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[report]『春の江戸絵画まつり ほとけの国の美術』(後期)府中市美術館


開催情報

『春の江戸絵画まつり ほとけの国の美術』
場所:府中市美術館(東京都府中市)
開催日:2024.3.9.sat-4.7.sun(前期)
    4.9.tue-5.6.mon(後期)
    ※大幅な展示替えあり
入館料:700円(一般)
 ぐるっとパスで一般140円割引
 2度目は半額!

内容:画家たちの制作の根底にあった「仏教」をキーワードに、現代人の心を魅了する様々な作品を見渡す。
<見どころ>
 京都市・二尊院《二十五菩薩来迎図》全17幅※去年修復
 金沢市・照円寺《地獄極楽図》(後期)※美術館では初公開
 曾我蕭白《雪山童子図》(後期)、伊藤若冲《石峰寺図》(前期)
 長沢蘆雪《子犬図屏風》(通期)※初公開

※個人蔵率高め
※展示室内写真撮影不可

主な登場人物(生年順)

  • 鍾馗しょうき
    道教の神。鬼の天敵。

  • 富干ぶかん(唐代618-907)
    天台山国清寺の僧。寒山拾得と並ぶ三聖。虎を飼い慣らしたとされる。

  • 寒山拾得じっとく(唐代618-907)
    天台山国清寺の道士。
    寒山:経文や筆を持つ。
    拾得:箒を持つ。

  • 源信(942-1017)
    天台宗の僧。「往生要集おうじょうようしゅう」で"地獄"と"極楽"の様子を書き、どうすれば極楽往生できるか説いた。

  • 土佐行広ゆきひろ(?)1406頃?
    絵師。初めて「土佐」性を名乗ったといわれる。

  • 俵屋宗達(1570?-1643?)
    絵師。

  • お竹(1580-1638)
    江戸日本橋、大伝馬町の佐久間家に奉公。慈悲深く「生きた大日如来」と呼ばれ、死後「於竹おたけ大日如来」として信仰された。

  • 長谷川等意とうい(?)江戸前期1603-1680頃?
    絵師。

  • 円空(1632-1695)
    僧。修行のため日本各地を巡り、おびただしい数の仏像、神像を彫った

  • 徳川綱吉(1646-1709)
    江戸幕府第五代将軍。「生類憐みの令」を出した。

  • 白隠慧鶴えかく(1685-1768)
    日本臨済禅の中興の祖と称される僧。

  • 近藤勝信(?)1716-36頃活動
    浮世絵師。

  • 伊藤若冲じゃくちゅう(1716-1800)
    絵師。

  • 遂翁元盧すいおうげんろ(1717-1789)
    臨済宗の僧。

  • 木喰もくじき(1718-1810)
    真言宗の僧。全国を遊行しながら仏像、神像を作った。

  • 曾我蕭白しょうはく(1730-1781)
    絵師。自称曽我派末裔、蛇足十世。

  • 円山応挙(1733-1795)
    絵師。

  • 佐脇英之えいし(1745-1791)
    絵師。佐脇嵩之の門人。→英一蝶へと連なる画系

  • 毛利就禎なりさだ(1745-1801)
    長州藩一門家老 阿川毛利家11代当主。

  • しとみ関月かんげつ(1747-1797)
    絵師。挿絵画家柳原源二郎と同一人物?

