見出し画像

『Hookah Haze』感想

『Hookah Haze』を実績コンプリートで全エンド回収したので、完走した感想をつらつらと書きます。
各種エンディングについても触れるのでご注意を。

それでは早速。


はじめに

まず一言ですが、「想像してたより遥かにヘヴィなヒューマンドラマ」って感じですね。
本作の存在を知ったときは「あ、可愛いし良さげ!」と思ってウィッシュリストに即ぶち込み、公式から設定が明かされたときやDemo版をプレイしてからは「おぉ…そういう背景もあんのね…」と若干感動よりのテイストだと思い込み、本編プレイし始めてからは「ぐぇぇ…そういう感じだったのね…」とキャラクター背景のなかなかの重さに頭を抱えることになりました。いや、良い話ではありましたけどね。

総プレイ時間は約14.2時間エンディングは全部で12種類。分岐点は選択肢によるもので、セーブも十分にできるので回収しづらいエンディングは無し。個人的にはもう少し条件が入り組んでるほうがやりがいあって良かったかな~とも思ってるんですが…。
実績も基本的にはストーリー進行で手に入るものばかり。『フレーバーの伝道師』はプレイの仕方によっては回収できてないパターンもあると思います(というか私もそうでした)が、言うても35通りですからね。既読スキップ機能も非常に優秀だったので実績コンプリートも容易でした。

あと、最初にお断りしておくんですが…。
度々『VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action』(以下、VA-11 Hall-A)と比較することがあると思います。
類似ジャンルでプレイしたことがあるのがこれしかないもので…ご了承ください。

『Hookah Haze』とは

ACQUIREさんによって制作された、シーシャ屋を舞台に美男子新米店長と一癖も二癖もあるヒロイン3人によって繰り広げられるビジュアルノベルアドベンチャーゲーム。
Steamのタグには「恋愛シミュレーション」のジャンルが付けられてますが、いわゆるそれではないと思います。なんて言うんだろう…もっと深いというか、もっと人生よりの…。とか思ってたら「人生シミュレーション」っていうタグも付いてた。なんだそれ。

このジャンルに限らず、この表現自体をあまり好まないんですが、言うなれば”VA-11 Hall-Aライク”。そんなカテゴライズがあるかどうかも知らんけど。
お店を営みながらお客と交流して、仲良くなっていろんなお話を聞いて、キャラクターやストーリーの核心に触れたり、キャラクター同士のやりとりを見たりして楽しむ感じのアドベンチャーゲームですね。

「やりたいことはありませんか?」
病気のため先が長くないことから、生きる希望を失った主人公・『炭木トオル』
医師との話し合いの末、期間限定のシーシャ屋の店長として働くことに。

そこで出会ったのは、個性豊かな3人の女性。
一見明るい彼女たちも仕事の悩みや過去のトラウマを抱え自分たちの居場所を探している。
トオルはシーシャを提供しながら、少しずつ彼女たちの本心に触れていくことに。

心を通わせた果てに、主人公と彼女たちが迎える結末とは――

公式サイトより

もちろんストーリーも良きものでしたが、演出UIイラスト、etc…どれも本作には欠かせない重要な要素になっていたと思います。

そのあたりも踏まえて今回は、本作の特徴と良かった点物足りなかった点キャラクターの好きなところエンディングについての感想 って感じで吐き出していこうと思います。

本作の特徴と良かった点

…の前に、まず本作のだいたいの流れをざっとご紹介。
あらすじにも書いてある通り、主人公の 炭木トオル は病気を患っており、処方されている薬を毎日飲まないと命に関わるレベル。過去に何度か治療を受けたことがあるものの快復はせず、生きる希望を失っていました。
そんなある日、担当医の先生から”患者がやりたいことを叶える”ための支援制度の話を持ち掛けられ(というか猛プッシュされ)、『Hookah Haze』というシーシャ屋を開店し店長を務めることに。
14日間という短い期間ではあるものの、趣味であったシーシャとアクアリウムに囲まれた環境で生きることになりました。

