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ジョアン・ジルベルトガイド あとがき

というわけで、2018年年末からいきなり思い立って長々と書いてきましたがいかがでしたでしょうか?
途中力尽きて間が空いてしまいましたが、なんとか一通り終えました。
(ライブBDは届き次第改めて書きたいと思います。)

・きっかけについて

そもそもこれを書くきっかけは、ふたつありました。
まずひとつは、かなり前から90年代以降のジョアンについて何度か書こうと思ったところ、その度に上手くまとまらず終わっていた事や、部分的に自分なりに思っていたものを書こうとしてもどうもまとまらなかった事。この部分については順を追って書くことでなんとか最後までたどり着けました。
ふたつ目はジョアンのキャラクターや、著名人の私の中のジョアン的なコラムが意外と多くて辟易していた事。このふたつでした。

・書くにあたっての決め事

書くにあたって、いくつか自分の中でルールを決めていました。
・自分語りに走らない事
・引用ばかりにならないこと
・様々な情報をクロスオーバーすること
・印象論に走らない事
といったところです。

引用についてはルイ・カストロの「ボサノヴァの歴史」や、CDなどのライナーノーツを読めば分かることは極力避けました。とはいえ「ボサノヴァの歴史」からの引用は避けがたく、Em Mexicoまでは部分的に引用しています。
Chega de saudade以前についても「ボサノヴァの歴史」を読めば(ジョアンの本意とは別に)大まかに追うことはできます。
問題は「ボサノヴァの歴史」で取り上げていない70年代から80年代の部分は模索するしかなく、様々な文献に当たりながら各時代との繋がりを改めて調べていきました。
1973年のアルバムでのウェンディ・カルロスや、1975年のブラジリアンフュージョンの流れにあるスタン・ゲッツとのアルバム、1977年のAmorosoでのAORとの接点など(ライナーよりも突っ込んで書いたつもりです)、あまり他では触れられていない部分を取り上げる事は出来たのかなと思います。(足りない部分もあるでしょうが…)。
実は一番苦労したのがGetz/Gilbertoで、これが何度書いてもしっくりこない。一番有名どころなので、別に書かなくてもいいかな…なんて思いながら進めていきました。最初は静謐な表現とラテン幻想文学/文化と紐づけようと試みましたが、途中で「少し強引だろう」と思い削除しました。これがもしミルトン・ナシメントだったらそれらは有効だったかもしれないのですが、ジョアンに限ってはそれはちょっと違うかなと。

・楽曲理論とテクニックについて思う事

あと、あまり楽理的なものは引用しても仕方ないかなとは思いましたが、所々引用せざるを得なかったので仕方なしに入れ込みました。
特にIn Tokyoでの即興については、実はあまりアナライズしたくなかった(しても意味ない?)部分だったので、極力最小限にとどめています。
奏法についてもあまりリアクションがなかったので、果たしてあの説明はどうだったのかなという気持ちもあり、ちょっともやもやしてます。(五線譜のハードルがあるよねぇ…)

・書いてみて気付いたこと

ジョアンの全キャリアを俯瞰して思ったのは、他人のヴィジョンが入り込むとテーマが鈍るという印象がありました。特にスタン・ゲッツ、クラウス・オガーマンとジョアンの折り合いの悪さといったらもう…。ただ視点を変えれば彼らは決して悪というわけでなく、ジョアンの表現を最大限にサポートしようとしてるのもよくわかります。
スタン・ゲッツが世の中のトレンドを汲み取り、The best of two worldsでのジョアンの即興表現の萌芽はのちの表現に繋がるし、オガーマンのアレンジはジョアンを軸にした新たな表現として無いものには出来ないと思います。
ただし、ジョアンのもつヴィジョンとは少し異なるのかなというのが不幸というかなんというか。

一番の不幸はジョアン・ジルベルトという人の最上の表現がライブであり、生で彼に触れることだと思います。やはりあの予測不能なあのライブ空間に出くわしたか否かで彼の世界観にのめり込めるかというのが一番のネックになっているのでは?と。ライブ盤ではあの空間の一体感はどうしても欠如している。まあ仕方ない事なのですが…。

・最後に

そもそもジョアン・ジルベルトガイドと銘打ちながらも初心者向けな内容でもなかったので、なかなかハードルは高いままだったかなと。

これをきっかけにジョアン・ジルベルトという人に少しでも興味を持たれたらこれ幸いという思いです。

とまあつらつらと書き連ねましたが、この文章とこの後書こうと思ってるライブBDで終わろうと思います。

実は2004年のライブ体験記も書き上げているのですが(半分フィクションの当時の恋人とのやりとり)、リクエストがあればアップしようかな…なんて。興味ある方はコメントかツイッターでリプ下さい。以上です。

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