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スキャナーに生きがいはない 人類補完機構全短篇 (ハヤカワ文庫SF)

どんな本?

1950年、あるSF雑誌に無名の新人の短篇が掲載された。異様な設定、説明なしに使われる用語、なかば機械の体の登場人物が繰り広げる凄まじい物語……この「スキャナーに生きがいはない」以来、〈人類補完機構〉と名づけられた未来史に属する奇妙で美しく、グロテスクで可憐な物語群は、熱狂的な読者を獲得する。本書はシリーズ全中短篇を初訳・新訳を交え全3巻でお贈りする第1巻。20世紀から130世紀までの名品15篇を収録。解説/大野万紀。
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著者略歴

コードウェイナー・スミス
1913年アメリカ生まれ、1966年没。本名ポール・マイロン・アンソニー・ラインバーガー博士。著名な政治学者で(ジョンズ・ホプキンス大学教授。中国を中心とする極東の政治が専門)、軍人(陸軍情報部大佐)。少年時代を中国で過ごし、かの孫文につけられた中国名は林白楽。第二次大戦と戦後の米国の対日政策でも重要な役割を果たし、ケネディ大統領の顧問も務めた。1950年、ファンタジイ・ブック誌に「スキャナーに生きがいはない」を発表し、SF界にデビュー

翻訳:伊藤典夫
1942年生、英米文学翻訳家
翻訳:浅倉久志
1930年生、2010年没、1950年大阪外国語大学卒、英米文学翻訳家
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人類補完機構

人類補完機構シリーズは、彼の作家としての仕事の中で最も大きな部分を占める。彼がSF作家として旺盛に活動していた期間は短いが、その間にも文体は変化しつつ、後の世代に大きな影響を残した。また、時系列に沿って書かれたわけではない一連の作品群の中では、同じ用語がいささかならず違った意味で用いられていることもある。
同シリーズにおいては各種の動物を改造し人間形態にした「下級民」が登場する。「ド・ジョーン」「イ・テレケリ」のように名前の最初に付く一文字のアルファベットは彼女ないし彼が何の動物から作られたかを意味する。ド(d)はdogのd、イ(e)はeagleのeである。
人類補完機構」という日本語における名称は伊藤典夫の訳語であり、新世紀エヴァンゲリオンの「人類補完計画」はこれに由来する。だが元の言葉「インストゥルメンタリティinstrumentality」の直訳は「道具」「手段」である。スミス自身は宗教的な意味づけをしていたらしく、実際これは神との仲立ちをする「仲介者」すなわち聖職者のことも指す。作者の急逝によって書かれることのなかった同シリーズの最後は、人類と下級民共通の宗教的クライマックス(詳細は不明)であったらしい。
スミスの作品でひどく印象的なのはその言葉の使い方であり、タイトルである。ただしそのタイトルのいくつかは編集者がつけたものである。これらは本文の特徴的なフレーズから採られたものであり、彼の作品であることを端的に示すものとして非常に有効なものであった。雑誌なりアンソロジーで、作者名を見ずとも題名だけでスミスの作品であることが判るためである。
コードウェイナー・スミス

良くまとめられたサイトはこちら(大野 万紀:SF評論家)


感想

読後に良くまとめられた書評を読むと「なるほど〜」と思い、理解が深まります。
自身の感想があやふやであると、イメージがそれに引っ張られてしまう、という影響は否めません。


MOH