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ジュエリーアイ  ⑤

姉とはそれ以来会っていない

いま姉の眼にはシャンパンゴールドの眼球と、右の瞳には虎が入っており、赤い眼球に左の瞳に龍が入った男と一緒にいると、偶然出会った姉の友人に教えてもらった

 私は去年、もう使わなくなった自宅のポストにまとまったお金が入った封筒を見つけた

いつ誰が入れたのか分からないが、きっと姉だと私は思っている。封筒に入ったお札がきちんと表裏揃えてあり、姉はいつもそうしていたからだ

 私はこっそり弟に、「もう少しお金が貯まったら、好きなジュエリーアイを入れてあげるからね」と伝えた

「でも姉さんは?」

「私?私は無料のチケットでジュエリーアイを待つよ。あと2年待てば良いもの」

 澄んだ青い瞳を持つ弟のその美しい瞳を明るい日の光で最後に見たのは、いつだったのか、もう思い出せなかった。かつては羨望の的だったその瞳は、今は蔑まれる対象になってしまった。繊細な心を持つ弟は、家から出れなくなってしまっていた

「瞳には何入れたい?」

「僕はシンプルなのがいいな」

「せっかくだから、派手なのを入れようよ」

私たちはクスクス笑いあった

 この家で潜むように暮らしている父と母に私たちの笑い声が聞こえるといいな、と思ったけれど、朝晩だけ流れる政府配信のラジオニュースに2人とも夢中だろうと、私は知っていた

 あれから1年が経った。ようやく弟は、来月にジュエリーアイを入れられるようになる

 あと1年

私は、あの階段に潜む暗闇の魅力に勝てるだろうか?




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