見出し画像

米国ドローンライセンスの取得-3 (気象)


 米国でドローンを習得するポイントを数回に分けてご紹介します。ライセンスを必要としないリクリエーション(趣味)目的でも参考になるかもしれません。

 ドローンパイロット(リモートパイロット)の受験科目は以下の5つとなっています。各項目のポイントを簡単に紹介します。今回は、Weather (気象)です。

1 Regulations (規則)
2 National Airspace System(空域)
3 Weather(気象)
4 Loading and Performance(性能)
5 Operations(運用)


3 Weather (気象)

 気象は学校で習った内容なので、最も馴染みのある科目でしょう。難しいのは、METARやTAFといった気象情報の数字英語の羅列です。しかし、これはパターンさえ理解できれば良いので、基本的には航空地図と同様に慣れの問題です。


3-1 : Introduction(イントロダクション)

 気象現象は、不均等な地球の表面熱(地熱、海面温度)によって発生する。その表面熱は、太陽熱による。つまり様々な気象現象の主要な根源は太陽熱である。

 ドローンのような低い高度での運用でも、ビル風や上昇気流。下降気流な様々な気象現象からの影響は大きい。

3-2 : Wind(風)


 ビルなどの建造物は、風の強さや方向を急激に変化させ、突風や乱気流(turbulance)を発生させる危険があるので注意が必要。

 強風下では、地理的なポジションを保った飛行を行うことが困難で、操作性を下げ、バッテリーを消費させることを十分理解する必要がある。

3-3 : Air Masses and Front(大気と前線)


 リモートPICは、周囲の大気の状態に注意を払う必要がある。寒冷前線と温暖前線の特徴を問われる。その他の前線(停滞前線、閉塞前線など)は、現時点では問題に出てこない。

寒冷前線 Cold front
雷雨(Thunderstorms)、雹(Hail)、竜巻(Tornadoes)や大雨(Heavy Rain)を発生させる。
温暖前線 Warm front
寒冷前線に対して役半分のスピードで移動する。継続的な雨や、短い視程など特徴がある。

 前線の通過は、風向きや風速が変化するので特に注意が必要。温度の変化が、前線の通過を察知する簡単な方法。

3-4 : Atmospheric Stability(気層安定度)


 気層安定度は、大気の安定度を示す言葉。大気は、ふつう高度の上昇に伴い一定の割合で気温が下がる。その気温変化の割合(laps rate / 減率:高度の増加に伴う気温低減率)で、大気の状態を把握する。地上に近い大気の温度が高く、上空の温度が低いとき、不安定は不安定な大気の状態となる。

Unstable Air (不安定な大気)の特徴
積雲(Cumuliform clouds)
にわか雨(showery precipitation)
乱気流(Rough air / tubulence)
良い視程、ただし風による障害は除く(Good visibility except in blowing obstruction)

Stable Air (安定した大気)の特徴
層雲と霧(Stratiform clouds and fog)
長雨(Continuous precipitation)
なめらかな空気(Smooth air)
煙霧や煙などにより見通しが悪い(Fair to poor visibility in haze and smoke)

3-5 : Visibility and Clouds(視程と雲)


 ドローン(sUAS)の運用には、最低3SMの視程が必要で、雲の下を飛ばす場合は500ft以上の間隔が必要、かつ雲の横を飛ばす場合は2,000ft以上の間隔が必要。

3-6 : Thunderstorms(雷雨)


 サンダーストームの中でドローン(sUAS)を飛ばすことは大変危険である。嵐が起こる特徴は以下の3つが挙げられる。

1 : 十分な水蒸気(sufficient water vapor)
2 : 不安定な減率(An unstable laps rate)
3 : 上昇気流(An initial lifting force / upward boost)

雷雨の雲は、以下の3つのステージで分類される。

1 : Cumulus (上昇気流-Upwndraft-で雲が形成される初期段階)
2 : Mature(雨が降り出す状態で最も危険な状態。下降気流-Downdraft-と上昇気流が多発し雷が発生する)
3 : Dissipating(最終段階で、下降気流が中心となり徐々に威力が失われていく)

