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『Recolit』感想

『Recolit』を実績コンプリートでクリアしたので、完走した感想をつらつらと書きます。

それでは早速。


はじめに

まず一言ですが、「優しくてエモい雰囲気ゲー」って感じでしたね。
舞台は”夜”ということもあって雰囲気は静かで優しく、登場人物との交流やテキストもほんわかとしたものが多く、さらにストーリーの解釈はプレイヤーに委ねられている形でありつつも、バチッと考察するより「こういうことなのかなぁ~」ぐらいの雰囲気でとどめて感じ取るのがベスト…そんなふうに思わせる作品でした。

総プレイ時間は約3.8時間エンディングは全部で2種類ですが、分岐点は明らかだし終盤も終盤なところにあるしチャプター選択のシステムが親切なのもあって回収も簡単です。
実績は一部隠し要素的なものもあったので、そっちほうが少し大変かも。

『Recolit』とは

Image Laboさん&Marudiceさんによって制作された、ハイクオリティでキレイなドット絵と優しい音で彩られる探索型アドベンチャーゲーム。

『Recolit』(リコリット) は真夜中の町を「明かり」をたよりに進んでいく、ナゾ解きアドベンチャーです。

宇宙船が不時着して辿りついたのは、どこにでもある普通の町のようで、どこかふしぎ。
くらい夜の町なかに、何てことないように日常を続けるふしぎな人たちが、気がつくとそこにいます。

ジュースを買いたい、駅でハトと遊んでみたい。
そんなちょっとした気持ちに応えていくことで、お話は進んでいきます。
そうして、出会ったひとりの女の子。導かれるようにして進んだ先で、女の子は言います。

「…わかった、ここで待ってるね」

公式サイトより
ぼんやりとした明かりや水面の反射など、非常にハイクオリティなドット絵。

ちなみにパブリッシャーはyokazeさんなんですが、ヨカゼレーベルのゲームのあらすじって、作品内の印象的なセリフが含まれてて好きなんですよね~。いつもお世話になっております。
本作でいうと「…わかった、ここで待ってるね」ですね。上手く言語化できないけど、これでエモさと期待度がグンと高まるような...そんな感じ。

今回は、本作の特徴 と 個人的に好きなところ、そして私的なストーリー解釈 ぐらいに分けて吐き出していこうかなと思います。

本作の特徴

あらすじにもある通り、なんと言っても特徴は”「明かり」をたよりに進んで行く”点。わりと誇張抜きで明かりが無いと何もできません
逆に言うと”明かりがあるところで何かをする”ことになるので、やるべきことが非常に明確。悩むことはほとんどありませんでした(全く無かったとは言ってない)。

「暗くても置くことぐらいできるだろ!」とかいうツッコミはNG。

そして既に2回ほど登場していますが、主人公以外の登場人物は全員”光のシルエット”で表現されています。”シルエット”という言葉の意味を考えると何か矛盾してるような気もするけど…分かるよね?
シルエットでしかないので表情は見えないし、ボイスも無いゲームなんですが、セリフや動きで表情や声色が想像できる感じがして、とても良い設定だなと思いました。逆に想像力が搔き立てられているのかも?
基本的には、この光の人たち(?)の悩みごとや頼みごとを解決することで、今まで明かりが無かったところが明るくなり、次のアクションが起こせるようになる。それを繰り返すことでストーリーが進んでいく…というサイクルですね。
と言っても、大半の人はストーリーの大筋とはほぼ関係ないと思うんですが、それでも交流自体が微笑ましいものばかりでとても楽しめました。

ちなみに、この光の人たちは自身が淡い光を発しているのか、明かりが無いところでも交流ができます。というか、むしろ明かりがあるところでは姿が見えなくなってしまいます
ナゾ解きに関わることもあったし、何となく「儚い存在なんだな…」って感覚になってちょっと不安になりましたね。とくに画像の女の子はヒロイン枠なので、シルエットが薄くなるのを初めて見たときは「え、大丈夫ッ!?」って焦っちゃった…。

こっちがヒヤヒヤしたよ。

そんな光の人たちや、明るいところで触ったいろんな物は、主人公が持っている謎端末に情報が記録されていきます。しかも状況が変わると随時更新されるハイテク仕様。
進行に関わる内容は強調表示されているので、万が一行き詰まってしまったときのヒントになるゲーム的親切要素でもある。
そして、ここに書かれている人や物に対するコメントがとっても秀逸なものがたくさんあって大好きなんですよね~!これについては後述。

「大半の人はストーリーの大筋とはほぼ関係ない」と述べましたが、ストーリーに大きく関わるのは『あの子』との交流ですね。
…誰って、『あの子』です。
本作、登場人物はそれなりにいるんですが、明確な名前が付いている人は存在しません。これも大きな特徴の1つだと思います。
ちなみに、一度しか登場しない人がほとんどですが、『あの子』は複数回登場し、その度に表記が変わっていきます。そこについても後ほど。
ちなみに、最初は『さいしょに会った子』でした。

