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手袋は履くものです。


生まれてから38歳まで、北海道で暮らしていました。


私の小学校は、いわゆる転勤族の子が多く、クラスの半分近くは道外出身の子。東京をはじめとする関東から来た子がたくさんいました。

なので、私も訛りはそれほどひどくなく、自分が話している言葉が方言であるということをあまり意識しないまま成長していきました。


方言を意識したのは大学生になったときでした。
私が入学した北海道大学は、当時は半数近くが道外出身者でした。


そこで私は、自分が自然に使っている言い回しのいくつかが北海道弁であることを知り、若干のショックを受けました。


まず、お米をうるかす。
ご飯を炊く前に水につけておくことをこう言います。


一番驚いたのが、手袋を履く、でした。
道外では、手袋するとか、はめるとか言うと聞きました。


それでは、寒い冬に手を手袋で覆う感じが出ないではないか。
そう思いました。


弁護士になる少し前に上京して、東京暮らしが始まりました。
言葉が通じなくて困る、訛りがあってバカにされたように笑われるということもなく、過ごしていました。


が、私は1つやらかしたことがありました。


新人の頃に担当したとある事件の尋問で、自分の依頼者が、事件当時革の手袋をしていたかどうかが問題になりました。


私は尋問で

手袋を履いていましたか?

と質問しました。


そして、そう質問した時にはこのことに気付かず、後日、ハッとなったのです。


完成した尋問の記録を見ると、バッチリ、

手袋を履いていましたか?

と記載されていました。


大阪弁は治りにくいとよく言われます。
一番楽な喋り方だからだと聞いたことがあります。


手袋を履く、も同じです。
北海道の人間にとっては、自然で楽な言い回しです。
治るわけがないのです。


だから、私はこれからも言い続けます。


手袋は、履くものです。

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