北の伏魔殿 ケースⅠ- ⑧

○激化するいじめ、パワハラ

 この頃になると、嫌みや皮肉は常態化しており、こちらから、本庁に行ったり、電話するのが苦痛となってきたが、さらに、業務での報復も現実のものとなってきた。

 当該年度の12月に現地事務所の県直営化が予定され、それに伴って本庁での打ち合わせがあり、課長から「Kさんも来たばかりだけど、団体から戻ってきてもらうから」と言われた。また、それに伴って、「県内団体の会員に事情説明する行脚をするので、その説明のための出張にKさんも行って欲しい」とも言われ、その連絡調整は、M代表係長が取り仕切ることとなった。しかし、その2件とも実現することはなかった。また、それまで、現地事務所の職員が帰県した際には、M代表係長が飲み会を開催していたが、この頃から一切呼ばれることはなくなったが、そんなことをすれば、彼らが私のことをどう思っているかは、容易に想像がつく。


○B主査の不正が露見する

 そんな中、団体支出業務の見込みを精査していると、不足がでそうな雰囲気となってきた。まだ、現地事務所から不足に関する協議はないが、仮に不足する事態に陥った場合の対応をB主査と話していたら「大丈夫です。前年度予算で200万円ぐらい今年度の電話料を支払い済みですから」と言う。

 これには、正直、二重の意味で驚いた。この数年前、全国の自治体では旅費をはじめ、使用料、賃金、需用費など様々な費目を本来目的と異なる執行をして、飲食などの経費に充てるという不正経理が発覚したばかりであったからだ。発覚の先駆けとなった北海道庁や裁判沙汰になって懲戒免職者をだした長野県など我が県も含め、多くの自治体では、それ以降支出事務に関して厳格な取り扱いを定めるとともに職員にも周知徹底して、不正の一掃を図ってきたところだったからだ。
 前年度予算で翌年度分を支払う(うちの県では「預け」と言っていた。)というのは、予算を余さないことと、翌年度の予算が不足する際の対応のために業者の了解のもとでやっていた古典的な手法であり、当時どんな手口でやっていたかは、本人に会計事務の知識が無くとも、新聞を読んでいれば理解できたはずであるにも関わらず、こんなことをしているとは!

 さらに、今頃になってそんな重大なことをしれっとして言うことにも驚いたが、本人としては、会計事務の知識がないからなんら問題意識がないのだろう。事実、後でこのことが公になった際には、「前年度予算で翌年度分を支払うことがだめだなんて知らなかった」と言い訳していたが、40超えた職員が年度区分があるのも知らないことのほうが恥ずかしい。
※年度区分があるというのは、公務員としての基礎の基礎であり、通常なら採用時点ですぐに教わるべきものである。
 特に、私や後任のM主査になんら引き継いでいないことは重大な問題だった。私は、事務所の見込み額を積算したのは、前年度の支出を元にしていたので、実際は200万円+100万円=300万円が余ることになった。それであれば、事務所には200万円ぐらい使っても大丈夫と返信している。
 また、団体は県からの補助金で事業を運営しているが、すでに前年度の事業費については、額の確定が終わっており、修正することもできない。
 これが公になれば、B主査はもちろん、課長の責任も問われかねず、大きな問題となることは明白であり、私は他人の過ちを暴くつもりもなく、本人が自ら公表すべきだと思っていたので、誰にも言わず黙っていた。
 しかし、この判断は大きな誤りだった。
 彼女はアドバイスをもらい、それとは正反対のことを自分の判断でしておきながら、他人に責任転嫁するような性格であり、自分のミスを自ら公表するわけもなく、自己弁護に終始するしか能力もない人間だったからだ。


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