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半径5メートルへのあこがれ

187.タテに話す。ヨコに話す。

ここ最近、というのはつまり新型コロナウイルスの蔓延以降ということだが、同じメンバーで週末にオンライン飲み会をしている。毎週、夜が更けるまで飽きることなく5時間くらいおしゃべりをするのだ。まったく、我ながらどうかしていると思う。

参加メンバーは5人。仕事はそれぞれバラバラとはいえ、年齢も関心事もわりと近いのでとにかく気楽だ。けっきょく、後になって思い出すと毎週おなじ話題を肴におしゃべりしている気がするのだが、仮にそうだとして、誰からもウザがられないのはいわゆる「同級生トーク」ゆえに許された特権かもしれない。

ただ、ぜんぜん違う世界を生きているひとや、年の離れたひとと喋るのもとても楽しい。ひとつひとつの話題が自分にとっては新鮮な驚きがあるし、聞く側に回って、いま夢中になっていることや心配事など話してもらうのもそれはそれで刺激になる。

気のおけない同世代の友人たちとの対話をタテに掘り下げるイメージとすると、年の離れた知り合いやふだんあまり接点のない人たちとの対話は、自分の生きる場所をヨコに拡張してゆくイメージといえるだろう。

店をやっていたころには当たり前のようにできていたそうした「ヨコの対話」が、いまとなってはとても恋しい。隅々まで知り尽くした「池」で安住するのも悪くないが、やはりぼくはときには「海」にまで出て、「うわ、しょっぺー」と嬌声を上げてみたり、あるいはときにはちょっと怖い目にあってみたりすることを心のどこかで望んでいるのかもしれない。

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188.半径5メートル

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