日付の切り替わりには、残り日数が感じられてしまうカレンダーや内服薬が…。

ということで、基本的なプレイサイクルは

  1. シーシャ好きのためのSNS『Hookah Link』でオススメフレーバーを投稿

  2. 営業開始&投稿したオススメフレーバーに応じてお客が来店

  3. お客やその注文に合わせてフレーバーを組み合わせ、シーシャを提供

  4. お客との会話A

  5. 炭交換

  6. お客との会話B

  7. お客が退店&営業終了

だいたいこの7ステップ。この1サイクルを、事実上トオルくんに残された時間とも言える14日間繰り返し、その中でのストーリーを追っていくことになります。

ということで、そんなプレイサイクルで進んで行く本作、『Hookah Haze』について、まずは特徴や良かったところから吐き出します。

- シーシャについての知識は不要

いきなりですが、”不要”は若干語弊があるような…。”必ずしも必要ではない”とか”無くても問題はない”とか。そういうニュアンスです。
「そもそもシーシャってなんだ…?」って人でも楽しめるってことですね。

というのも、あくまで題材にシーシャが用いられているだけで、ストーリーの大筋にシーシャはさほど関係なかったです。”お酒でも良かった”とかそういうことですね(VA-11 Hall-A脳)。でもシーシャというチョイスが絶妙だったと思える点もありましたよ。

また、作中でシーシャについての簡単な説明が出てくるので、前提知識としては不要だと言えるでしょう。
Hookah Haze の初めてのお客となる 愛上あむ がシーシャを知らない設定だったので、非常に自然な流れでシーシャについての説明が出てきました。
私もあむと同じくシーシャについての知識は、タバコ系統ということしか知らなかったレベルで皆無だったので、まともな説明を聞いたのはここが初めてでした。
このシーシャ、なんとも不思議な嗜好品といった感じがしました。ゲーム内の超簡単な説明では細部まではイメージしきれなかったので、もう少し鮮明にするためにシーシャについて解説している動画をちょっと見たりしました。原理とか注意点とか。

なんていうか、すごくファンタジーな見た目してるよね。

まぁ、頭で原理とかを理解してもイメージするのは難しいですね。結局は体験してみないことには分からない気がします。
ちなみに私、タバコは吸ったことないしどれだけ魅力を熱心に語られても、全く吸う気にならないタイプの人間なんですが、シーシャはどんな感じなのかちょっとだけ気になりましたね。それでも実際は吸わないんでしょうけど、夢でなら吸ってみたい。
そういう意味では、シーシャを吸ったことがある人はより一層共感が得られたりするかも。そういう人の感想を聞いたみたい気もする。

ちゃんとタバコなので、20歳未満の方はシーシャもNG。

- 煙の魅せ方

そんなシーシャですが、上述したようにタバコの一種です。素人並感ですが、タバコなので吸ったら口から煙が出ます。
その煙の見せ方魅せ方?がとっても良かったという話。

下の画像で言うと、画面上と画面右に来店したお客が座ってシーシャを嗜みつつトオルくんと会話をします。会話の内容は中央の位置に表示。
会話の途中でお客がシーシャを吸うことがあるんですが、その時に吐いた煙が中央の会話ウィンドウにもろ吹きかけられるという演出。これがめっちゃ好き。これが逆にウィンドウの仕切りに合わせて見切れてたら、本作に対する印象は大きく違っていたんじゃないかな~って思いますね。
煙そのものにも濃淡が感じられたり、お客によって広がり方が違ったりと、こだわりMAXでした。こういう小さなこだわりの積み重ねが魅力を惹き立てていくんだろうなぁ…。

- 効果音の心地よさ

本作、効果音も良いのです。とくに好きなのを3つ挙げます。

1つめ。お客に提供するフレーバーの組み合わせを選ぶとき、各フレーバーにカーソルを合わせたときの音です。ビンの音って言えば伝わるかな。
なんか「あぁ~、ビンを手に取ってるなぁ…」って感じするし、何より心地よい音なんですわ。
無駄にカーソルを左右に動かしてカランコロン鳴らしてました。

カーソルと反対側にあるビンはピントがズレるのも好き。

2つめ。お客がシーシャを吸ってるとき、水の中でコポコポ鳴る音です。
やっぱり水の音って良いよね。昨今ではいわゆるASMRにもよく使われるみたいですが。

画像じゃ伝わらないって分かってるけど載せる。

3つめ。炭交換のときの音。
シーシャを嗜むうえで、炭交換と呼ばれるフェーズが存在するようなのですが、そのときのカンカンする音だったり、ヒートマネジメントシステムという、質の高いシーシャを提供するのに用いられる器具をいじる音です。
なんか良い音がします。

