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コーヒーの酸味って何?

「コーヒーは酔わないお酒だ」

小野善造著:焙煎技術読本より

コーヒーに関わらず、お料理の味に酸味は重要です。
酸味がないと、味に深みがでませんし、複雑さも出ません。

コーヒーの世界では、数年前に「明るい酸」といわれるシャープな酸味がもてはやされました。言い出したのはアメリカのSCAAです。日本のSCAJはSCAAにならえなので、当然そのまま意思統一されます。
そもそも「明るい酸」という表現自体がよくわからないまま「こんなものか?」と霧がかかったまま突入していったのでした。
その結果、コーヒーの市場には酸っぱいコーヒーが溢れるようになります。アメリカが言ってるんだからいいじゃん、みたいなノリでバンバン酸っぱーいコーヒーが幅を利かせるようになりました。

みんな、ちょっと思い出してみてください。
1990年代、スターバックスは、アメリカでおいしくないコーヒーばかりで炭酸飲料にすっかりお株を奪われてすたれていたコーヒーを、高品質でフルシティローストのうまいコーヒーを提唱し、一躍時代の寵児となりました。そして、1996年日本でののろしを上げ、銀座1号店をオープンしたのでした。その後の活躍はご存じのとおり。
スターバックスに影響され、その時代には、日本の自家焙煎コーヒー店はほとんどフルシティローストになりました。たまたま、日本のコーヒーの草分けである有名店もこのローストでしたので、自家焙煎=フルシティの構図になりました。

それからいくらも時がたたないうちに、アメリカで浅煎りブーム勃発。手のひらを返したように浅煎りだらけ。
もちろん日本にも浅煎りブーム到来。我々には主張というものはないのか!と言いたいほどアメリカにならえで変わるのが、日本のコーヒー業界です。

で、何が言いたいのかというと、いい加減に酸味とは何ぞやとちゃんと考えてみようよ、ということです。

リンゴジュースがあります。酸味があります。でも甘みもあります。だからおいしい。ごくごく飲めます。
赤ワインがあります。酸味、渋みがあります。味も複雑です。だからおいしい。ごくごく…いやこれはお酒の強さにもよりますね。でも心地よく酔うまで杯を重ねられます。

コーヒーはどうでしょう。
酸味が強いもの、渋みが強いものはたったカップ一杯でもガマンしながらでないと飲みきれません。温かいうちはまだ大丈夫でも冷めてくると嫌悪感を伴ってきます。
これは多分タンニンが影響しているのでないかと思います。コーヒーの生豆の成分には多くのタンニンが含まれています。タンニンは渋柿の渋みの元ですので、これ自体はイやな味です。焙煎が不十分でタンニンが残っていた場合に、顕著に感じてしまうのでないかということなんです。
ジュースやワインは飲料としてしっかりとした味を確立しています。だから冷たくてもぬるくなっても時間がたっても飲めます。ということは、冷めて飲めないコーヒーは不完全な飲料ではないでしょうか。
本来は製品として売ってはいけないのではないか、と強く思っています。
コーヒーは「酔わないお酒」なのです。

じゃあどうするのよ?とお考えのあなた。答えはカンタン。
酸味の突出をなくし、渋みを完全になるまで除く。これで何杯でも飲めるコーヒーができます。あとはお好みで好きな産地とかブレンドとか選べば良いのです。
なんだ簡単じゃない。その通りです。でもそんなコーヒーは極めて少ない。それは焙煎技術の未熟さからくるものが多いからです。
バイセン?うちの近所のコーヒー屋さんで、バイトさんがちゃっちゃっとやっているアレ?注文したら2分くらいでできるあのこと?
そうです。あれですけど、本当は深い技術が必要なのです。

という訳で、次はコーヒーの渋みと焙煎について書いてみます。
どうぞ引き続きお読みください。