IF  第3節 「人間だったヒト」


私たちは森が大好きだ。
だからこそ彼らの生活に踏み入ってはならない。
彼らもそれを了解してる。

そうだ、彼女とはずいぶん長い付き合いになる。
彼女が身ごもったころ、私たちも新たな命を授かった。
彼らとは心が通じ合った。森を愛す者同士。言葉はいらなかった。

私たちを育ててくれたのは森だ。こんな私たちでも受け入れてくれた。
森はいつからか私たちにとって大切な場所になっていた。
森は人間であったことを忘れさせてくれる。

だが幸せは長くは続かない。
私たちを正義だとは言わないが、森を汚す人間もいる。
だから私たちは人間が嫌いだ。


だからこの子だけは私たちの愛したこの場所で育ってほしかった。
なんのとがめを受けることもなく。


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