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Sound Scape of Mojo

21世紀が進み、予想どおりデジタルコミュニケーションは、数々の技術革新と地球規模での普及を見せた。しかし、現代世界に染み付いた週5日会社に通うという20世紀的生活にはほとんど変化が起こらなかった。そこに新型コロナウィルスによる世界的パンデミックが起きた。すべての都市や町から人が消えた姿は、現実とは思えない光景だった。多くの人々が命を落とす状況は、人類の終焉すら想起されるものだった。

しかし、その中で一気にリモートワークが進むことになった。私が務めるデジタルハリウッドにおいても、大学、大学院、社会人向けスクールが一気にZoomの規模の大きいライセンスを契約して、ほぼ一夜にしてオンラインスクールに移行してしまった。教員たちもスタッフも家からの仕事になった。

そんな中、僕はALSを発症した。あっという間に、ギターが弾けなくなり、歩けなくななり、食べられなくなり、呼吸すら不可能となっていった。入退院を繰り返したが、人工呼吸器で生き延びることとなり、声も失った。ほぼ全ての筋肉が動かないが、今のところ眼球だけは思うように動かせている。お陰で視線コントロールが使える。

iOSは、重度障がい者に驚くほど配慮された設定を持っている。iPad Proに視線入力デバイスを付けたTobiiという製品で、僕がやるべき仕事はほぼ出来る。寝た切り状態で手も動かさず仕事ができるのだから有り難い。

そもそも僕はオフィスで一人で仕事をするとき、常に音楽を流していた。院生になった時からずっとだから、ほぼ半世紀だ。幸いALSは五感への影響は殆ど無い。お陰で音楽だけは問題無く聴けるのだ。仕事中のバックグラウンドミュージックは重要な機能があると考えてきたが、多くのスタッフがリモートワークも併用する今、僕が仕事中に聴いている音楽を紹介してみようという気になった。

もうひとつの理由は音楽配信のクオリティだ。出てくる新譜の多くが24bitなってきているのだ。サンプリングが44.1KHzであっても音質は16bitとはまったく違う。サンプリングが48や96KHzも普通になりつつあり、旧譜も24bit96KHzや192KHzで続々とリリースされている状況だ。とは言え、ハイレゾ機器で音楽を聴いているスタッフは少数だ。オーディオ評論家を長くやった僕としては、音楽をハイレゾで聴いて欲しいという気持ちも働いた。

というわけで2024年3月26日から社内のSlack に「sound-scape-of-mojo」というチャンネルを立ち上げて、僕が仕事をする時に流している音楽の紹介と、ちょっとしたコラムを載せ始めた。今や楽曲は複数の配信プラットフォームにアップされているが、社内ではiPhoneユーザーも多いし、WEB版も使いやすいので、Apple Music のリンクを載せている。僕自身は、2015年からTIDALをメインにして音楽を聴いている。

2か月ほど不定期に社内スタッフ向けコンテンツとして連載してきて、社外の方やデジタルハリウッドの学生に読んで頂いても良いかなと思いnote に転載して行くこととした。

杉山知之

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