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「型にはまった演技」から脱するには

前回は、演技が魅力的でなくなる原因は無意識に「正解の型」ができてしまっているからだ、というお話をしました。

では、この「正解の型」から脱するためにはどうすればよいのでしょうか。


①自分を知る

演技において、『自分を知る』という事は非常に大事なことです。

考えてみてください、ピアノの演奏をする人は、絶対にピアノについて知らないといけませんよね。
それはつまり、「どこを押すとどの音が出るのか」みたいなことからです。
同様に、トランペットを吹く人は、トランペットの事を知らないといけない。
自分が使う楽器の事をよく知らないと、その楽器を使って出したい音を出すことなんてできないんです。

じゃあ、俳優にとっての楽器って何かって言うと、それは「自分自身」なんです。だから、自分を知ることって、結果的に、「自分のどこを押せばどういう感情になるのか」という事にもつながるわけです。

あ、そうそう、今突然「感情」という言葉を出しましたが、楽器の演奏者の仕事が「音を出すこと」であるならば、僕は俳優の仕事で一番大きなことは「感情」を表現することだと思っています。
それについてはまた別の章であらためてお話いたします。

さて、話を戻して。
「自分を知る」というのが大事だという事が分かったとして、あなたはどれくらい自分の事を知っていますか?
よく、「自分の事は自分が一番よく知っている」なんて言ったりしますが、あれは本当でしょうか。

自分の身の回りの人たちを思い浮かべてみてください。
「この人、自分のこと全然分かってないな」みたいな人、結構いませんか?でも、そういう人に限って、自信満々に「自分はこういう人間だ!」なんて言ってたりしますよね。

自分のことって、意外とあんまりちゃんと認識していないものなんです。

それは、あなたの周りの誰かに限ったことではありません。
あなた自身も、本当は自分の事をよく分かっていないかもしれないのです。

僕は、演技のレッスンでよく、「2分間自己紹介」というものをやります。
その名の通り、自己紹介を、2分間喋ってもらいます。
そうするとですね、意外と喋れないんです。
だいたい、色々なところで、最初のあいさつでやるような自己紹介って、名前を言って、年齢を言って、一言意気込みなんかを言ってみたりして、それくらいで終わりますよね。
時間にすれば、15秒くらいですかね。なんなら5秒で終わることもありますね。

これを、2分間喋るっていう事って、けっこう大変なんです。
それなりに、「自分語り」が必要になるってことですね。

この「自分語り」が、「自分について考える」という事に繋がると思うんです。
他人に話すことで、自分の考えが整理出来たりすることってありますよね。あれと同じようなことです。

話すことって、ある種の客観性が大事で、「自分を知る」っていう事って、自分を客観視することだと思うんです。

今書いてて思ったんですけど、「日記」とかもいいですよね。
今日何があって、それについてどう思ったかを、文章化してみることって、「自分を知る」ということの一つの手段だと思います。

よし、今日からやってみようかな。

②自分を好きになる

さて、自分を知れたら、次はそんな自分を好きになりましょう。

自分を好きになるって言うのは、本当に大変なことです。

なんでなんですかね?
「隣の芝は青く見える」なんて言ったりしますけど、やっぱり人間って、他人と比べて、なんだか自分は人より劣ってるって、思ってしまうものなんでしょうね。

さて、「自分を好きになる」って、幸せな人生を生きていく上でも大事なことだと思うんですけど、演技にはどう役立つんでしょうか?

演技って、「観る人」がいてようやく成立するものなんです。
つまり、お客さんですね。
そして、このお客さんに「好かれる」という事がすごく大事なんです。
例え悪役であってもです。

僕は漫画で言うと「ドラゴンボール」が大好きなんですけど、悪役の代表格「フリーザ」なんかは、本当に極悪非道なひどいやつなんですけど、ものすごく人気があるんですね。やっぱりあれは、倫理的には嫌われ役なんですけど、もっと深い、感情的な部分で好かれる要素が沢山あるんだと思うんです。

これがつまり「良い悪い」ではない、「魅力的かどうか」っていう事ですね。

だから、「良い演技」をするのではなく、「魅力的な演技」をして、お客さんに好かれるべきだと思うんです。

そして、お客さんに好かれるためにはまず、自分が自分の事を好きになる、という事がとても大事なんです。

特に日本人て、奥ゆかしいので、「あなたの魅力は何ですか?」なんていう質問に答えるのがすごく苦手なんですよね。
さあ、ということで皆さん、まずは自分の魅力を3つ、考えてみましょう。それは、外面的なこと(見た目)でも内面的なこと(性格)でも、あるいはもっと大きな、生き方みたいなことでも、なんでもいいです。
ちなみに僕の魅力は…
・きれいな天然パーマ
・めちゃくちゃ明るい性格
・他人の幸せを願える心
みたいな感じですね。
やっぱこうやって公表すると恥ずかしいですね、僕も立派な日本人です。

③自分をコントロールする

さて、②までで、「自分を知り、好きになる」というところまで来ました。
つまり、「自分の魅力を自覚した!」という事です。

そしたら最後に、この魅力を適切に使いこなさなければいけません。

魅力は使い方を正しく使えば強力な武器にもなるけど、間違えるととんでもない凶器にもなります。

例えば僕の魅力が「明るい性格」だとしてですね、親族の葬式のシーンなんかで「いやー、死んじゃったねハッハッハ!」なんてやったら、それはもうシーンが台無しになるわけです。

「人間的な魅力」は、その魅力が最大限生かせる場所で使ってこそ、「俳優としての魅力」になっていくわけです。

そしてここが、「技術」になるんだと思うんです。

「演技の技術」っていうと、なんだか万人に通用する、「これさえやれば大丈夫」みたいなものがあるような気がするんですが、僕はそんなものはないと思います。
なぜなら、人間ってものすごく複雑で、1人1人全然違う性質を持っているから。
だから、誰かに通用する技術が、他の誰かにはむしろ逆効果になることもあります。

だから、まずは「自分は何者で、何が魅力的なのか」という事を自覚したうえで、「じゃあどうすればその魅力を使いたいときに使えるのか」という事は皆さん自身がそれぞれで考えていくべきことです。

僕の記事では、皆さんがそれを考える上で、少しでも「ヒント」(答えではなく)になったらいいなと思っています。

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