過去につぶやいた入試問題雑感のまとめ

ツイッターでちょくちょく入試問題を解いて雑感を述べてきたのですが、最近noteにまとめ始めたら過去分も読みたいというご意見をいただきました。遡れたものだけですが、こちらにまとめておきます。過去につぶやいたものなので、最近noteに書いているものとはテイストが違うかもしれません。ご了承ください。

○2019須磨学園

論説文 川合伸幸「怒りを鎮める うまく謝る」
随筆文 南木佳士「亡き父への手紙」
試験時間60分

これは他のプロの意見も聞いてみたい。この問題は良問か悪問か。私はどちらかというと悪問だと思うのですが、人によっては良問と言いそう。選択肢の根拠が希薄というか、正解の選択肢の表現にすきがあるというかでしぼりきれない。30分で嫌になって埋めただけでやめたのでめっちゃまちがえました笑。根拠の希薄なことによる難しさを良問と言う人もいそう。でも、私はよく読めば解けるというタイプの問題ではないと思うので、良問とは思えない。かなり相性があるだろうなと思います。作成者とフィーリングが一緒ならさくさく解けるし、そうでないならだめ。私は後者でした。例えば、大問2の問5ですが、正解に「家族からは疎まれ」とあります。本文中の根拠と思われる部分は、「口をきかない息子と、無愛想な妻」です。「無愛想」は意図的なものか、妻のもともとの性質か判断できないと思ったら、これが正解でした。他の問題も出題者がこれを正解にしたいという意志が強くて、間違いの選択肢を消しきれなかったり、正解の選択肢が甘かったりという印象です、私は。選択肢が多いこともあり、すごく運に左右されそうな問題だなと思います。あと、国語得意な子ほど疑心暗鬼になって得点を落としそう

対策としては、ある程度選択肢では落とすという割りきりをはなから持つことが大切かと思います。その代わり、100字の記述では部分点を取り、難しくない知識題をとりこぼさないことですかね。100字の記述は相違点・共通点を意識して本文中の心情表現を入れるという形のいい練習になる問題です。ただ、記述も学校解答とは別の形の答えも作れそう……ていうか学校解答と私の書いたもの合わせてようやく完璧になるかな……という感じですわ(また間違えたキャリア10年弱です笑)

○2020渋谷幕張

まず話題の物語文の三島ですが、問題自体(特に記述)は簡単です。論説文の方が分量があるので、そこに時間をかけすぎなければむしろ物語文の方が点数稼ぎやすいのでは?という印象。ただ、そもそも子どもがあの文体をすらすら読めるかという問題があるので、読みこなせたかどうかで大きく差がついた可能性はありますね。
知識題は漢字の読みが難しかったです。配当外の出題(戒める)もありましたしね。関東の学校よりも、東大寺とかの対策していた方が正解できそう。5年生以下で志望している方にはとにかく語彙力と言いたいです。

論説文について。問四の比喩の記述は、「絶対権」・「妖怪」の二点を説明する問いです。国語が苦手でも、「絶対権」の説明だけはして部分点を取りましょう。「妖怪」については、比喩の基本に忠実に「空気」との共通点を考え、山本氏の引用部の直後にキーワード「『空気』の正体」があるのに注目。問6は本文全体の複数箇所をまとめる実に関東っぽい良問。具体例とまとめ・問いかけと答え・キーワードを含む定義付けの文(「それが『空気』支配なのです」とか、「『空気』の重要な特徴は~」とか)に注目すれば解答に使う部分は見つかります。字数指定がないので「臨在感的把握」を噛み砕いて説明するかは迷いました。たぶん噛み砕かなくても点数になってそう。①臨在感的把握②相対性の排除③意思決定を拘束の三点が答えに入っていればオーケーなはず。選択肢二問は時間かけてきっちり分析すれば解けますが、あせって解いたらまちがえちゃうなという難易度です。

物語文について。問三は傍線部の近くを使うだけだし、問五は問われているのがどの場面での心情かさえ掴めれば心情表現は本文中のものを使えるので記述はどちらも簡単です。選択肢も問六以外はそんなに難しくないです。本当に読みこなせたかだけの勝負。問六は傍線部後の「姿勢を固くして、二人ともまだ手を握り合ってさえいなかった」に注目できるか。傍線部前の出来事のみで答えを出そうとすると、どの選択肢も一緒に見えて引っ掛かりそうです。

○2020浦和明の星

まず先に断っておきますと、四谷大塚様の解答のうち2問が微妙な気がします。大問一問八ウと大問二問三です。前者は疑い程度、後者は自信ありです。これについて書くと長々となってしまうので、割愛します。