みんなもカンカン音は好きっぽい。

- BGMプレイリスト

音つながりで、お次は音楽。
『VA-11 Hall-A』や『Coffee Talk』にもあるので、”本作ならでは”というわけではないんですが、プレイ中に流す曲を変更することができるシステムがあります。やっぱり好みの曲を流しながらプレイできるのは良いですね。
もちろんストーリー上、変更できない場面もありますが、そのときは確実にその場面に似合った曲を設定してくれているので、何も問題なし。

プレイリストを任意に設定することもできるので、特にお気に入りの曲だけでループさせることも可能。私は全曲入れてましたけどね。

ちなみに、私は『Pika Pika』という曲が好きです。

プレイリスト単位だけでなく、1曲リピートもできたり。

- フレームのカラーリング

ここまでで貼ったスクショでお気づきの方もいるかもしれませんが、本作は画面を区切っているフレームの色と明るさを調節することができます。これは本作ならではの要素かと。
色は「Pink Cyan」「Purple Blue」「Green Blue」という3つの組み合わせから選択、明るさはスライダーで細かい調整が可能。
私は あむ=Pinkこころ=Purpleくるみ=Green が個人的にキャラクターから感じるイメージカラーと合っている気がしたので、誰かが来店するタイミングでそのキャラクターに合わせて色を変えてプレイしていました。たまに忘れてましたが。 明るさは常にMAXでピカピカです。

改めて並べてみると、完璧にマッチしてる気がする。

画面まわりでもう1つおまけ。
上記のようなフレームで区切られた画面だけではなく、全体にキャラクター、背景、字幕が表示される画面もありました。
キャラクターがとても魅力的なので、それがドカンと画面全体に映ってくれるのはありがたいですね~。表情や動きも分かりやすくなるし。
というか本作、表情も動きもめちゃくちゃ豊富なんですよ。ピクセルアート、いいよね。

か” わ” い” い” ね” ~”

- システム面の良さ

細かいところだけど大事なところ。とくに良かったのは既読スキップ機能
本作はエンディング分岐も分かりやすいし、回収する要素もそこまで多くないですが、この手のゲームにおいて既読スキップ機能はやっぱりあると助かりますね。本作の既読スキップ機能はめちゃくちゃ高速。本当にブァーッっと進みます。
それでいて”既読”スキップなので、未読の文章が出てきたらそこでピタッと止まってくれる。本当にありがたいです。一応、設定で”未読”スキップにもできるけど、まさか初見でそんなことする奴いねぇよな
あとセーブスロット数も十分。結構細かくセーブするタイプの人間だと思ってるんですが、エンディング回収後も余るぐらいには余裕ありましたね。

- 2人来店で会話が増える

最初のほうで紹介したサイクルにもある通り、投稿したオススメフレーバーに応じてお客が来店するわけですが、フレーバーによっては同日に2人来店してくれます。
これによって、それぞれのストーリーが1日に両方とも進行できるというのもありますが、来店した2人の会話が見られるということのほうが個人的には嬉しかったです。

それぞれ、他のキャラクターに対するアプローチの仕方が違って面白かったです。みんな Hookah Haze で初めましてだったみたいなので、最初は会話(とくに対くるみ)が成立しなかったり、いきなり相手の地雷を踏み抜いたり…。トオルくんもちゃんと会話に参加してくれるのも良かったですね。
基本的には、重めな本編に対して微笑ましい会話が多くて癒しの時間でございました。ありがとう。

家族の話って地雷があること多いけど、地雷ある前提で話す話題でも無いもんな…。

物足りなかった点

もちろん、一部物足りなかった部分もあります。そこも正直に。

- 喋ってるときの効果音が無い

いきなり細かいところなんですけども。本作、ボイスは無いので会話はテキストベースで追うことになります。そこに変わりは無いとは言え、個人的には人が喋ってるときには効果音が欲しいと思いましたね。
ボイスが無いゲームでも、テキストの表示に合わせて音が鳴るものってあると思います。それがあればもっと”会話してる感”があったのかな~って思っちゃいました。
声の大きさを音の大きさで表現したり、おじさんは低い音、幼い女の子は高い音、みたいに音の高低差でキャラクターの雰囲気の違いなんかも出せたりすると思うんですよね。『VA-11 Hall-A』ではそこまでやってた記憶があります。
まぁ本作のキャラクターは年齢も近いし、性別は唯一トオルくんだけ男性だけど中性的美男子なので、差を付けるところまでは不要かと思いますが。それでも何かしら効果音あったほうが良かったな~って話。

