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【短編】低空飛行の果てに ①

その男は、低空飛行を続けていた。

とは言っても、本当に空や空中を飛んでいるわけではなく、勤めている会社での売り上げ成績が低空飛行なのだ。
軍の飛行機などが、レーダー索敵から逃れるために地表スレスレを飛行することがあるが、
そのように自らの意思で低く飛んでいるのではない。
高度1万メートルを飛ぼうとしているのに、低空飛行になってしまっているのだ。
「お前さ、先月も成績ヤバかったな」
「うるせえ、これでも頑張ってんだ」

このままだと本当にこの部署に居場所かなくなる。
ずっと危機感はもっているのだか、どう打破すればよいか分からない。
明日の販売会でそれなりに売り上げを作らないと、マズイ。マズイマズイマズイマズイ・・・

「販売会で少しでも顧客の目に留まるような商品売り込みをしなきゃ。それにはとにかく準備だ。」

玩具を扱う男の会社は、少子化の影響を受け年々業績は悪くなっていた。リストラの噂が社内に飛び交うようになっていたのも当然の流れだ。
「前回はミャー助とリリーを一緒に陳列して
一個も売れなかったから、明日はゴリ彦とクロベエを推してみるか」
男が、猫のぬいぐるみをああでもない、こうでもないといじりしながら陳列を考えていたその時、
「バリバリバリ」「ズドドド」と、凄まじい地響きとともに轟音。

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