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『隻眼の邪法師』 アルデガン外伝7 巻の4

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かつてアールダが訪れた東の地を舞台とするアルデガンシリーズの最新作。巻の4は第12章。ラストに向けての最大の荒れ場です。
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2015年10月の記事一覧

『隻眼の邪法師』 第12章の16

<第12章:修羅の洞窟 その16>

 またも突き上げてきた揺れに兄は、ヨシュアは立ち上がった。時間がない。弟を、ポールを助けなければ!

 しなければならないことは二つあった。ポールをなんとか逃がすことと、あの装置のレバーを戻すこと。火の山が揺れ始めたら暴走はもう止まらないとイルジーはいっていたが、放置するより威力は弱まるともいっていた。弟が逃げきるためにはどうしても必要なことのはずだった。

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『隻眼の邪法師』 第12章の17

<第12章:修羅の洞窟 その17>

「なにをいう! 誰がそんな穢れた技など!」
 叫び返した若き戦士に嘲笑で応じる黒衣の魔導師。
「この期に及びなお欺くか。オルトとやらが全て吐いたわ!」
「なんじゃと!」
 色を失い立ち尽くす修道士とおぼしき老人を、仮面の奥の隻眼が睨みつけた。
「図星であろう。奴はぬかしおった。たとえ完成しておらずとも自分が完成させれば永遠の命もこの世の栄光も我がものになろうと

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『隻眼の邪法師』 第12章の18

<第12章:修羅の洞窟 その18>

 赤く塗りつぶされた視界が晴れたとき、四人の目に飛び込んできたのは予想もできぬ光景だった。

 床一面に瓦礫と得体の知れぬ干物らしきもの、そしてどろりとした汚泥のような異臭を放つものがぶちまけられていた。魔導師のしわざかと思ったとたん、またも襲う大きな揺れに棚に残っていた壷が落ちて砕けた。そしてその惨状を、扉の通気孔から差し込む陽光がくまなく照らしていた。

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