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ニャンコどこいった?

かわいさの秘密って?


20年以上前、犬派だった僕をネコ好きにしてしまったネコがいました。

僕がアメリカに留学していたときに住んでいたアパートの大家さんが飼っていた黒ネコです。

赤い首輪をつけていて少し長毛でフワフワしているその黒猫はとても人懐っこく、向こうも僕を気に入ってくれたのか頻繁に僕の部屋に遊びにくるようになりました。僕は「ねこキャット」と愛称で呼んで遊んだりオヤツをあげたり一緒に寝たりして飼い主気分を味わっていました。

普段はゴロゴロもふもふしているかわいいだけのねこキャットも、僕が学校の課題をしていると邪魔をしてきたり、外に出たい、お腹がすいた、という理由だけで寝ている僕を叩き起こすこともありました。

その頃の僕はとにかく睡眠が一番の幸せで、それを害されることがもっとも苦手だったのですが、なんでだろう? 犯人がねこキャットと知ると許せてしまうし、それどころかむしろそういう身勝手なところにこそ強く愛おしさを感じていることに気づきました。

この不思議な感覚は人間の赤ちゃんや幼児に対しても抱くことがあって、ただ平和的にかわいいなぁ、と感じるときよりもむしろ軽い怒りを伴っているくらいの方がやけにかわいいし、愛おしく感じたりします。

そんなネコや赤ちゃん、幼児たちに共通するかわいさの秘密はなんだろうという疑問に向き合ってみて、僕なりにたどり着いた答えは「純真無垢への憧れ」でした。僕もあんな風に生きてみたいなぁと心から思うのです。

読者の子どもたちには絵本に登場する赤ちゃんとネコの掛け合いをそのまま一緒に楽しんでもらい、お父さんお母さんには大変な子育ての奥にある愛おしい気持ちを抱きながら読んでもらえたら嬉しいです。

最後に、アメリカに住んでいるときはネコの絵本を描くなんて想像もしていなかった僕にネコのかわいさを教えてくれた「ねこキャット」どうもありがとう!

(月刊「こどもの本」2018年8月号より)

ごちそうさまでしたねこキャット
課題の邪魔をしますねこキャット


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