フォントサイズで声の大きさが表現されている場面もあったので、
効果音の大きさでも表現できればもっと良かった気がする。

- 炭交換が早い

前述してますが、私はシーシャを嗜んだことはないので、「実際にシーシャ吸うときと比べて炭交換早ぇよ!」ということではなく。
サイクルにも書いてますが、シーシャ提供して会話があった後、炭交換のフェーズに入ります。この会話が短いというか炭交換が早いというか…。とにかく会話がノッてきたぐらいのタイミングでちょうど炭交換になるんですよね~。

決して炭交換のフェーズが要らないってわけではないんです。あれはあれで音も楽しめるし炭交換中ならではの会話もあったりするので。
なんですが、どうしても毎回会話がノッてきたタイミングで炭交換になるので、そこで一区切り付いちゃうというか、気持ち的に一休憩入っちゃうというか…。そんな感覚がありました。上手く言語化できない…。
贅沢な話、もう少しシーシャ提供直後の会話にボリュームがあったら良かったな~ってことですね。

- 各要素のストーリーへの影響が無い

本作、日々シーシャ屋を営業するうえでプレイヤーがいろいろな選択をすることができます。
①オススメ投稿②提供するシーシャのフレーバー選択③炭交換時の炭の量④Hookah LinkでのDM返信、これらのことですね。
これだけあるんですが、ストーリーに影響するのは①のみで、他の②, ③, ④はそのときのリアクションが違ってくるぐらい。しかも④に至ってはその後やり取りが続くというわけでもないので、実質何も起こらないと言っても過言ではないかも。
せめて②はお店としてのメインなんだからストーリーに影響しても良かったんじゃないでしょうか…。

極端な話、ここでストーリーを進めたいキャラクターが好むフレーバーのオススメ投稿を
一定回数行うだけで、見たいエンディング分岐に辿り着くってことになっちゃう。
つまり、全部これで良いってことになっちゃう。
これらも適当&全スルーであっても影響なしということに…。

ということで、個人的にはこれらもしっかりストーリーや分岐に関わってくれたほうが良かったな~というのが正直な気持ちです。
もちろん、いわゆる因子が増えると結果は倍々になっていくので、それだけエンディング分岐が複雑化するというリスクがあるのは理解してますが、ある程度は複雑なほうがやりがいもありますし、何よりせっかくの要素が実質無意味みたいな感じになりかねないのは勿体ないなっていう、私の勝手なお気持ちです。
私はそういう細かいリアクションの違いも楽しみたい派の人間なので、ストーリーや実績の回収が終わってから一通りリアクションを見るためにプレイしたりしてましたが、全員が全員そうではないと思うので…。

キャラクターの好きなところ

ここまでいろいろ書いてきたけど、まだ登場人物について語れてないので、メインの登場人物である4人について、各々のハッピーエンドに触れつつ書いていきます。

愛上あいがみ あむ
秋葉原のコンカフェ店員。
愛されたがりで寂しがり屋。自分のことがとにかく大好き。
(ちなみに、Xアカウントがある。)

現実でこんな人きたら怖くて助けられない。

DM欄を見れば火を見るよりも明らかだけど、とにかく面倒くさい自分大好き構ってちゃん。自分の可愛さには揺るぎない自信を持っていて、お店ではリアコ営業とかもしちゃってる。分かったうえでアタックして振られてみたい。 それが原因で厄介な客に追われていたところで、Hookah Haze に逃げ込んできたのが出会いというわけですね。
トオルくんのことを結構気に入っていて、お話したいがために彼を試すようなこともやっちゃう。そんでもって後悔しちゃう。
自分大好きではあるものの自分勝手というわけではなく、しっかり相手の気持ちに気を遣えるタイプだったのが好印象ですね。
鈍感なトオルくんには気持ちが伝わらず苦労してそうな印象でした。それでもトオルきゅんの可愛い表情を一番引き出してくれたのはおそらく彼女でしょう。(ナイスぅ!)

