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ジュエリーアイ  ④

 薄暗闇が続くのであれば、それに適応できる人工の眼を作ればいいと、もともと病気のために開発されていた人工眼が、用途が変わり光を調節できる人工眼として完成した

 そしてあっという間に人工眼は、ファッショナブルな商業用のジュエリーアイという名前で、人々の手に入るようになったのだ

 当初は健康な眼を人工眼に替えるということに反発や批判が多かったが、どこかの国の有名なセレブが先頭をきって替え、当時かろうじて見れていたテレビで世界に発信すると、ジュエリーアイの美しさは世界中にセンセーションを巻き起こした

 彼女の眼には、ダイヤモンドカットされたゴールドの軽量ガラスが眼球の替わりに収まり、右目だけ瞳の代わりに白い百合の花が埋め込まれていた。片方の瞳だけというアンバランスさが彼女をより魅力的にし、光が眼を反射しキラキラと輝かせながらにっこりと微笑む姿は、人々の心を奪った

 ジュエリーアイの需要が一気に高まり、値段も手頃なものから高級なものまで競って売り出された

 やがて政府はジュエリーアイを全ての国民にと動き出し、無料で替えられるチケットを配り始めた

無料とはいえ、ダイヤモンドカットが施された美しいものだ

しかし人々の関心は、それぞれの思いを込めた瞳をいれることに夢中だった。無料チケットの期日まで待たずに大金を支払い、満足のいく瞳を入れることをほとんどの人が希望した

そして、人々が思いを込めた瞳をお互いに語るのがちょうど盛り上がっていた時に、私たち家族にも無料チケットが送られてきた

 父母は5年後、姉は3年後、私は4年後、弟は6年後にジュエリーアイに替えられるとチケットには記載されていた

 チケットが届いた次の日、姉は突然仕事を辞め、家から出て行った




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