『あの子』との交流でストーリーが進んでいくことによって、主人公や『あの子』の秘密に少しずつ触れることができる作り。これがまた「どういうことなんだろう?」っていうワクワクから、徐々に「あ、これエモいヤツかもしれん」ってなっていく感覚がもうたまらんです。

科学館の後半あたりは特にエモエモセンサーが乱立してた。

個人的に好きなところ

ストーリー上の好きなシーンと、人や物に対する秀逸なコメントの中で個人的に好きなものを挙げます。それぞれ一言ずつぐらい述べていく所存。

- 好きなシーンたち

◆ 『あの子』との約束
”一緒に宇宙飛行士になって、星空と地球をみよう”と約束するシーン。
”一緒に”ってところが良いのと、そのときのセリフが好きですね~。

このセリフ、好き。

◆ 宇宙服の顔はめパネルで記念撮影
ここは好きなシーンっていうか、好きな展開かな?
やっぱり物語における起承転結の”転”は重要ですよね。

めっちゃ「え!?え…?」ってなった。

◆ 『あの子』からの誕生日プレゼント
これはもうシンプルに”エモ”ですね。主人公が着てる宇宙服、この絵のデザインそのままってのがね…。
良い意味でも悪い意味でも忘れられない物なんだろうな~って思います。

こんなの捨てられねぇよ…。

◆ 即興寸劇
とってもほっこりするシーン。
即興にしてはなかなかのクオリティだと思うけど、オチはめっちゃ適当っていうのが年相応な感じがして好きですね。仮にオチに深い意味があったらごめんなさい。

お誕生日になんてこと言うんだ。

◆ こける主人公
伏線が回収されるシーン。最初に見たときは「何もないのに転んでる…」って思ったけど、ここで初めて「そういうことだったのかぁ…」ってなる。

このあとのロケットの話も含めて良いんだよなぁ。

◆ ロウソクの火
ここは好きっていうよりも感情が大きく動かされたって感じですが。
ふつうに楽しいお誕生日パーティだったから、ロウソクの火を消すことに何の警戒も抵抗もなく誘導に従った結果…。

「え、まって!!!」って声出た。

◆ クレジット演出の違い
2つのエンディングでクレジット演出が異なっていました。
どっちが好きとかではなく、それぞれのエンディングの内容にあった演出になっているなと思いました。好きです。

- 秀逸なコメントたち

加減が分からなくて、わざとじゃなくても発生する事故。
ボタン式信号の恥ずかしエピソード代表でしょ。
二行目以降で「たしかに…そのための乗り物だったのか…」って気付かされた。
一番好きかもしれない。
時間どおりに来ないことのほうが多いんだよなぁ。
その点電車ってすげぇよな、基本的に時間ピッタリだもん。
さりげないバスdisりも個人的に好き。
今じゃ考えらんないね。
”見ながら聞く”って意外と難しいよね。
前半はステキな表現だなって。後半は分かり味しかない。
『Recolit』のことは忘れない。

プレイ中の時点でほぼ全部に対して「このテキスト良いなぁ~」って思ってたんですけど、載せたいやつが思ってたよりも多くなっちゃった。これでも絞ったつもりなんです。

ストーリー解釈

冒頭で述べた通り、本作のストーリー解釈はプレイヤーに委ねられている形になっています。なので、私的なストーリー解釈…というか「こういうことなのかな?」っていう妄想を、エンディング2種類にも触れつつ書き殴ります。

- 思い出を辿る物語?

この作品、ほとんどが”主人公の思い出や妄想”を舞台にしたストーリーだと思ってます。
光の人たちとの交流も、主人公は一切言葉を発していないんですよね。なので、主人公が一人称視点で思い出を辿っているところを、プレイヤーは第三者視点で見ている…そんな感じで解釈してました。
では、「登場した光の人たちは全員、主人公が過去に関わったことがある人なのか?」といわれると、しっくりこないところもあるような気もしますが。
でも、『あの子』がよく口にしていた”落とし物”というのは、やっぱり主人公が忘れていた大切な思い出じゃないかなと思います。

科学館に向かう電車の中での『あの子』の発言にも、それらしいものがありました。

…わたしたちは止まってるだけ

多分ですが、”思い出を辿っている状態では主人公は前に進めていない”みたいなことでしょうか。この”落とし物を見つけたうえでどう決断するか”というのが2つのエンディングになるんだと思います。

夜の車窓にぽつりと呟く少女、ノスタルジーの極み。

また、最序盤の宇宙船が不時着するシーン。あれも実はお誕生日パーティの即興寸劇に由来するものだったんですよね。
あの寸劇のロケットには、主人公と『あの子』が乗っているという設定だったわけなので、妄想というよりは理想といったところでしょうか。

ロケットのアナウンス?は最序盤のシーンと一言一句同じだった(気がする)。

- 主人公が感じる劣等感?