  • 狙仙そせん(1747-1821)
    絵師。猿の図が得意。

  • 豪潮ごうちょう(1749-1835)
    天台宗の僧。

  • 仙厓義梵せんがいぎぼん(1750-1837)
    臨済宗の僧。

  • 在中ざいちゅう(1750-1837)
    絵師。原派の祖。

  • 長沢蘆雪ろせつ(1754-1799)
    絵師。円山応挙の弟子。

  • 酒井抱一ほういつ(1761-1828)
    絵師。尾形光琳に私淑。姫路藩主酒井忠以の弟。

  • 文晁ぶんちょう(1763-1840)
    絵師。南宋画と北宋画を融合させた独自の漢画風を展開。関東の絵画界の大御所として活躍。

  • 狩野栄信ながのぶ(1775-1828)
    御用絵師。木挽町狩野家、惟信これのぶの子。子の養信おさのぶとともに江戸狩野を中興させた。

  • 喜多武清ぶせい(1776-1856)
    絵師。

  • 風外本高ふうがいほんこう(1779-1847)
    曹洞宗の僧。画僧。

  • 柴田義董ぎとう(1780-1819)
    絵師。生家は廻船業を営む豪商。

  • 歌川国芳(1797-1861)
    浮世絵師。初代歌川豊国の門人。

  • 鈴木鵞湖がこ(1816-1870)
    絵師。

  • 中林竹渓ちっけい(1816-1867)
    絵師。文人画家中林竹洞の子。山本梅逸に学ぶ。

  • 狩野雅信ただのぶ(1823-1880)
    御用絵師。狩野養信の子。

  • 冷泉為恭れいぜいためちか(1823-1864)
    絵師。京狩野 狩野永泰の子。攘夷派から敵視され、長州藩の陪臣により殺害された。

  • 河鍋暁斎きょうさい(1831-1889)
    浮世絵師、画家。

  • 藪野健(1943-)
    画家。府中市美術館 館長(2015-)。

  • 金子信久(1962-)
    府中市美術館学芸員。当展担当。

…「絵師」「画家」の違いがよくわからず。とりあえず江戸より前あたりの人は「絵師」に統一してみる。

単語

  • 【涅槃図】お釈迦様が入滅したときの様子を描いた図

章構成覚書

  1. 1章 浄土と極楽
    源信「往生要集」
     釈迦「この世をどう生きるか」
     人々「死んだらどうなるのか」→浄土信仰
    京都市・二尊院《二十五菩薩来迎図》
    金沢市・照円寺《地獄極楽図》
     【天道】良い行いをした人が行く。一番マシな所。若いうちは空を飛んだり楽しいが、老いると能力が衰え追い出される。輪廻がある。
     【人道】品方向性に生きた人が行く。生・老・病・死などの四苦八苦がある
     【阿修羅道】阿修羅と帝釈天が常に戦争状態。阿修羅的には正義の戦争だが、一般の人々は巻き添えで苦しむ。
     【畜生道】人から施しを受けるばかりで、他の物に償をしなかった物が行く。弱肉強食の世界。
     【餓鬼道】欲にかられた人が行く。常に飢えと渇きに苦しむ。
     【等活地獄】ここから地獄。八つの罪のうち1つを犯したものが行く。
     【黒縄地獄】等活地獄の十倍苦しい。
     【衆合地獄】黒縄地獄の十倍苦しい。
     【叫喚地獄・大叫喚地獄】
     【焦熱地獄・大焦熱地獄】
     【阿鼻地獄】苦の中の苦
    冷泉為恭《小野小町木像模写》敦賀市立博物館….無常

  2. 2章 禅が教えてくれること
    「生きている今、世界や自分をどう見つめ、どう生きるか」
    "虎と猫の違いを説明せよ"
    "なんでも言葉や理屈で表せると思うな"→《達磨図》
     「どう見ても」→「見性けんしょう成仏じょうぶつ
      自分自身の心を見つめることが悟りにつながる
    "小さな師匠"→《叭々鳥はっかちょう図》
    "それは絶対なのか"→仙厓義梵《文殊菩薩像》…獅子???「厓画がいが無法むほう
    "幸せが何より"→《恵比寿図》

  3. 3章 古典美としての仏画
    古に学ぶことから生まれた、江戸時代の優れた仏画
     冷泉為恭、 酒井抱一

  4. 4章 ほとけの国の人気キャラ
    ・寒山拾得…曽我蕭白、原在中、徳川綱吉
    ・富干禅僧
    ・鬼…(鍾馗)
    ・お不動さん(不動明王)
    ・布袋さま
    ・観音さま
     白隠慧鶴《観音図》
    「観音菩薩はある時は大臣の姿で現れ、またある時は婦人の姿となって現れて、われわれを救ってくださるという。では、君に尋ねる。いかなる姿でも現れないとき、観音菩薩の全身はどこに隠れているのか」
    ・大仏さま
    ・羅漢さん(阿羅漢)
     敬われるべき人。修行して最高位となった人。ベースは「普通のおじさん」なので「超越した力」を発揮しているシーンを描いた絵が多い。
    ・お竹大日

  5. 5章 円空の仏像
     「霊木像」

  6. 6章 涅槃図と動物絵画の時代
     陰暦2月15日 涅槃会

関連ページ

↓ 公式 予告動画(15分)

↓《二十五菩薩来迎図》のある二尊院の公式サイト

↓《地獄極楽図》のある照円寺の公式サイト

関連書籍

  • 公式図録『ほとけの国の美術』
    3080円(税込)
    ISBN : 9784808712952
    ※書店取り寄せ可

  • 『日本の動物絵画史』金子信久 (著)
    1485円(税込)
    ISBN : 9784140887134
    …当展担当学芸員金子信久氏著書

感想

前半は天国と地獄編、後半はクセつよ個性派俳優の舞台劇見てるような気持ちになりました。
…濃いです。

桜吹雪の美術館前
展示会場入り口左手で垂れ幕の《二十五菩薩来迎図》の菩薩様がお出迎え
この先、展示室は撮影不可。
この菩薩様の後ろのTVで照円寺《地獄極楽図》の説法ダイジェスト版他2本が放映中
(3本全部見たら30分くらい…たぶん…)

展示室に入って、順路は右奥に進みます。
いきなりクライマックスに京都市・二尊院《二十五菩薩来迎図》が登場!
風景を描いた襖を背景に菩薩様が降り立ちます。
金色の衣の細かい模様は、ほぅ…と、ため息が出る美しさ。
それぞれ楽器を手にしていて、天上の音楽が聞こえてきそう。

