシ

入り口で渡されるチケットの半券(?)は何種類かあるようです。
私のは《海辺》でした。
…半券って言っても、もぎるわけじゃないんですが。
半券は記念にスクラップしているので、貰えたら嬉しいです。

時系列の章構成で、安井の人生を辿っていきます。
最初は1920年、デビュー当時。
日本のような、そうでないような…「どこか」のような風景、「思い出せない夢」を見ているような不思議な感じ。
「芸術写真」というのを初めて見たのですが、紙の表面が画用紙みたいに凸凹で、もわんとしたセピアカラーで「絵」のようです。
どうやって作るのか見てみたい。
落款が押してある作品も多く、「写真」というより「絵」に見えます。

展示作品の隣にネガコンタクトプリントがあるものが多く、安井が何を選び、何を選ばなかったか、どこをトリミングして何を組み合わせたか、前後の時間に何があったかがわかるのが、とても面白かった。

展示中、一番好きな写真は[155]《静物》。玉葱と胡瓜の写真。解説込みで。

お膝元だけあって、兵庫県立美術館が一番展示内容が濃かったようです。
…兵庫県立美術館行きたかった…
Instagram 見ると、安井仲治の「写真家四十八宜しゃしんをうつすひとよんじゅうはちよろし」が展示されていた模様。
…見たかった…

京「きようの写真より明日の写真よろし」

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