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質問:献血して感染を「拡げませんか?」

先日 私の友人が献血されてて(おうち遊び大賞イベントに副賞提供下さる方のお一人です)こんな記事を書かれていました。

ちょうど私も、はがくんさん(←呼び方ww)のnote記事がとても良くてツイートしたら、友達が何人か「行ったよ!」って連絡くれました。
みなさん、ほんとにいろんな人のために・・・ありがとう。


でね、上記の献血に行かれた記事を書いたお友達から「モヤってる」と今日連絡頂いて。

もし私がコロナの陽性だったとしたら、その輸血をされた方は感染してしまうのでしょうか?

あああ、そういう疑問、でますよねぇ。わかります。

私の献血番号を渡されて、
「もし、あなたが陽性だったら、この献血番号をお知らせください」と言われたんです。
自己申請??と、不安になりました。

(献血車でPCR検査はもちろん行われません。)



先にお断りしますが今回は医者として知ってるウイルス学的な部分を踏まえての「私の個人的な見解」です。(かつ、2020年4月28日現在で、です)
《細かい所までの本当の正解》からは多少違う所もあるかもしれないけど、常識的な考え方の言葉にしています。
また正確を期すため 絶対はない、という言葉を多用します。



まず「もし献血後に感染がわかったとき」の流れは・・・・
 1)献血する+献血番号でその血液製剤を管理
 2)何らかの症状でPCR検査を受け陽性が出た場合 血液センターに連絡
 3)【ここは推測
   この方の献血番号のついた血液製剤は廃棄、かなぁ?

日本赤十字社の血液センターに確認していませんが、安全性に疑問がある場合は使わない、が原則のはず。

献血のよくある質問はこちらに。(献血出来る出来ない、海外から帰った方、などの一般的な質問に答えています)



血液製剤ってのは元々が「リスクのある」治療になります。
「現時点で」分かっている以外の病原体がいるかどうかは「存在を知られていない」のだから分かりません。
それでも、血液の成分というのは人間の体内でしか作られず、これがなければ生きるのが困難、という病気は結構あるのです。
だから出来るだけ、分かる範囲での「安全性」は確保した上で、受血側の患者さんは「リスクを理解して、それでもこの治療を受けます」という同意書にサインし治療を受けます。



血液製剤で問題になる病原体は、それによって引き起こされる病気の根本的治療がなく死に至る、もしくはそれが体内に残ることで長期的な健康への障がいを起こすことが分かっているもの、です。

B・C型肝炎ウイルスは持続感染することで長期的に肝硬変、肝癌を引き起こすリスクがあり、HIVウイルスは免疫不全という状態をおこします。クロイッツフェルト・ヤコブ病ウイルス(vCJD、BSE問題との関連も未知。)は死に至ります。これに関してはある特定期間(〜2004年)指定区域に半年以上住んでいたり滞在していていたひとは 検査をするまでもなく「献血不可」です(水際対策といわれるものがいまだに行われている、ということ。私はここに入っている)。
その他 「よくある質問」ページのワクチンの項などを読めば、「発症した場合の治療法が確立していない」「長期にわたる強い障害を残す」病気に対しては 献血そのものをお断りしている、という姿勢で行われています。



COVID-19に関してですが、

新しいウイルスなので分からないことが沢山あります。(長期的に強い傷害をおこすかどうかも分からない)
同時に「全世界の誰もがウイルス保有者」として行動しよう、が世界共通の認識となった今、「水際対策」はもうできません。

分かっていること、に、ウイルスは私達の細胞内で増殖する、感染経路は飛沫・エアロゾルなどによる「経口・経鼻(つまり気道感染)」とされていますが、COVID-19の症状のひとつが消化器症状(嘔気・嘔吐・下痢など)ということも踏まえ 体内のどこにでもウイルスは存在しうる?という疑いがでます。100%ない、とは言えません。
つまり、確率は限りなく低くても献血をしたひとがウイルス陽性のとき血中には絶対いない、とも言えない、ということです。

また、血中にウイルスが存在しているのと感染力があるのとはまた別の話で、そうなると血液で伝染する可能性は限りなくゼロでしょうけど・・・再度、100%あり得ないよとは言えません。



仮に輸血をうけた患者さんがCOVID-19に罹ったとします。
たとえその人が「こまめに手を洗っている」「外出は最低限にしている」としても、この方の生活の中での感染する率(大体、輸血受ける病院はウイルス・バイ菌の巣窟だし)と「輸血による」感染の率は 正直比較できません(イメージとしては輸血による、っていうほうがずっと確率低いですけど、検証のしようがないと思います)。



まとめると

COVID-19が血液製剤を介して移るかどうかはまだ誰も知りません(現時点で可能性はかなり低いだろうと思われます。)。
でも血液製剤を使わねば生きて行くのが大変だ、という患者さん達がいらっしゃいます。感染の可能性や確率がはっきりいえない感染症があるからと言って 輸血をしない、は選択肢にありません。

今回のパンデミック下では全てのことが初めてです。どこにもリスクはあるのです。みんなリスクと利益を天秤にかけている。
いわゆる「Greater Good:より大きな(益をもたらす)善」を選ぶ。


【今日のお持ち帰り病気の本棚】
「献血した血液で感染を拡げてしまっては・・・」と思っている方、この「感染を拡げる可能性」については可能性はかなり低いと知っていてください。

(それでも、PCR陽性になったら知らせて、というのは 分からないことが多いからこそ「念には念をいれて」安全対策を、という日赤側の姿勢だと思います)


質問くださった伊東昌美さん、有り難うございました。

サポート戴けるのはすっごくうれしいです。自分の「書くこと」を磨く励みにします。また、私からも他の素敵な作品へのサポートとして還元させてまいります。