続いて金沢市 照円寺《地獄極楽図》。
えっ!良い行いをしただけじゃ、極楽浄土には行けないんだ?
地獄Lvはいろいろあるんですが、最初のLvで心が壊れて違いがわからなくなる気がします。

↓地獄LvMax
 流石にここの鬼は中ボス級がうようよ。

締めは極楽浄土で、こっちに行けるよう頑張りましょうね、という流れ。

右側会場は以上。反対側の会場に進みます。
ここで一旦、展示会場を出て、TV《地獄極楽図》の説法を見るのもあり。
2階から出なければ、展示会場に戻れます。

左側会場は禅僧の絵からスタート。
禅問答に考え込みます。

40.曾我蕭白《寒山拾得図》
寒山拾得図はいろいろありますが、見かけたら速攻逃げたいタイプと、純真子ども系がありますね。
私の中でお近づきになりたくない寒山拾得No.1 は顔輝のだったんですが、曾我蕭白のも互角にヤバそうです。

46.曾我蕭白《雪山童子図》
 童子の狂気感が凄いです。
 鬼は皮膚はブヨブヨなのに、牙や爪は鋭利で、角はゴツゴツ硬そうで…なんですか、この角。禍々しい?全てが強烈。

47.近藤勝信《鍾馗と遊女図》
 鍾馗と遊女が崖の上にいて、糸を垂らして鬼を釣っています。
 ヨーヨー釣りしているみたいで、笑ってしまいます。

55.河鍋暁斎《波乗り観音図屛風》
 タイトルもすごいですが、絵のシチュエーションがわかりません。
 左端に白い衣の儚げで美しい菩薩が鯉に乗って左側に去っていくようです。
 中央に赤い衣の女性がキリッと立ち、菩薩を見ています。
 その後ろから、なぜか鬼が「菩薩様、待って〜」って感じに走ってきています。
 パッと見、映画やドラマでヒロインが電車などで去っていくのを後ろから走って追いかけるシーンみたいですが、配役が謎。
 特定の物語を描いたのではないようなんですが、なんなんだこれは?

72~78.お竹大如来
 不勉強で「お竹大如来」初めて知りました。
 傘が後光になっていたり、手拭いが羽衣になっていたり、楽しい!
 如来になったお竹さんに、町の人々が口々に「お金持ちになりたい」など勝手なお願いをしているのは、スーパーで七夕の短冊を見ているようで笑ってしまいました。

80-83.円空
 ここで円空も観れると思っていなかったので、嬉しいサプライズ。

86.八相涅槃図
涅槃図は、どんどんエスカレート&脱線していくのが楽しい。

外の看板から(部分)
珊瑚をくわえる鯨が可愛い

伊藤若冲は88《白象図》、101《猿蟹図》、109《垣豆群虫図》の3点。

館内エレベーター前に飾ってあった垂れ幕の《白象図》

《白象図》は眉毛が美しかった。
《猿蟹図》は猿カニ合戦を描いたもののようなんですが、猿が極悪顔でビックリ。
カニは、お人好しそうにポヨっとしてて、「カニさん、逃げてぇー!」って叫びたくなります。
若冲ってこういう絵も描いたんですね。
猿のフォローなのか、極悪猿の隣は猿の聖母子図のような森狙仙《猿図》が展示されていました。

…と、かなり濃いい展示コース。
締めのデザートは可愛い蘆雪の子犬。
俵屋宗達と狩野英信の子犬も並んでいますが、宗達のは可愛いけど、狩野英信のは正直かわいくない。
…「かわいい」とは何ぞ?


子ども向けイベント「ほとけの国の探検隊!」
”年齢制限はありませんので、大人の方の参加もお待ちしております”とあったので参加。
ポストカード1枚もらえます。
伊藤若冲《福禄寿図》をチョイス

展示室出たところに工作コーナーあり。

ぬりえ:大サイズと小サイズの2種。これは大サイズ。
家に持って帰ったらやらない気がして、頑張って会場で塗りました。
動物の種類が多いので、結構時間かかります。
ポケット御本尊:3種から選べます。金色でスタンプを押して完成。

今回の展示…
帰宅してから、あの絵どんなだったっけ?ってネットで探しても、多くが個人蔵でヒットしません。
ムラムラと図録が欲しくなってしまいます。
…書店でも買えるよ…と悪(?)の囁き…

府中市美術館 コレクション展(2024.3.9.sat-5.6.mon)

企画展に時間をかけすぎ、駆け足で通り抜けるコレクション展。
「黒」のコーナーで小林清親《天王寺下衣川》と《お茶ノ水螢》が観れたのが嬉しい。

【展示構成】

  • 色彩のイマージュ(黒・赤・青・黄・緑)
    色をイメージした展示

  • 牛島憲之の街歩き

  • 現代美術コレクション 2000-2020
    青木野枝、福士朋子、O JUNなど

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