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もけると物語【14:ドラマを操る模型とピエロのゆくえ】

「この村にも雪は降るんだ・・・」

あんなに温暖なもけるとの村に昨日の夜は雪が降ったんですけど、朝にはもう消えていました。と同時に、管理人ピエロさんの姿も。ちゃんと前もって旅立つことは告げられていましたけど、まさかこうやってサラッと消えてしまうなんて思ってもいませんでした。唯一の手がかりは、

「ネットで繋がっておりますので」

の一言だけ。そうだけどさ、村人たちも驚き慌てふためくと思うよ。だって、運動会も談話室も村の記憶を保存する作業も村トークンだって全部中途半端だし、その中心にいたのは他ならぬ管理人ピエロさんなんだから。

見えない社会と見える模型

先月、模型を納品しました。たまにご依頼頂くことがある実在しないイメージ模型です。いつもなら例のサイトから依頼を頂いて、イメージに近い模型をお貸ししたり作ったりしていました。ところが、今回はちょっと違うんです。社会を視覚化した模型・・・。

東京大学の特任教授からご依頼頂いた14個目の模型でした。「近接性模型」は、私達の繋がり方を表している模型です。難しいことはわかりませんけど、個人、社会、周囲の人や遠方の人、あらゆる人同士が結ばれている様を点・線・面・ボリュームで表現しているようです。

これって、私が運営するコミュニティ、もけると談話室に置き換えることができるんですよね。建築模型に興味がある仲間で模型の写真や技術や情報を共有するんです。それはリアルではなく完全にネットの中の世界。だから、所在地が2000km離れていようが繋がっていられるんです。そんなみんなは各々の地域社会に属して日常を送っています。社会の縮図が模型になったというわけです。時に誰かが離脱したかと思うと新たな誰かが参加する目まぐるしい社会です。それが目に見える模型になり見学することもできます。

空間博物学の新展開 : http://www.um.u-tokyo.ac.jp/spatium/

妄想アパートメントもけるとは、いつもの朝のように小鳥はさえずり、小川は程よい水量を保ちそよそよと流れ、清々しい風と包み込むような陽の光で溢れています。なのに管理人ピエロさんが離脱してしまいました。いつまた戻るか、ネットの世界で本当に繋がってくれるのか、私達はただ待つだけです。そして村人たちもまた静かに姿を隠す以前の村人に戻ってしまいました。すべてのプロジェクトはなかったかのように鳴りを潜めてしまいました。

「あれ?救いたいって、今、思ってる?」

妄想アパートメントもけるとを買い取った当時のあの静かなアトリエに戻っただけだと思うことにしました。でも、もけるとの村人たちがちょこまかと動き回る姿が見られないと思うと、あの談話室の楽しいひと時がもうないかもしれないと思うと、いても立ってもいられなくなってきました。だからといってなにかできるかというとないんです。管理人ピエロさんのような統括力はありません。元々人付き合いも苦手です。

「何ができる・・・?」

「あっ!」

支配する模型と支配されるドラマ

レンタルサイトを運営しています。なんのレンタルかって言うと建築模型です。先日、その模型のレンタルサイト経由であるドラマに使われる模型制作の依頼を頂きました。女医が主役のシリーズ作で、新病棟を発表する際に使うお披露目模型です。

実はこのドラマで制作したビルの模型、デザインイメージが全くありませんでした。こんな感じっていう写真や3つのビルの相関関係くらいで、あとは私の勝手なアイデアでしかありません。だから、下手なデザインではドラマをのイメージを落とし兼ねないんです。そう考えるととても怖い案件ですよね。一模型職人の想像で制作された模型がドラマのイメージを支配するって。

でも、これってワクワクしますよね。このワクワクをもけるとの村人たちと共有したいって思ったんです。私が所有する模型のレンタルサイトをアートシェアサイトに作り変えるんです。妄想アパートメントもけるとの住人、もけるとの村人がアート作家として建築模型やイメージ作品を制作して、俳優とまでは行かないけどドラマや雑誌の背景に使われるんです。

また鍵を掛けてしまった村人たちの心を少しでも開放できるような仕掛け。まずはそこから攻めてみようかな。

で、ピエロさん、どこへ消えてしまったんだ?

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