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カナガワの鱒釣り

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ブローティガンの『アメリカの鱒釣り』の翻訳っぽい文体で思い出を語る遊び場。
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#小説

ミニ四駆・ジャパンカップ 『カナガワの鱒釣り』11

 スタートの瞬間にリヤステーを中指で弾くように押しだす技術は兄が考案した。ジャパンカップ…

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墨田区八広の大黒湯 『カナガワの鱒釣り』10

 墨田区八広の大黒湯はおばあちゃんちのすぐ近く、風情だなんて、それで当然だった。  チン…

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横浜夢の国 『カナガワの鱒釣り』9

 かつて夢の国は戸塚にあった。戸塚にあるのに横浜と冠されたのは、千葉にあるのに東京と冠さ…

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ハヤトの芝生のオオカマキリ 『カナガワの鱒釣り』7

 ある夏の終わり、僕は高架橋をこえて、新幹線の向こう側の畑に沿って歩いていた。更に畑の向…

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運動会 『カナガワの鱒釣り』8

 青々とした空に白い舟が浮かんでいた。眺めていると、じんわりと輪郭をくずして、雲は次第に…

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PCエンジンDuoかメガCDか 『カナガワの鱒釣り』6

 平成はミニ四駆のハイパーダッシュモーターのスピードで、ゲーム好きと、金曜よる7時のドラ…

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ビックリマン・シール 『カナガワの鱒釣り』5

 大体のシールが揃っていて、僕の持っていないヘッドはもちろん、見たことのないものですら、彼のシールアルバムには入っていると聞いた。  僕のコレクションにヘッドは二枚、ヘラクライスト、ノアフォーム。 他校から転校してきた彼が、シールの交換を要求してきたのは、僕のノアフォームが欲しいからだった。損な話ではないと彼は言った。  教室では最近流行りだしたヨーヨーをしている男子がうるさく、僕と彼は教室の隅で交渉をしていた。二人きりの中休みだった。  お守りなら5枚、天使なら3枚