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隙間産業

有り難いことにオーダーを幾つか頂戴しました。変なモノしか作らない。オーダーフォームもない※。連絡先のtwitterは鍵アカウント。しかもそこそこ待たされる。それでもという方がいらっしゃっるのですから、これは襟を正さなければいけません。趣味の延長とはいえお代を頂戴するからには、求められてるモノ以上でお応えしようと思いました。

※追筆 6/5 オーダーフォーム(web store)完成しました↓



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①トニーライススタイルストラップ #002



前回友人にプレゼントしたshowcase製トニーライススタイルストラップを見て、訪ねて来てくださった方のオーダーです。

・染色済み革材(タン/ワイン)
・長さ(ピン間1045mm)
・厚さ(2.5mm程度)
・コバ、床面ともに磨き処理

友人からのレビュー(反省点含め)が実に率直だったので、すぐにフィードバック出来ました。これは本当に助かりました。なかなか悪いところって言い難いですからね。なので作業は前回とは比べ物にならない程、はかどりました。


飾り捻は今回もMANZANITA1号が大活躍してくれました。


床面は毛羽立ちを抑えた程度の処理をお勧めしていますが、強い希望で磨き処理をしました。オーダーの厚さに近付けながら整えつつ0.4mmほど削ります。そのあと希薄させたトコノールでごりごり押し潰してゆきます。


一通り作業を終えてみると、前回の手染めとはやはり風合いが異なります。なんというか小綺麗過ぎる。悪く言えば量産品のような質感。どうしましよ。。。
※ここから革を育てるのが好きな方もおられますし、実際showcaseのストラップはピッカピカのギンギラギンです


ということで事後報告でエイジング!(気に入ってもらえなければ作り直せばいいや)染色済みのコーティングを剥がし、均一過ぎる塗面に経年で得るであろうアタリをつけます。


そして本人が見ればわかる程度のグラデーションを両端に与えて、立体感を出してみました。途中経過のご報告で喜んで頂けたので、色止め、オイリング、乾燥の3セットで完成です。ご希望で即違和感なく使用できるまで柔らかく仕上げました。


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ワイングラデーション(サンバーストのほうが聞こえがいいかしら)。作業自体はそんなに時間を取られるものでも無いので、染色済み革材+この程度の手染めなら、今後もサービスさせて頂くことにします。

     (5800円/2週間程度で発送可能)

※細かいオーダー方法や価格は前項の"トニーライススタイルストラップ"をご覧ください


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②トロンボーンストラップ

古い友人からのフルオーダー。とにかく"時間を掛けてもいいので好きにやって欲しい"とのことで、とても楽しい作業行程でした。

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まずトロンボーンにストラップがあることすら知らなかったのでお勉強から始まります。
どうやらほぼヤマハのみの専売らしく、隙間産業の胸は高鳴ります。説明書を読むと、、、"F管付きトロンボーン、2ローターバストロンボーンなどの楽器を保持するうんたらかんたら" 、、、そっ閉じ。。。
とにかく重いトロンボーン(オーナーはバストロンボーン奏者なのでさらに重い)を演奏の邪魔をすることなく、片手で支えなくてはいけないようです。

             ※ヤマハ公式hpより

そうこうしているうちに、現在使っていらっしゃるストラップと不満点や希望がしたためられたお手紙が届きます。

・重たい楽器の保持で手が痛む
・同梱のストラップが最適の長さ±10mm
・マウスピース部の長さは1.2mm以下/直径はなるべく正確に
・あとは好きにせい

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あまり深く考えずラフを描いてみましょう。

管楽器はギターよりさらに高価で繊細な楽器です。しかも重い。可愛らしく作ることは可能でも、実用に耐えなければ意味はありません。
ヤマハのストラップは合皮ですが、マジックテープ(面)で保持しています。これと同等の金具を探さなければ、重いバストロンボーンを支えられません。しかも無段階調整でなければ、折角のオーダーもヤマハの使い勝手に負けてしまいます。1回目の提案はギボシ金具(点)で保持する予定でしたが、上記の懸念から自ら却下させて頂きました。


