見出し画像

他人からレッテルを貼られる

291.「5600円」

他人にレッテルを貼るのはほめられたことじゃない。

職場の同僚とふたりでランチに出かけたときの話だ。ちなみに職場は渋谷のようだった。

同僚はちょっと目を引くような美人である。残念なことに、顔がはっきり思い出せないのは夢の中での話だからである。

その美人の同僚とふたり、ぼくらは手をつないで足早に近所のイタリアンに向かっていた。ランチタイムがそろそろ終わろうかというタイミングだったのだ。

手をつないでいるからといって、とりたてて彼女とは恋人というわけではなかった。自然と手をつないでもべつだん不思議ではない、ただそういう間柄だったに過ぎない。いや、どういう「間柄」なんだ。

だが、ぼくらはともかく世間はそう見てはくれないようだ。その証拠に、さっきから不審なやつが背後から自転車でつけてきていることにぼくは気づいていた。嫉妬しているのだろう。いつものことである。

振り向きざまにチェックすると、その不審者は宇宙服のようなもの着込んでママチャリで猛然と追いかけてくる。やけに体勢低く身構えているのは、あるいはなにか企んでいるのだろうか。

と、思った瞬間、ママチャリは不意にスピードを上げ接近したと思いきや、いきなりドンと背中に突き飛ばされるような衝撃を覚えた。

しまった! やられた!

ぼくは彼女に向かって「ちょっと背中をみてくれないか」、そう頼んだ。すると、彼女は「ほんとだ」とつぶやいて、ぼくの背中に貼られた小さな紙片を剥がして見せた。

5600円

値札のシールだった。中途半端だ。値札を貼られたのも腹立たしいが、それ以上に、そいつにとっての「5600円」が高いのか安いのかいまひとつわからないのが不快なことこの上ない。

むやみに他人にレッテルを貼るのはよくないぞ。布団の下で、寝ぼけ眼でそんなことをかんがえていた。

画像2

この続きをみるには

この続き: 2,495文字 / 画像1枚
記事を購入する

他人からレッテルを貼られる

岩間 洋介|moicafe.com

100円

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

サポートいただいた金額は、すべて高齢者や子育て中のみなさん、お仕事で疲れているみなさんのための新たな居場所づくりの経費として大切に使わせて頂きます。

Kiitos!!!
8
日本で初めてのフィンランドに特化したポータルサイトを2020年秋に公開。また、CSRとして北欧流居場所づくりの試み「喫茶ひとりじかん」をMUJIの協力の下開催しています。2002年から2019年まで東京(荻窪→吉祥寺)にて日本初の北欧カフェ「moi(モイ)」を経営していました。

こちらでもピックアップされています

誰かが淹れてくれたコーヒーはおいしい
誰かが淹れてくれたコーヒーはおいしい
  • ¥400 / 月
  • 初月無料

ここでは、カフェで常連のお客様にだけこっそりお話しするようなエピソードを書いています。固有名詞や少しプライベートに踏み込んだ内容も登場するため有料とさせていただきました。メニューは以下の通り。 まず、読み物を月3〜4本程度。内容は、「やさしい気持ちになれる話」「日々の暮らしに刺激となる話」「クスッと笑える話」に限定します。読んでよかったと思っていただきたいので。 さらに、活動日誌を随時公開します。 フィンランド関連プロジェクトの最新情報や、現在進行形の企画、アイデア、イベントの情報なども可能な限り現在進行形で公開していきます。コラボなどに関心のある方もチェックしていただけると嬉しいです。そして、たぶん趣味の話なども。

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。