つめたいスコールの泡に触れたような
宮地尚子 傷を愛せるか 増補新版
(ちくま文庫 み-37-1)より
※何箇所か端折ってます。
溺れそうだと思っている人に、「力を抜いて!」といっても無理である。
溺れそうな時に、たくさんのことを言われても耳に入らない。
身体を少しずつ水に慣らし、恐怖をやわらげていくしかない。
溺れそうな気持ち。
必死で手足をばたつかせないと、沈んでいきそうな感覚。
息苦しくて、何が何でも水面上に顔を上げてしまいたくなる気持ち。
すくんで、縮こまる身体。
何かにしがみつきたくなる衝動。
上手に泳げるようになったら、
忘れてしまうであろう、その感じを、
できればずっと覚えていたい。
心に刺さって、しゅわしゅわ〜っと
静かにとけて、そのままぐるりと
やわらかい膜が張られたような。
そんなやさしい印象を抱いて、
そっと涙がでた。
2024年上半期でBest3に入る本。
夏に飲んだスコールの泡を思い出しながら。
(カルピスソーダににている)
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