 サンダーストームの種類の中でスコールライン・サンダーストームは最も危険である。このサンダーストームは、幅が狭いが長いのが特徴で、寒冷前線の前方に発生する。

3-7 : Icing(着氷)


 Freezing Rain(気温が氷点下なのに液体の雨が降っている状態)が最も危険。その状態でドローン(sUAS)を飛ばすと機体に着氷する。それによる影響は以下の通り。

1 : Lift decreases (翼型が変形して揚力が減る)
2 : Weight and stalling speed increase for fix wing, and propellers may stall on rotary wing (ウイングやプロペラに着氷して重量が増し、失速速度が速くなる。)
3 : Drag increase(表面積が増えて、空気抵抗が増す)

3-8 : Fog(霧)


 霧は、地表近くの大気が露点まで冷却されることで発生する。視程が制限されるので注意が必要。

1 : Radiation fog (放射霧)風も雲も無い夜に、地面の放射冷却によって発生する霧。
2 : Advenction fog (移流霧)海面などの暖かくて湿った空気が、風によって冷たい場所に移動した時に発生する霧。
3 : Upslope fog(上昇霧)山の斜面を、風によっ移動した湿った大気が上昇によって冷やされ発生する霧。
4 : Steam fog(蒸発霧)極寒地などで乾燥した冷たい空気が、暖かい水面(海面)の上を通過する時に発生する霧。乱気流とIcingが発生しやすので気をつけなければならない。

3-9 : Density Altitude(密度高度)


 これを理解するのに苦労しました。正直、今でもちゃんと理解しているか不安です。

 気温が高いと空気の密度が下がり、航空機やドローンの浮力が低下するなど性能に影響します。そのため、密度高度で実際の性能を把握します。

 海面上(海抜0m)で温度を15℃ 大気圧29.92"Hg を標準大気として、高度が上昇する毎に温度が下がり空気密度も下がっていきます。これが気圧高度です。この標準大気の気温と実際の気温の誤差を補正したのを密度高度と呼びます。また、気温だけではなく、湿度も影響します。湿度が高いと密度高度も高くなります。

 温度が高く湿度も高いと密度高度が高くなり、機体性能が低下することになります。逆に、温度が低く、湿度も低いと密度高度が高くなり、機体性能が高まります。

 暑い夏、箱根スカイラインをバイクで走った時、キャブの調子が歩くなるのは、密度高度が高くなり混合気が薄くなったという事でしょうか。

3-10 : Weather Briefing(気象ブリーフィング)


 リモートPICは、気象情報をwww.1800wxbrife.comで入手することができる。また、www.aviationweather.govでも入手できる。これらは無料となっている。入手する情報は以下のふたつである。

1 : METAR (Aviation Routine Weather Reports) 気象情報
2 : TAF (Terminal Aerodiome Forecast) 天気予報

 全ての飛行情報を知らせてくれるStandard briefingをリクエストして完全な情報を入手することが求められる。リモートPICは、METARやTAFで記述された、略語や記号理解する必要がある。
 Abbreviated briefingは、既にある程度情報を持っているパイロットが、追加となる情報を入手するためのブリーフィング。
 Outlook briefingは、フライトが6時間以上先の場合に入手するブリーフィング。

画像1

3-11 : Weather Reports, Forecasts and Charts(気象情報、予報、チャート)


 自動表面観測システム(ASOS)自動気象観測システム(AWOS)は目的が似ています。 ASOS及びAWOSステーションは、さまざまなレベルの能力を備えたさまざまな構成になっている。この情報を得るには、ラジオ、電話、ATIS(AUTOMATED TERMINAL INFORMATION SYSTEM)の自動送信、ADS-B受信機からのコード化された情報、航空管制(ATC)による中継が含まれる。

1 : ASOS (Automated Surface Observing System) 自動表面観測システム : 様々な測定器によって分析され、自動的にコンピューター生成のボイスによってレポートするシステム。分刻みの気象情報をパイロットにダイレクトに伝える。また、METARレポートを生成するのに必要な気象観測機能を実行している。国際標準によって管理されている。


2 : AWOS (Automated Weather Observing System) 自動気象観測システム : 一般的にFAA(連邦航空局)によって管理されている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?