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【読書感想】採用基準 伊賀泰代

読了日:2013/5/2

この本は、超一流コンサルティングファーム、マッキンゼーで採用マネージャだった著者が語るリーダーシップ論。
マッキンゼー流リーダーシップのあり方や、リーダーに必要なスキルについて語っている。

リーダーシップのある人とはどんな人か

リーダーシップのある人とはどんな人か、の説明で、
「マンションの管理組合の話し合いで余ったお菓子をどうするか提案できる人」、
「帰宅困難時のタクシー行列で相乗り提案できる人」
のように誰にでもわかるような例で挙げていて、イメージしやすかった。

リーダーシップは特別なものではなく、組織・自分の生活・人生において、今後とても役立ち、かつ必要となるスキル。
これからのグローバル化した社会において、日本人が活躍していくためにはリーダーシップをとることができる人を増やしていく必要がある。
カリスマリーダーにならなくても、誰もがリーダーシップを発揮できる、そういう社会にしていかないといけないよね、
と著者は語っている。

また、リーダーに求められることには、以下の4つを挙げている。
1)目標を掲げる
2)先頭を走る
3)決める
4)伝える
詳細は本のなかで説明してるけど、ひとつひとつがすごく納得できた。

リーダーシップ経験の重要性

先日、従姉妹のグチを聞いた。
親族で家族旅行の計画をたてていて、従姉妹夫婦が、先頭にたって調整&計画を立てているが、その計画がなかなか決まらないと言う。
弟夫婦の要望が二転三転して、希望予算があとから変わったり、行く場所も最初はNGにしてた場所をあとから提案してきたり、フライト時間も「早朝NG」が途中から「早朝で」と変わったり。
あらゆるところで二転三転するから行先もプランもなかなか固められないとのこと。

リーダーシップ経験が少ない人は、リーダーとしてなにかを決定する機会が少ないので、リーダー側の行動を想像することが難しい。
もし、弟夫婦に豊富なリーダーシップ経験があれば、こういういざこざは起きなかったのかもしれないなぁと愚痴を聞きながら思った。

右も左も「出る杭」だらけに

日本人の「奥ゆかしさ」や、「他人への配慮」は、とても大好きだし大切だと思う。
でも、その反動からか「でしゃばり」「出る杭は打たれる」という言葉があるように、目立つヤツをちょっと斜めに見る風潮も世の中には確かにある。
小学校の頃、地域の2校が合同でキャンプをする行事があった。
その時、班の係決めで、私が口火を切ったところ、あとから別の小学校の子に「仕切ってた」と言われてしまった。

自分は仕切るつもりもなく、みんなが黙っているのは時間のムダなので「係どうしようか?」と口火をきっただけだったけど、そう言われてしまいすごく恥ずかしく、また、悔しい気持ちになった。
私は図太い性格だったので、その後も消極的になることもなく、必要なときには仕切り続けたのだが、こういう周囲の声で恥ずかしくなり、声をあげられなくなる人はかなりの数いるのだろう。

この人のいうように世の中にリーダーの総量が増えて、右も左も出る杭だらけになってくれると、みんなにとっていいのになぁ。

ワタクシ的名文

マッキンゼーでは、問題解決スキル(Problem Solving Skills)という言葉と並んで「問題解決リーダーシップ」(Problem Solving Leadership)ということ言葉が頻繁に使われます。問題解決スキルとはご存じのとおり、MECEやロジカルシンキング、仮説思考、フレームワークなどの思考テクニックを使って、問題を整理・分析し、解を見つけるための技術です。
一方、問題解決リーダーシップとは、解くべき課題(イシュー)の定義から、分析の設計、関連する組織の人とのコミュニケーションを含む一連の問題解決プロセスにおいて、リーダーシップを発揮することです。

なるほど。と納得。
問題を解決することと、リーダーシップをとって実際に動くことのスキルを明確に分けると、わかりやすい。

本来のリーダーとは、それとは180度異なり、「チームの使命を達成するために、必要なことをやる人」です。プロジェクトリーダーである自分の意見より、ずっと若いメンバーの意見が正しいと考えれば、すぐに自分の意見を捨て、その若者の意見をチームの結論として採用するのがリーダーです。

当たり前じゃない?
とも思うけど、世の中には、きっとプライドのせいで、自分の意見を捨てられないリーダーがとても多い。

社会人としての最初の訓練を受ける場所の影響は絶大で、一定の行動様式を刷り込まれてしまうと、あとから矯正することは容易ではありません。
しかもひとつしか職場をしらない本人は、問題意識さえもっておらず、面接において自分が「立派な社会人」ではなく、「きわめて保守的な組織の構成員」に見えていることにも気がつきません。
 (中略)
しかしこういった「目上の人に対して、どうふるまうべきか」をたたきこまれている人の中には、「上司の意見には反論せずに従うべき」とか、「立場を考えて発言すべき」などという(その企業の)常識も伴せて身につけてしまっている人がおり、礼儀だけでなく、議論にもヒエラルキーを持ち込みがちです。

転職経験もないし、私のことだなぁ。
耳が痛い。
しかも、上司の意見に反論するし、礼儀にも疎い(無礼)ので、立派な社会人でもない…。

日本では時にビジネスの現場でさえ、成果より組織の和が優先されることがあります。
特に大きな組織には、他部署が決めた方針にはむやみに口を出さない、という暗黙のルールがあります。
 (中略)
多くの場合は「そんなことをしたら角が立つ」という理由で、他部署の決定には(陰で不満や不安を口にすることはあっても)表だっては反対意見を言わない人がたくさんいます。もちろん、″空気を読まず”に他部署の案件に関してもどんどん口出しする人もいます。
他部署の案件だからと黙る人は事なかれ主義であり、後者こそがリーダーシップを発揮しようとする人です。

「和を重視」することと「成果」のバランスをとるのは難しい。
「成果」のみを重視していくと和が乱れ、それが要因となって成果も落ちていくということが多々あると思う。
「和」と「成果」を分けて考えることができる社風が必要だと思った。その二つのバランスをどうとっていくのかも考える必要がありそう。難しい。

外資系企業にも当然、役職は存在します。しかしリーダーシップは役職にかかわらず全員に求められます。また特定の役職に就くためには、就任前にそれに必要なレベルのリーダーシップが発揮できることを、実績をもって証明する必要があります。
この順番が重要です。「役職が先でリーダーシップが後」なのではなく、必要なリーダーシップをもっていることが証明されて初めて役職に就くのです。
たとえばマネージャーに昇格する人は、マネジャーになる前に「マネジャーとしても十分なリーダーシップを、すでに発揮しているから」マネジャーに昇格するのです。

同意。
役職について、学んで育つパターンももちろんあるけど、理想は、役職があとからついてくるというのがいいな。
そうじゃないことも多いんだろうけど。

若干マッキンゼー万歳的な論調は否めかいし、日本の企業にそのまま落とし込むには色々難しいところはあるかもしれない。
でも、リーダーシップについて学ぶにはとてもよい本だと思う。
私は直接の採用担当ではないけど、自社の新卒社員教育や人材育成に関わっているし、興味のある分野でもあるので、ピンポイントで役にたつ内容だった。
職種問わず、部下や後輩がいる人やリーダーシップを身に着けたいという人にはおすすめ。

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