全体について
簡単です。簡単すぎて拍子抜けしたぐらい。川上弘美の七夜物語出してたときとか好きだったんですけどね……そりゃ平均点も上がりますよ。記述が短い一問しか出ていなくて、問題数は多めなので、処理能力さえあれば何とでもなります。平均点見ても完全に算数勝負ですわ

知識題について
ここは前から変わらず、配当外漢字出すの好きですね。どの塾のテキストも、入試に出たことのある配当外漢字はそれなりに抑えているはずなので、習わない漢字だから間違えてもいいやって姿勢はこの学校については当てはまりません。ただ、「抜群」書けなくても75%は取れる難易度です

論説文について
問5までは女子最難関の看板を降ろしてほしいレベル。問6はここ読んだら答え見つかるというタイプでなく、書かれていることを自分の頭の中で落とし込む必要があるので、これ間違えた子は最難関のレベルまでは達していないんじゃないかなというイメージです。問7Yは難問。「あらゆる」と「完全に」を見極めるのが厄介。四谷大塚様とここは答え合ってましたが、正直自信ないですw問八の形式は精読が求められて子どもが苦手としがちですが、配点が高くないと思われるので3/5できればオーケーです。

物語文について
選択肢が長いんですけど、根本からずれているものが多いので簡単でした。記述もリード文に即して書くだけです。本文中の表現をそのまま使うタイプのものではないので、最低限の表現力を求められますが、御三家狙っている女子なら楽勝レベルです。物語は満点結構出たのではないかな。

足ですが、「すべて」・「必ず」など100%言い切っている選択肢はうたがってかかるのがセオリーです。ただ、最難関校はあえてそういった表現を使った選択肢を正解にしてくることがあるので要注意です。まあ、基本的にはその選択肢は切っちゃった方がトータルの収支は合うんですけどね。

○2020桜蔭

まずこれを先に言わせてください。女子校でこの物語文を出すのはほんとに素晴らしい。泣けます。すべての沼のお母さまに読んでほしいです。四谷大塚のHPにあるのでぜひ!!

論説文について
字数指定のない記述三題のうち、問45は基本に問いかけと答え、定義付けの文、筆者の意見を抑えていけばそこまで迷わずに書けます。この二問で取れていない生徒さんは残念な結果だったかと思います。問3が激むずです。本文中のことを前置きとして書いたうえで、本文でまったく示唆されていないことを書かなければいけません。この問題、採点方法が気になります。四谷大塚の解答にこれはなるほどとなったのですが、私は「命の危険を犯さない範囲で登山の本質である自由を味わってほしい」と答えました。この問題設定ならどちらもまちがいにはできないのではないかと思いますが……(たぶん学校側が想定している解答は四谷大塚のものでしょうね)

物語文について
問題はそこまで難しくないですね。論説文では一つ難題がありましたが、物語文の記述三題はここを本気で合格するつもりの生徒さんならすべて部分点は取れるはずです。四谷大塚の解答に一言物申したいのは、問5は主人公の母親が民族の違いで義母からいびられていたことは絶対入れる必要があるでしょうということ。物語文は背景が大事。

総評
最難関校ですが、解答の根拠の探し方はオーソドックスです。論説文は問いかけと答え、定義付けの文、筆者の意見。物語文は出来事と人物関係を中心とした背景。とりあえず読解の基礎ができていなければお話にならない良問ですね。問題に関していうと、これは桜蔭に限らず首都圏入試の特徴ですが、「どういうことですか」と問う抽象表現の説明が多いですね。理由や心情を問うタイプと違い、生徒が問いの意図をわかっていないことが多い問題なので(だから文末が「から」とか「気持ち」になりがち)、まずは慣れる必要があります。今年は200字はありませんでしたが、すべて字数指定なし。やや説明過多ぎみで、文意が通る解答を普段から作るといいですね。たくさん書いて、自分で添削できる女子になりましょう。

○2020海城

まず問題数が多いですね。大問1が問12、大問2が問10まで。試験時間は50分で、文章量が他の学校と比べて少ないわけではないです。だから、ある程度の読むスピードと自信のある、もしくはまったくない問題は吟味せず次に進む決断力は必要ですね。大問1が物語で、大問2が論説文です。逆の学校の方が多いのではないでしょうか?問題は記述をのぞき物語の方が簡単です(ただ、女子同士の人間関係がテーマなので、地獄を見た受験者は一定数いそう)。どちらから解くかも含め、時間の管理は大切だなと感じます。

