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[report]『空間と作品』(アーティゾン美術館)
※ タイトル画像:円山応挙《竹に狗子波に鴨図襖》公益財団法人石橋財団 蔵
開催情報
『空間と作品 作品が見てきた景色をさぐる』
場所:アーティゾン美術館(東京都中央区)
開催日:2024.7.27.sat-10.14.mon
入館料:1200円(ウェブ予約チケット)
※ 窓口販売チケットは1500円
※ 学生無料(要ウェブ予約)
内容:石橋財団コレクション144点によって、美術品がどのような状況で生まれ、どのように扱われ、受け継いでこられたのか、その時々の場を想像・体感する。
※ スマホとイヤホンを持参していくと、アプリで所蔵作品の無料音声ガイド(ナレーション:細谷佳正)が聞ける。
アプリは事前にダウンロードがおすすめ。(メールでユーザー登録が必要)
細谷佳正ナレーションは館内専用Wi-Fi接続時のみ。その他の回線・場所では自動読み上げによる音声。
※ 本展図録なし。
※ コレクション展だが、初公開の作品あり。
※ QRコード読み込みで追加の解説が読める(館内のみ)。スマホやタブレット持参推奨。
章構成覚書
6F
【祈りの対象】
円空=修行僧
雨乞い、治水、五穀豊穣、病気平癒…村人たちの、日々の暮らしの中の祈りの対象としての仏像
【依頼主と】
カミーユ・ピサロ《四季》
依頼主:ギュスターヴ・アローザ(1818-1883)銀行家
依頼:別荘のダイニングルームの戸口の上を飾る「四季図」
【持ち主の存在】
パブロ・ピカソ《腕を組んですわるサルタンバンク》
持ち主:ウラジーミル・ホロヴィッツ(1903-1989)ピアニスト
スタンウェイ社のグランドピアノ2台が置いてある自宅の居間に飾った。
演奏の合間に、このピカソの絵の下にあるソファに寝そべり、客人たちと楽しく過ごした(らしい)。
【建物の一部】
円山応挙《竹に狗子波に鴨図襖》
壁そのものや襖といった建具に描く
【My favorite place】
美術館で感じ得たものを自分の日常に持ち帰る。
現代版お気に入りの場所の試み。
【場】
「空間と作品」は、介在する「人」の存在によって成り立っているといえる。
今、作品に対面している自分が、新しい関係性、新たな場をなす。
5F
「ある時期に作品を持っていた人」
どんな人が持ち、どんな場所で、どのようにみられていたのか
青木繁ー青木の顕彰に尽力した友人たちが所有していた作品
【作家の交友関係】
古賀春江 ー 川端康成
瀧口修造 ー 空閑俊憲、岡崎和郎、海藤日出男
【画商】
ヴァシリー・カンディンスキー ー エルンスト・バイエラー
ジャクソン・ポロック ー ベティ・パーソンズ
モーリス・ド・ヴラマンク ー アンブロワーズ・ヴォラール
メアリー・カサット ー デュラン=リュエル
【絵かきが他の作家の作品を】
ジョルジュ・ビゴー ー 岡田三郎助
古賀春江、平治物語絵巻六波羅合戦巻断簡 ー 安井曽太郎
パブロ・ピカソ ー 海老原喜之助
伝 俵屋宗達 ー 前田青邨
【著名人】
ジョージア・オキーフ ー ポール・アレン(マイクロソフト社共同創業者)
パウル・クレー ー ミース・ファン・デル・ローエ(建築家)
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック ー ミラン・オブレノヴィチ4世(セルビア公)
野口小蘋 ー 明治天皇
横山大観、竹内栖鳳、板谷波山 ー 石橋正二郎
破れ網に桜花散らし蒔絵弁当箱 ー 仁孝天皇
コンスタンティン・ブランクーシ ー ブランシェット・ロックフェラー
【依頼主】
ピエール=オーギュスト・ルノワール ー ジョルジュ・シャルパンティエ(モデルの父)
藤島武二 ー 赤星鐡馬(新居の食堂を飾る壁画)
【大名】
武蔵野図屏風 ー 水野家
青磁鉄斑文瓶(飛青磁花瓶)、禅機図断簡 丹霞焼仏図 ー 筑前藩主 黒田家
【コレクター】
カミーユ・コロー ー 林忠正(フランスで日本美術を紹介)
ジャン=フランソワ・ミレー ー 和田久左衛門
エドガー・ドガ ー 三井高精(三井系会社重役)
エドゥアール・マネ ー 松方幸次郎
クロード・モネ ー 黒木三次
アンリ・マティス ー 細川護立
ポール・セザンヌ ー 原善一郎
パブロ・ピカソ ー 福島繁太郎
スペイン・ギリシア陶器 ー 田中不二麿
シュメール・パルミュラ古代彫刻、ギリシア陶器 ー 石黒孝次郎
4F
額縁・表装裂(表具に扱われる布)に注目。
【額へのこだわり 画家編】
岸田劉生、青木繁、山下新太郎、藤田嗣治
【額へのこだわり 持ち主編】
【古美術】
酒井抱一/鈴木其一、青木木米 他
【額の様式】
フランス:
ルイ13世様式:
ルイ14世様式:幅が広く装飾紋様が複雑になる
ルイ15世様式:全体的に曲線的で立体的な彫りになる
ルイ16世様式:シンプルになる
イギリス:18世紀中頃:繊細な彫り
オランダ:17世紀頃:
スペイン様式:なめらかな彫りと黒漆、重厚感
イタリア様式:16世紀、イタリアで額の体裁が整った
【この人といえば…この画家にはこのスタイルの額】
ジョルジュ・ルオー:
パブロ・ピカソ:
ジョルジュ・ブラック:
【その後の展開】
白い額
箔、漆、塗装をほどこさない、木の素地のまま
黒のフレーム
無し「裸でよければ、服も着ないし。なくてもよいなら、額は付けない。」(野見山暁治)
