イスラエル ネタニヤフ首相は政治的に終わった 1

ハマスの奇襲攻撃には驚いた。イスラエル領内に入っていっての攻撃にもっと驚いた。テト攻勢のような捨て身の攻撃だろうな。ハマスの戦士は生きてガザに戻ることはできないことを分かっているだろう。

今回の攻撃を予見できず、迅速な対応も取れなかったネタニヤフは政治的に終わった。元首相ベネットのインタビューを見たが、イスラエル国民の団結を呼びかけて、ネタニヤフ批判を抑えていたが、状況がある程度落ち着けば、ネタニヤフ批判を開始するだろう。ハーレツ紙はすでにネタニヤフの責任問題を書いている。

https://www.haaretz.com/opinion/editorial/2023-10-08/ty-article-opinion/netanyahu-bears-responsibility/0000018b-0b9d-d8fc-adff-6bfd1c880000

第4次中東戦争後に、奇襲攻撃を許した責任追及の委員会が組織され、ゴルダメイヤ女史が指導者としての能力を欠いていたことがさらされたように、今回、ネタニヤフがそうなる。
*ゴルダメイヤが戦時の指導者として相応しくなかったせいで、その後、イスラエルは女性の指導者が出にくい状況ができたときいた。

ネタニヤフと一緒に、ガザ地区の動向に責任を持つ、諜報機関のシンベト(シャバク)長官、国防軍の情報部門、警察の情報部門は責任をとらされる。ハマスの奇襲がイランと密接に連携、支援されたものであれば、対イラン情報活動に責任を持つモサド長官も責任をとらされるだろう。

故メイルダガン元モサド長官が、ネタニヤフに選ばれるモサド長官、シンベト長官だと、ネタニヤフにモノが言えなくなる、と危惧していたことを思い出す。

結局、一方的に勝ち続けることは出来ない、という大きな真理を教えてくれた。あのガザ地区で、あまりに狭いから英語でGaza Stripだ、切れ端のストリップだ。シンベトや警察のアンダーカバーや協力者がうようよいる中で、イスラエル相手に大きな攻撃をしかけられるはずがないという油断がこういう事態を招いた。

いますぐに思いつくガザで何が起きたかだが、

当然だが、ガザ地区でイスラエルの諜報網に大きな穴があった。シンベトは、ハマスをガザ地区に閉じ込めに成功したと思い、アルアクサモスクの騒動のヨルダン川西岸地区(ウェストバンク)に人的資源をさいていたのではないだろうか。
第二次レバノン戦争で、イスラエルがヒズボラの情報をあまり持っていなかったのと同じ状況だ。

前回のハマス、イスラエル戦争で、イスラエルはハマスの諜報・軍事部門幹部複数の殺害に成功したと記憶しているが、それがパレスチナ側組織内部での世代交代に寄与し、古いやり方を捨て、新しい発想をもった有能な人材が育つ土壌が出来た。

対イスラエルで経験豊富なイランの革命防衛隊が、ハマスに手厚い支援(財政、ミサイル製造、高度に秘匿された通信、地下壕の作り方、対イスラエル協力者の調査、組織内の身元調査の方法など)を行ってきた成果がでた。

ハマスはイスラエルの警察および軍内部に協力者を作ってきた。イスラエル社会には人種問題(アシュケナジー、ミズラヒー、黒人)、民族問題(ドゥールーズ、ベドウィン)があり、内部は分裂しているので、金や麻薬で、情報提供者に落ちる人間はいるだろう。

アイアンドームの稼働状況を知る術を得た。アイアンドームも、24時間365日臨戦態勢にはなっていない。(驚異度に応じて、どこで、何機稼働させるかとかが決まっているはずだ。脅威情報がなければ、もっとも低いレベルでの稼働か、もしかしたら電源を切っていた可能性もある)。そんなことをすれば機械は消耗するし、軍人も消耗する。

エジプト軍、治安機関内部にガザへの軍事物資密輸に協力する大掛かりな支援網があった。

こんな感じだろうか。

今回、イスラエルの陸上部隊がガザ地区に入るということを言っている人もがいるが、ことはそう簡単じゃない。

まず、軍事的にはハマスがドローンを使って戦車を攻撃することが分かった。イスラエル軍はハマスのドローンに対応する必要がある。

人口密集地であるガザを管理するコスト(金、兵士の犠牲)に耐えかねて、イスラエル軍はガザから撤退した。それが20年くらい前か。。シャロン政権のときだったと記憶する。また入って、出ていくの? ということになる。

ガザ地区のハマスを崩壊させたとしても、どういう統治体制、占領体制を作ることができるのかイスラエルは妙案を持っていないだろう。

イスラエル国家としてのこの戦争を収める最善策とこの失敗を取り繕い政治的生き残りを目指すネタニヤフ首相の最善策のせめぎあいはイスラエルの国家戦略に悪い影響を与えるだろう。

イスラエルがオールマイティの軍事国家じゃないことが露見した。ネタニヤフ首相があれだけ自信を持っていたイスラエルのインテリジェンスに大穴があったことが、最悪の形で露見した。

トルコのエルドアン、サウジのサルマン王子はイスラエルの弱さに驚き、満面の笑みをこぼしているだろう。

サウジもUAEもオマーンも、パレスチナ人を無視して、イスラエルと国交正常化することは出来ない。

長い目で見れば、パレスチナ国家建国に一歩近づいた。これは間違いない。長期的にはイスラエル指導層、支配層もパレスチナ国家受け入れが多数派になるだろう。

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