科学館で『あの子』と一緒に宇宙飛行士になる約束をした主人公、結果的に宇宙飛行士にはなれなかったようです。
それが明らかになった直後に訪れるのは、テレビ以外は何もない空間

そして、そのテレビに映るのは知らない宇宙飛行士が月に行くというニュース。主人公はこのニュースを最後まで見ずに、途中でテレビを消してしまいます

さらに、家の中のテレビに対するコメントは…

知らない人が宇宙に行くニュースが流れてる。
この部屋でこの機械だけが、
おかまいなしに話しつづけている。

となっています。
”おかまいなし”という言葉には、”相手の心情や周囲の状況への配慮なし”という意味があると思います。
『あの子』と宇宙飛行士になる約束をしたのに、実際にはなれなかった主人公にとって、知らない誰かが宇宙に行く話は”自分の心情に配慮して流すべきではないもの”なんじゃないでしょうか。
要するに、主人公は宇宙飛行士になれなかったことや、宇宙に行けなかったことに劣等感を持っているんだと思います。

となると、あのテレビ以外は何もない空間は、劣等感以外何も感じていない現在の主人公の心情を表してたりするのかな~と。そう考えるといたたまれない…。

- 『あの子』に対する特別感?

ちょっと話に出てた『あの子』の表記の話です。
『さいしょに会った子』『駅で再会した子』『あの子』というように、端末で表示される、いわゆる”名前”が変わります。
そもそも変わっていくっていう時点で他の人と違う特別感はあるんですが、同一(と思われる)人物で表記が違う人は他にもいます。
ですが、最終的にここまで名前から情報が削ぎ落されたのは『あの子』だけだと思います。基本的には『○○な人』『△△した人』みたいな感じで何かしら情報があるんですけど、『あの子』だけはそれがないんですよね。
これ、”『あの子』だけで誰のことなのか特定できるぐらい、主人公にとって特別な存在”ってことなのかなと解釈しました。

恋愛的な意味で好きって感情は無いと思うんですが、『あの子』も主人公と”一緒に”宇宙飛行士になることを夢見てるわけですから、お互いにとって特別な存在であることは間違いないでしょう。

- エンディング

2つあるエンディング、Steam実績の名前から『このままで大丈夫』エンド『ここには何もない』エンドと呼ぶことにします。
『このままで大丈夫』エンドは、お誕生日に『あの子』からもらった絵を捨てなかった場合に、『ここには何もない』エンドは捨てた場合に到達します。

さて、私はどっちが好きかという話ですが…。正直めっちゃ難しい。

まず『ここには何もない』エンドについて。
”『あの子』からもらった絵を捨てる”という選択が、個人的にはあまり受け入れられないんですが、結末だけ考えると主人公にとっては良いものなのかもなって思います。

………ここには何もない
ここは暗くて、すべてを隠してくれるから
温かいものも冷たいものも
ぜんぶまぜこぜにして包んでくれる
ここは暗くて何もないけれど
……いまはそれが、いちばん心地いい

これ、バッドではないと思うんですよね。むしろ、少なくとも今の主人公にとってはこれがグッドまである。
ただ、おそらく他の登場人物の現在が全く描かれていないからこそ、主人公のこの心情を肯定できるだけで、これがたとえば『あの子』の現在がどうなのかっていうところまで描かれていると、受け取り方が変わってくるんじゃないかなって思います。

続いて『このままで大丈夫』エンドについて。
”『あの子』からもらった絵を捨てない”という選択になるし、そのあと家の中を探索できるチャプターがあるのもこっちのエンディングのみになるので、そういう意味でもこのエンディングは好きです。

もう1つのエンドと違って、主人公の心情は明確に語られない。

ただ、お誕生日パーティのことを思い出したとしても、主人公の中で何かが解決したり前に進んだりしてるわけではないと思うんですよね。
むしろ、ケーキのロウソクの火を消したときに友達のシルエットも一緒に消えてしまう演出から察するに、あの場にいた『あの子』をはじめとした友達との交流は、現在の主人公には無いような気がします。
その寂しさを感じながら眠りにつくという終わり方であることを考えると、『ここには何もない』エンドと比べてほんの少しだけネガティブなイメージを持ちました。

総評すると、若干『ここには何もない』エンドのほうが好き…なのかもしれない。正直、自分の中でもこの結論は出てない気がします。
ただ、どちらのエンディングもエモさを感じたのは紛れもない事実ですね。

さいごに

ということで、伝えたかった魅力や私の考えは上手く言語化できた気がするので、ここらで〆ます。
『Recolit』との出会いは、『ヨカゼナイト』というyokazeさんの映像番組だったと思います。初めて見た当時は「雰囲気良さそうなゲームだ」ぐらいの印象でしたが、実際プレイしてみるとここまで述べてきたような想像や妄想が掻き立てられる素晴らしいゲームでした。
本作のように、プレイヤーに解釈の余地を残しているゲームは、自分の考えを言葉にしたうえで他の人の考えも見てみると、また新しい発見があるので好きですね。また後日、感想記事を漁ってみようと思います。

最後に、制作に携わられた全ての人に感謝です。
エモくてステキなゲームをありがとうございました!

『Recolit』の感想、以上です。最後までお付き合いありがとうございました。

それでは、良ければまた別のゲームの感想で。


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