見出し画像

齢71にしてICT

1、ある朝、父からのメール

3月のある朝、お互い多忙でやや疎遠ぎみだった父から、久しぶりにメールが来た。
とても短いメール。

「友人が急に亡くなった。不安だ」

超ポジティブ思考の父が突然弱気なメールを送ってきた驚きで、眠気が吹き飛んだ。
どうやら亡くなって数日後に親族に発見されたらしい。いわゆる孤独死。

父は仕事の関係で東京に一人暮らしをしている。齢71。流石に不安になったのだろう。
その日から、朝7時頃に電話をかけてくることになった。ワン切りなので会話はない。
(この習慣は今も続いているのだが、たまに忘れる。忘れないで…)

2、父について

私の父はギタリストをしている。
東京などでいくつか教室を持ち、もう40年以上講師をしている、ずっとギター一本で生きてきた人だ。

自由奔放な性格で、超ポジティブ思考。
正直なところ、真面目が取り柄だった若い頃の私とは全く反りが合わなかったのも事実。
ある意味、父を反面教師と思って育ったから当たり前か…。

ただ、反りが合わないとはいえ、ギターに対するこだわりの凄さについては感服していた。
教師を目指した一つの理由は父のこともあったかもしれない。
こだわりが強い性分も恐らく父の影響だろう。
父に対しては、そんな相反した気持ちを抱えている私がいる。

3、緊急事態宣言

2020年4月7日。
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言発令。

外出自粛が求められる中教室が継続できるはずもなく、レッスンは休止。
不安感の中、収入激減も予想される事態に。
父の落ち込みは大きく、これがいつまで続くのか、という不安を訴えるやり取りが続く。

4、一念発起と提案

今回の事態は「先が見えない」。
私自身、Twitterで何度も発信していたように、疫病は繰り返し発生する。
スペイン風邪(1918年1月~1920年12月)

画像1

も、第2波、第3波が本番だったのだ。
悪い状況は数年単位で続くだろうという予想をしていた。

長期間教室を再開できない、再開してもまたロックダウンになる可能性も高いと判断した私は、父にある提案をした。

「オンラインレッスン、やらない?」

この提案、かなり私なりに思い切ったものだった。
何せ、父は

・携帯はガラケー
・パソコンは一切使えない
・文書はワープロ(書院)で作成

という、20世紀に取り残されたような人なのだ。ICT?ナニソレ状態。

正直、ダメもとの提案だった。
しかし父は即答。「やってみよう」…超ポジティブ思考万歳。

5、早速動き出す

とはいえ、機材をそろえるにもお金はかかる。
その元手はどうするか…と考えていた時に、

そして

これらのお話が舞い込んできた。
給付は先だろうけれど、間違いなく貰える。
貯金してもいずれ食いつぶすだけなので、ここは攻めるべきだ、ということに。

そして幸い私は元SE。
自分でシステムを構築・管理できるので、余計な経費も掛からない。

というわけで、早速動くことに。

購入したのは

・iPad(第7世代、セルラーモデル)
・ライトニングケーブル(HDMI変換)
・フレキシブルアーム
・32インチテレビ(FUNAI製)

実にシンプル。
操作性や安定性を考えたら

・できるだけ有線
・機材の点数は少なく
・トラブルへの対応は二重三重に

そして、音楽のオンラインレッスン特有のポイント

・音と映像のラグを最小に

これを全て満たす構成はこれしかなかった。
当初は無線で画面ミラーリングをしようとして「Fire TV Stick」を買ってしまったが、ラグが大きく断念。まあこれは父へのプレゼント。
今も映画を見て楽しんでいるようなので、これはこれでよし。

iPadは、Wi-Fiが切れた場合に備えてsimを装備できるセルラーモデルを選択。

FUNAI製のテレビを選んだのは、画面を停止する機能があるから。
生徒さんが何かを見せたい時、画面を止めてゆっくり見られる。

画像4

恐らくこれで死角なし。

6、え?使える?

結構な試行錯誤を経たものの、最終的にシンプルな構成に落ち着いたこのシステム。
私自身が使ってみたところ、安定性はOK。

さて、次に父に使い方を教えねば。まずはタッチパネルの使い方。ここからが長いぞ…。
しかし、私もSE時代に機械音痴の人達にパソコンの使い方を教えていたのだ。負けない!
さあ行くぞ!

父「あ、こんな感じ?(タップ)」
私「…え?(ポカーン)」

どうした父上。なぜ使えるのだ…?
まさか私に隠れて既にデジタル化を完了していたというのか?

唖然とする私に
「書院にも似たような機能あるから」

…は?いやいや、ワープロじゃん。

画像4

シャープ様万歳!
目の付け所がシャープすぎて、私たちは救われました!

7、目下、テスト中!

というわけで、意外にもiPadの操作を難なくクリアした父。

今は遠隔地にいる生徒さんとオンラインレッスンの練習中。
色々な課題をクリアし、ほぼ実用レベルまで到達しました。近日、他の生徒さんや新規の方にも対応予定になります。
これで再度ロックダウンになっても大丈夫。

息子の私が言うのもなんですが、教え方、物凄く上手です。
年の功もありますが、センスかな。
レッスンを見てると私も影響を受けてるなぁ…とか少し思ったりします。
私はまだまだですが。

楽器は
・クラシックギター
・マンドリン
・ウクレレ

の3つ。
初心者から、講師やプロを目指すディプロマクラスまで対応。
クラシックギターで歌謡曲など、曲目は何でもOKだそうです。
(個人的には、完全に初心者の方は対面レッスンの方が良いと思います)

お問い合わせは

画像3

こちらから。
まだ立ち上げたばかりなので対応が遅いことはご容赦ください、とのこと。

ウェブサイト(近日改装予定)は

です。

それと、近日、父が自分で演奏動画を撮影して、Youtubeにアップする予定です。
私のチャンネルと統合しようかな(自分が全然撮れてないので…)。

というわけで、今回は私の父の最近の顛末について書いてみました。
もし、音楽に関心がおありの方は是非。

いつも以上にプライベートな内容で恐縮ですが…ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

サポートは、資料収集や取材など、より良い記事を書くために大切に使わせていただきます。 また、スキやフォロー、コメントという形の応援もとても嬉しく、励みになります。ありがとうございます。