くるみとの会話は微笑ましいので必見。

そんなあむのハッピーエンドは『Offering Smoke』。直訳すると”煙を提供する”ですね。その名の通り、店を離れるトオルの代わりに Hookah Haze の次期店長に立候補するという話。
Hookah Haze に来て初めてシーシャを体験したあむが、初めは”トオルくんと共通の話題が欲しかったから”という理由だったかもしれないけど、最終的にはトオルくんの想いをしっかり受け継ごうという気持ちが感じられる、良いストーリーだったと個人的には思います。結構好きですね。
このハッピーエンドを見てから、あむから受ける印象が大きく変わった気がします。勢いで突っ走ってる感は否めないけど、一度やると決めたことはしっかりやり切るための努力を惜しまない人なのかなって。結構尽くしてくれそうですよね。

頼んだぞ。

明月院めいげついん こころ
ショップ店員。
礼儀正しく理知的で、普段は明るく元気だが、あるトラウマを抱えている。

何度見てもデコりすぎ。

ヒロイン3人の中では一番しっかりしててまともなタイプ。一方で抱えてる闇も一番大きくて重い…。ただ、それを悟られないように取り繕って毅然とした振る舞いをしてる印象が強かったです。最初のほうは特に。
トオルくんも似たような境遇であることを知ってからは、次第に抱えてるものを打ち明けるようになり、ハッピーエンドへと進んで行く…王道といえば王道なヒロインだなって思いました。
他のキャラクターとの会話ではツッコミ役やお姉さんポジションなことが多く、もはや「トオルくんと夫婦で、あむやくるみが子供かな?」みたいな空間が繰り広げられてました。微笑ましい限りです。甘えたい。

「こんなお姉さんいたら最高よな。」って思うけど、それも地雷かも。

そんなこころのハッピーエンドは『Forgiveness』。意味は”許し”
さっきの「もはやトオルくんと夫婦で」というのはあながち間違いでもなく、トオルくんと”家族”になって、1日1日を記念日みたいに大事に過ごす約束をするというお話。正直、ハッピーエンドの中では一番好き。重くてエモいの大好物なんですわ。
家族の中で自分だけが生き残ってしまったことや、そこに罪悪感があるものの”死にたい”と思うほど死にたくはないこと、そして”自分が好きじゃないからこそ 自分が幸せになるのが許せない”と思って生きてきた自分自身、それら全てを許す、そんな感じのタイトルでしょうか…。
自分と同じく家族がおらず孤独を感じて、さらに死を意識しているトオルくんとだからこそ辿り着ける道のような気がします。
…すげぇそれっぽいこと書いてるんですが、ここで5, 6行で書いてること全部こころ本人が語っていることそのままです。
上記であってるとしたら、タイトルに込められた意味まで含めて、やっぱり一番好きなハッピーエンドかな。

この困り笑顔が似合いすぎで…こっちが困っちゃう。

古森こもり くるみ
企業所属の人形作家。
マイペースな性格で、人とのコミュニケーションが苦手。

このスチル、綺麗すぎる。

オブラートに包んでも正直一番変な人。いわゆる不思議ちゃん。
でも、何を隠そうキャラクターとしては一番好きなんですわ!!!(大声)
(余談なんですが、こういうキャラクターの属性を何と呼ぶのか、誰か教えてください。)
唯一企業所属ということもあって彼女が抱えている問題は、いやに現実的な仕事がらみのもの。裁縫が得意でぬいぐるみを作る仕事をしているんですが、自分が作りたいと思っているものを作らせてもらえず…というか否定されて、会社からはひたすた素体を作る仕事を振られているというのが悩み。
この手のキャラクターによくある気がしますが、自分が興味あることに対する情熱は高い代わりに、一般的な何かが欠けていたり、どこか周りとズレているところがあって、Hookah Haze の店内でも、突拍子もなくアクアリウムや窓を眺めたり、机の下を這ったり、ナッツの呪文を唱えたり…。
とにかく変な子ですが可愛いのでOKです。でも迷惑行為は出禁になるから気を付けようね。