【作品を保護している額を外してみると 思わぬ情報に出会うことも】
【美術館と額】
感想
美術品が、どのように生まれ、どのように扱われ、受け継いでこられたかに想いを馳せる展示。
6Fは作品を置く空間、5Fは作品を所有した人、4Fは額縁に着目。
展示内容は所蔵品のコレクション展なので、見覚えのある作品が多いが、切り口が違うので新鮮。
中でも6Fの展示は楽しい。
かつて村落のお堂で村人たちに祈りを捧げられてきたであろう円空仏、銀行家のダイニングルームの戸口の上を飾ったピサロの風景画、ピアニスト・ホロヴィッツの居間に飾られたピカソ《腕を組んですわるサルタンバンク》、襖として描かれた応挙《竹に狗子波に鴨図襖》…
1室に数点のみを展示し、じっくり見せる。
円山応挙《竹に狗子波に鴨図襖》が、ガラスなしで自然に近い照明で畳に座って観られる貴重な機会!(あまり近づくとアラームが鳴るらしい)
キラキラと輝く金の木漏れ日の中、戯れる子犬の可愛らしいこと。
目線がいつもより低いので、「おいでおいで」と手を差し出したくなる。
![](https://assets.st-note.com/img/1722583001174-YoX7MqIH4e.png)
![](https://assets.st-note.com/img/1722820257885-AEj5t3QuQZ.png)
…このコーナー常設にして、時々襖を入れ替えてくれないかなあ…
続く「My favorite place」は、小さなスペースでも、高価な美術品でなくても、日常の中に美術品を取り込んだお気に入りの場所を作ってみませんか、という提案。…ここは美術館なので、全部本物の豪華版ですが…
![](https://assets.st-note.com/img/1722822036323-10SslmQVxw.png)
ソットサスのサイドボードの上に、ポンポンのしゃこが乗ってるのがめちゃめちゃかわいい!
…「あつまれ どうぶつの森」を思い出してしまった。
いいなあと思ったのは、佐伯祐三のスペース。
夜に一人、ここにぼんやり座って眺めたい。
…そういえば、以前ベッドサイドにポストカードを飾っていたのだが、今や埃をかぶったグッズ集積場と化している。一度片付けて、このくらいスッキリしたい…
![](https://assets.st-note.com/img/1722585725771-FuA5lMNz3e.png)
※ この椅子には座れません
6F最後「場」のコーナーは、観ている自分も、他の観客も作品と共に「場」を成していることを感じさせる不思議な空間。
5F 持ち主…
![](https://assets.st-note.com/img/1722825524467-ZJNNRThVsW.png)
4F 額縁…
![](https://assets.st-note.com/img/1722824776010-EYpKF0FtRL.png?width=1200)
これは初めて観た。
中が抱一、表装部分が其一の師弟コラボが楽しい!
![](https://assets.st-note.com/img/1722824619133-qHh1alp27P.png?width=1200)
…額を自作してしまう画家もいれば…
![](https://assets.st-note.com/img/1722824752295-ZMiBhHjL2H.png?width=1200)
「裸でよければ、服も着ないし。なくてもよいなら、額は付けない。」
他にも国宝・因陀羅《禅機図断簡 丹霞焼仏図》をはじめ、セザンヌ《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》、雪舟《四季山水図》、ブランクーシ《接吻》、モネ《黄昏、ヴェネツィア》、《鳥獣戯画断簡》などなど、見所多数。
4Fと5Fは QR コードで追加の解説を読んだり、一部の作品はアプリで音声ガイドが聞ける。
アーティゾン美術館のアプリは今展から新しいものになっている。
音声ガイドはアプリで自宅でも聞けるが、味気ない自動読み上げ音声。
しかし!美術館内だと細谷佳正ナレーションで聞けるのですよ!(たぶん内容は同じ)
落ち着いていて聞きやすいナレーションでした。
QR コードの解説は…以前は紙の解説の小冊子がありましたが、それをそのまま画像に読み込んだ感じで、スマホだと読みづらい。
URLだけ開いて家で読もうと思ったら、美術館内でしか読めないようです。
有料でもいいので紙版を作ってくれるか、自宅で印刷できるようにするか、スマホで読みやすい画面にして欲しいなあ…
![](https://assets.st-note.com/img/1722826502109-NKpSjeKA8l.png)
今回、妙に刺さった作品。
鰹のメタリックボディに釘付け…お腹空いていたせい?
余談と反省。
QRコード読んだり、音声ガイド聞いたり、あれこれしていたら、4Fに辿り着く前にスマホのバッテリー残量が20%に!
モバイルバッテリーはロッカーに入れてしまったので、4F のQRコードでの解説や音声ガイドは聞けませんでした。
次回はモバイルバッテリーも持って展示室に入ろう!
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