格闘ゲーム初心者がすぐにやめてしまう話。スマブラとどこで差がついているのか

 最近、グラブルVSという新作格闘ゲームが出ました。名前の通り原作は再ゲームスのグランブルファンタジーであり、今まで格闘ゲームを遊んでいなかった人も手に取っているようです。(ストーリークリアで本編で使えるアイテムが貰える。やっていないのでわからないが、かなりの価値のあるアイテムらしい)

 で、こういったある程度人の集まる格闘ゲームが出るたびに話題になるのが、「初心者がつまらなくてすぐにやめてしまう」という問題。Twitter上でも「勝てなくてつまらない」とか「何が楽しいのかわからない」といった声を見かけました。気持ちはとてもよくわかります。わくわくして対戦をはじめてみたら何もできずに負け負け…。パーフェクトKOもわりとざらにあります。既存の格ゲーマーのうち一部の方はそういった声に対して「もうちょっと頑張ってからつまらないって言えよ」的な事を言ったりしていますが、まあ無理言うなって話ですよね。勝ちたいと本気で本人が思えば、今の時代勝つための練習法なんかはいくらでもネット上で調べられますが、そもそも「遊び」「息抜き」を目的としてゲームをしているのに入口の部分でそんな努力するかといわれると普通しないのではないのでしょうか。「つまんな、他のゲームやろ」となるのが通常の反応かと思います。

 格闘ゲームのほかのゲームジャンルにない特徴も初心者バイバイの原因ではあります(そこが面白いところではありますが)。他の対戦ゲームは勝敗にチームメンバーの上手い下手や運が絡んできたりしますが、格闘ゲームの場合はチームメンバーなんていませんし、運要素はほとんどありません(運要素に関してはむしろ嫌われています)。勝敗の理由はすべて自分に返ってくるわけですね。「あいつが下手だったから負けた」とか「あのカード引けなかったから負けた」とか言い訳ができない。「自分が対戦相手より弱かった」という事実を突きつけられるわけです。ゲームでそんなシビアな体験したくない、と考えるのは当たり前なことです。

 ストリートファイター2が出たころは、波動拳や昇竜拳を出せれば勝てる時代でした。今はそんなの当たり前で、コンボが出来て当然、相手のキャラクターの性能をある程度把握しておかないとオンライン対戦では一勝をあげることもむずかしいでしょう。ゲームジャンルが成熟してきた故の弊害です。初心者の流入が多い時代であれば、コンボできない人同士でマッチングして戦うことも可能だったのでしょうが、そんなの望むべくもありません。むしろ新しく始めた初心者もばっちりコンボ練習してから対戦に臨んだりしているので、「とりあえずガチャガチャして遊んでみる」という遊び方は難しくなっています。

 ここまでがいわゆる「格闘ゲームで初心者がやめてしまう」現象についてなんとなく考えていたことです。では、格闘ゲームすべてがプレイヤーが減っているかといえばそうでもないです。例外の一つが皆さんごぞんじ「大乱闘スマッシュブラザーズ」です(スマブラを格闘ゲーム扱いしない人もいますが、ここでは格闘ゲームとします。EVOの採用競技でもありますし)。スマブラの人口は順調に増えており、大会参加者も増え続けています。競技シーンはずっと盛り上がっており、うらやましい限りです。

 スマブラは一見カジュアルなゲームなイメージがありますが、大会で採用されているルール(一対一、アイテムなし、ステージギミックなし)だとかなりシビアな、他の格闘ゲームと変わらない辛さを持ったゲームです。それでも大会参加者が増え続けている要因はいくつか考えられますね。まずネームバリューによる新規プレイヤーの多さ。新規プレイヤーが多いのでオンラインマッチで対戦してもいきなり超上級者と当たることはあまりありません(そもそもルールが大会ルールでないアイテムありのステージになることもありますし)。そのため対人戦のハードルは低めになります。もう一つ大きな要因はゲーム自体の気軽さだと思います。他の格闘ゲームと違い、スマブラはそもそもがパーティーゲーム寄りのものです。大会ルールこそシビアなものですが普通のルールであれば「強い人が必ず勝てる」わけでもありません。多少下手な人にも勝てるチャンスがあるようなゲームの仕組みになっています。結局アイテムやユニークなステージギミックは大会では使用されませんが、こういったカジュアルな対戦ができるというのは入口の広さという意味で非常によいものです。通常の格闘ゲームで初心者を誘っても、カジュアルな対戦形式はほぼないので入口に困ります。いきなり対戦に放り込めないのでトレモなりで遊び始めることになりますが、まあ面白くないですよね。

 最近の格闘ゲームはこのあたりの問題に取り組んでいて、グラブルVSを例にとると「RPGモード」なるものが存在します。キャラクター自体にレベルの概念があったり、装備するアイテムで強さが変わったりといい意味で格闘ゲームらしくない遊び方ができます。RPGモードにクリア特典が設定されていたことを考えると、開発者としては初心者はここから遊んでキャラクターを動かく楽しさを知ってねという意図があったのでしょう。「楽しそうだな」と思ってくれた人はトレモなり対戦に進む、という。施策としてはとても良かったのではないでしょうか。こういった入口を他の格闘ゲームにも作ってほしいですね。欲を言えば、それこそスマブラのようなお祭り騒ぎの対戦モードなんかもあるといいです。格闘ゲーマーが苦手な運要素や一発逆転のシステムを組み込んだバカ騒ぎできる遊び方があれば、もっと初心者を増やしやすくなるのではないかなあと。

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