次は立体的考察に切り替えました。

2回目の提案は、ダブルリング式(線)の保持です。時間的にも材料の発注をしなければいけないので、おおよその面積を知るためにも型紙を起こしてみました。並行してストックしている革材と金具で強度テストを繰り返し、問題のない革材とリングから色を選んでもらいました。また金属アレルギーとのことなので、リング径を抑えベースとの差異を設けました。またこの時点で、正確なお代金をお伝えしました。

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まず型紙通り切り分け、細かいパーツから作ってゆきます。1番テンションの掛かるパーツなので裏をガチガチに磨き、ノリシロを削りながらボリュームを落とします。


ステッチは細番手0.45mmロウ引きナイロン(ベージュ)で、間隔は0.5mmスパンです。

張り合わせでさらにボリュームが出てしまうので、接着効果を兼ねてやすります。



とにかく神経を使ったマウスピース部。キツくても緩くてもダメです(今後の事を考えてほんの少しだけキツくしておきます)。正確な直径を意識しながら"ウェットフォーミング"という技法で型取りします。革は濡らすと乾燥する際に、油分を連れて蒸発する作用で硬化します。ちょうど良い径でテーパーが掛かったマジックペンがありました。


綺麗な真円で型取りできました。


次は折り返したベルトが収まるサルカンです。専用の金具は星の数ほど問屋にありますが、楽器を痛めてはいけないので作ることにしました。細かい手縫いが楽しくてたまりません。至福の時間です。


サルカンは本来固定されるべきものなのですが、ステッチ(裏)が可愛らしかったのでリバーシブルでフリーにしておきました。以降水で濡らす行程はご法度なので、先に刻印を済ませます。


コバ面とベルトの一部をスムーズかつ強度を高めるために磨き処理をします。それ以外の床面は、使用感優先で毛羽立ちを抑えたスウェードのままです。また管楽器の塗装もデリケートなので、薬剤は控えたほうがよいと思います。


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か、か、かわいい。。。



強度も問題なさそうなのでひとまずご報告。喜んで頂けたので、色止めとオイル処理を重ねてさらに1週間。


とんでもなくかわいいけど、とんでもなく需要のないモノを生んでしまった。。。トロンボーン持ってないけど手元に置いておきたい。ほらniko and...の多肉植物売り場みたいに鉢に巻く的な。知らんけど。

いややっぱりトロンボーン奏者に刺されば嬉しいです。   (2800円/2週間程度で発送可能)


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【追筆】6/1オーナーの手元に届き、無事に装着演奏テストに合格しました。以下転載です。
※画像にtweetのリンクを埋めています


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③スマートキーケース

オーダーではないのですが、嫁さんに車のキーケースを作りました。カー用品店にいけば汎用品の合皮から専用設計の本革まで沢山あります。レザークラフトでも好んで作られます。


上記のウェットフォーミング技法で絞りました。
(自家用ということで途中経過の撮影を失念しておりました)手染めグリーングラデーションにも真鍮の金具は似合いますね。手縫いは雑に済ませたので少し反省です。この辺りのアイテムは沢山の作家さんが沢山エントリーされているので、価格もデフレ気味です。個人的にも売れ線を扱うとニッチな閃きを失いそうなので、ごめんなさい価格は高めに設定させてください。そのかわり色材質デザインなどの融通はなるべくお伺いします。というか、そのほうが燃えます。折角のオーダーなので、世の中にないモノを提案してください。

           (5800円/10日程度)

※ロッキー・ライズ・タントetc適合、それ以外は予備キーを預かって型取りします

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どちらも自由度の高いオーダーで楽しむ事ができました。本当にありがとうございました。
※お問い合わせはコメント欄かtwitter( @mohikan1974_2nd)までお気軽に

拝 もひかん


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