右下のへにゃり顔、好きだ。

そんなくるみのハッピーエンドは『Special Fan』。訳す必要はないッスね。
くるみが本当にしたい仕事をするために、彼女の仕事のサポーターをトオルくんが一緒に探すことになる、という話。そのうえで、トオルくんがくるみが作る作品の一番のファンになりたいと伝え、くるみがそれを受け入れる。おそらく、”くるみにとってトオルくんが特別なファンになる”ということででしょう。
ただこのハッピーエンド、この後のくるみの姿がちょっといたたまれない感じで、個人的にはハッピー感が薄い気がしました。誰のハッピーエンドでもトオルくんがいなくなるという点においては同じなんですが、他2人のそれと比べてポジティブさが控えめというか、くるみが呪縛されているような感じがどうしても素直にハッピーとは言い難いような…。ほろ苦いと言えば聞こえはいいですが、難しいですね。

最高に可愛い。

炭木すみき トオル
期間限定のシーシャ屋『Hookah Haze(フーカーヘイズ)』の店長。
自身の幸せを願えず他人優先で、自分のことは諦めてしまいがち。好きなものはシーシャとアクアリウム。

営業2日目?にして客を減らすスタイル。まぁ正確には客じゃないんですが。

(設定については冒頭で少し触れたので割愛)
病弱設定からは想像もつかないレベルのバチバチなパンクファッションでキメた美男子。だが照れた時の顔はめちゃくちゃに可愛いんだぞ…。
超が付くほどの鈍感…というか「自分には価値がないから」という意識が前提にあって、普通なら行きつく結論を排除している印象。そのせいであむがヤキモキさせられてましたね。それもまた良いものでしたが。
また、一応トオルくん視点で話が進んで行くのでモノローグが読めるんですが、それがわりと頻繁に出てきました。結構いろいろ頭の中で考えてから言葉にしてるんだな~っていうのがよく分かります。まぁその考えはトオルくんの勘違いであることも少なくないんですけどね。

トオルくん本人いないけど、1人ずつ良い感じのスクショがあったのでこれでいいや。

ここまで、3人のハッピーエンドについて触れてきましたが、誰のハッピーエンドを迎えようが、トオルくんが亡くなってしまうという事実は変わらないんですよね。さらに、仕様上先にトゥルーエンドを見ることはできない。だからこそ、我々プレイヤーは「何とかしてトオルくんが生きていける未来が欲しい…」と思ってしまう…。計算された作りになっている気がします。そして、その想いにしっかり応えてくれるのがトオルくんのハッピーエンドとも言える、本作のトゥルーエンドというわけです。

ということで、お次はこの魅力的な4人が全員で幸せになるためのトゥルーエンドについての感想を。

ちなみに、バッドエンドについてはおそらくほとんど触れません。
突拍子もなくトオルくんが諦めたり、内容がつらくて感想書きづらかったりするので。見逃してください。

トゥルーエンドについての感想

トゥルーエンドは特定の条件を満たすとタイトル画面に追加される『TRUE ROUTE』で見ることができます。これはDemo版の内容が見られる『ANOTHER DAY』と同じく、通常の『NEW GAME』や『CONTINUE』とは完全に切り分けられた、トゥルーエンドを見るためのものになっています。

この「あれ?何か増えてるッ!」ってなるヤツ、良い。

TRUE ROUTEは、トオルくんが Hookah Haze でヒロイン3人と出会って1週間ほど経った時点からスタート。トオルくんは残り僅かな日々を、3人が少しでも良い未来に進めるよう、そして自分に悔いが残らないように過ごすことに尽力します。
そんなある日、トオルくんが毎日服用しなければならない薬を飲み忘れてしまったことで体調を崩し、その秘密が明るみに。

トオルくんが帰ってくるまで Hookah Haze の御守をしたり、みんなで「トオルくんに生きていて欲しい」という想いを伝えたり。
これで流石のトオルくんも気持ちに変化があるだろうと思いきや…。

まだ悩む要素あんのかよォ!!?!?

もう既にプレイヤーである私も、あむ・こころ・くるみと同じぐらいトオルくんに生きていて欲しくて、「トオルくんさぁ、ここまで言われて諦めるなんて言わないよね??」って感じになってたので、これには流石におったまげですよ。

翌日、そんなトオルくんの前に現れるのが、トオルくん大好き隊の隊長にして Hookah Haze の1日店長に勝手に就任した、奴です。

トオルくんが炭交換以外で煙吐いてるのここぐらい。貴重。

この展開、好き~~~!!!!!

普段提供する側の人が、普段お客側の人に提供されるイベント。『VA-11 Hall-A』のときにもありましたね~。
何より、このために自分でシーシャ台買って、おそらく前日にいろいろ練習とかしたであろう あむが健気で良すぎる…。前日、お店に来たのがこころとくるみだけだったのはそういうことなんでしょう。まぁ出来はアレだったようですが、そこはご愛敬~。

なお、これだけあむに献身的に寄り添われたうえで、まだ決心が付かないトオルくんでしたが、3人からの熱烈アプローチでようやく…

言えたじゃねぇか…。

トオルくん含めてみんなが揃ってるとそれだけで満足度が高いですね~。

もう1つ、このトゥルーエンドで好きなところがありまして…。
あむ・こころ・くるみ それぞれのハッピーエンドの要素も持っているところです。
あむはシーシャの勉強をしてるし、くるみにはトオルという一番のファンがいるし、こころも(あむ・くるみ含めて)もう家族同然でしょ。それぞれのハッピーエンドでの好きな部分が盛り込まれてて個人的にはめっちゃ嬉しいというか、安心しました。もしそこが無かったらちょっと寂しいなって思ってた気がする。

さて、このトゥルーエンドを迎えたことで、1つ思ったことがあります。

トオルくんが真のヒロインなのでは??? ってことですね。

序盤は冗談めに「トオルくん一番可愛いまであるw」とか思いながらやってたんですが、(一番可愛いかどうかは置いといて)一番ヒロインポジションだったのは間違いないような気がしました。
これは あむ・こころ・くるみ の3人と仲良くなってプレイヤーがニヤニヤするだけのゲームではなく、あむ・こころ・くるみ の3人がトオルくんと信頼関係を築いて、トオルくんを救い出す話だったんだ、と。

トオルくんはしっかりとした自我があるタイプの主人公です。トオルくんの立場になってゲームをプレイするのは結構難しい。要するにプレイヤーの媒体的な主人公ではないんですよね。あくまでプレイヤーは、トオルくんたち4人の物語を第三者視点で見ている形だと思います。
そう考えるとなおのこと、トオルくんもヒロインの一人だということに納得がいくような気がしています。

響きがカッコイイし、何かトゥルーエンドのタイトルっぽいよね(語彙)。

そんなトゥルーエンドのタイトルは『Over the HAZE』。意味は”煙霧の向こう側”みたいな感じでしょうか。
私は、トオルくんをはじめとした4人全員の抱える問題や悩みというもやが晴れた先にある未来、と解釈しました。

最高だ。

トゥルーエンドではもちろん、そんな明るい未来を感じさせる素晴らしいスチルが見られるんですが、それをここで載せるのは野暮かなって思うので、もし未プレイなのにここまで読んでしまわれて、どんなスチルなのか気になった方は、是非ご自分でプレイしてみてください。

さいごに

ゲーム自体のボリュームと比べると、かなり書いたほうなのでは?いつの間にか1万字を軽く超えてますね。
実は「あむとくるみの会話の中でもあれが好き」とか「すっとぼけて目を逸らしてるこころの表情が好き」とか「炭交換でぼちぼちor失敗したときのくるみのリアクションが好き」とか…まだまだ語れることはあるんですけど、なんか流れ的にもスマートに納められそうにないので、このあたりで〆とさせて頂きます。

このジャンルのゲームをプレイするのは『VA-11 Hall-A』に続いて2作目になるんですが、『Hookah Haze』は比較的シンプルな作りでありながら細部へのこだわりを感じられるし、キャラクターやBGMは非常に魅力的で、ストーリーも濃く印象に残るものだったので、全体的な満足度が高いゲームだったと思います。

こうやって出迎えられたいのでトゥルーエンドアフターの続編、待ってます。

最後に、制作に携わられた全ての人に感謝です。
満足度の高いステキなゲームをありがとうございました!

『Hookah Haze』の感想、以上です。最後までお付き合いありがとうございました。

それでは、良ければまた別のゲームの感想で。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?