物語文について
確かに男子には理解しづらい文章だと思います。外見のコンプレックスや、女子同士の力関係など。ただ、今までに似たパターンの文章に触れたことがあれば、あとは人物関係を丁寧に読み込んでいけば記号選択はある程度取れるはず。比喩的な表現が多用されているので、比喩の持つプラス・マイナスのイメージ、文中の具体的状況に置き換えられる力はほしいです。記号選択は問4だけ難しいです。たぶん四谷大塚の解答はまちがい。何もできない、自分より劣っている香奈枝との力関係が変わったのがポイント。アは「だけ」・「しか」がアウト。で、記述なんですが、これが困りましたね……悪問かなあ……解答の根拠がはっきりと示せず、いろいろな答えが考えられそう。四谷大塚の解答(香奈枝と仲良しではいられない)も、傍線部の「取り返しのつかない」には確かに合ってます。ただ、傍線部の前の「もともと白雪姫なんてやりたくなかった」は建前であり、自分の本心を曲げてしまったこと、自分が不当に扱われることを許してしまったことこそが「取り返しのつかないこと」だと思います。(さらに言うと主人公はこれをきっかけに自己肯定感が低くなり、どんどん自分の本心を曲げそう)それで、一番の問題はどちらの答えにしても多少の拡大解釈が必要なんですよね!これに関しては納得のいく答えを誰かに教えてほしいですわ……追記ですが、物語文なのに傍線部やその近くの指示語・接続語が手がかりになっているので、それらを意識した解き方を身に付けられたらいい訓練になりますよ。

論説文について
記述は結論部分を書けてさえいれば、そこまで差はつかないはず。傍線部→具体例→(逆接の後)結論という流れなので、読み方の基本さえ知っていれば見つけられるはず。記号選択は難しいです。残り二つからあと一つ絞るには消去法でいくしかないかなあって感じです。強く断定した言い方(問三ウ)や限定した言い方(問五イ)は消しやすいというテクニックは一年かけて習得したいですね。問7は接続語を利用した良問です。

以上です。物語の記述は微妙なんですが、微妙すぎてみんな取れないと思います。だから、ちゃんと時間管理して確実に取れる記号選択を見極める(逆に言うと取れないor時間のかかる問題を捨てる)ことができたら、国語で致命的なことにはならないかなと思いました。

○2020女子学院

なんていうか、解いた手応えがあんまりないんですよね……他の関東最難関では、解いた達成感を味わえることが多いのですが、JGはそういうのをあまり感じないです。40分という試験時間は確かに短いのですが、洛南ほど殺人的な時間感覚とは思えませんし。確実に言えることがあるとするなら、短い語句を答える出題形式には十分慣れておく必要があるぐらいかなあ。問題作る側としては、自分で考えて短い語句を答えさせるのは別解が出やすいので嫌なんですが、JGはそれを厭わないですね。採点どうしてるんだろう。とんでもなく配点が高くて難しい記述はないので、一定以上のスピードと正確さがあれば7割は誰でも取れそう。しかし、空欄補充の語句問題は思いつかなければそれまでだし、一部消しづらい(消す根拠が薄い)選択肢もあるので、満点もなかなか取れないかなあという印象。一年のスパンで考えると、国語にはあまりリソースを割かずに8割ぐらい取れるようになりたい難易度だと思いました。要はレギュラー講座と過去問だけで仕上げたいって感じです。余った時間は算数へ、ですわ。以上です。

○2020筑波大学付属駒場

随筆文「ゼロとお寿司」伊藤亜紗
物語文「ぼくは朝日」朝倉かすみ
詩「栞」蜂飼耳

最初に断っておこうと思いますが、Y様と一問思いっきり違う答えを書きましたw学校が用意しているであろう解答はY様よりのものです。言い訳すると制限時間40分のものを30分で解いたから…

とにかく比喩比喩&比喩!!大問三つすべてに比喩です。しかも、その比喩の説明を本文中の語句を利用してすることができないです。ただ単に言葉が自分の中に詰まっているだけでなく、それを自由に使いこなせる一段上の語彙力・表現力がないといけませんね。例年通り、設問の文は簡潔すぎて非常に不親切。しかもすべて字数指定なしの記述です。自分で何を問われているかをかみ砕き、解答欄の大きさを見てどの程度の解答を求められているかを推測するスキルが必要です。これは過去問演習で身につくことなので過度に心配する必要はないと思います。上記のスキルがあれば論説文はどれもそこそこできるはず。物語文は人物関係を抑えていれば、問三の比喩の説明以外は簡単。詩が激むずなんで、今言ったところで点数が取れていないと勝負になりません、たぶん…

で、問題の詩です。はっきり言いますが、これは解法のテクニックを知っていれば何とかなるという代物ではありません。言語感覚・発想力・想像力に優れていないと答えを思いつかないです。ていうか、これどの程度書けたのか受験者に聞きたいです。ここからネタバレです。受験予定の方は子供には話さないようにしてください。題名が「栞」で、行がV字型に配置されています。そこから栞が本にはさまっている様子が思い浮かぶかどうかという問題なんですが、思いつかねーよwwあと10分考えたら思いつけていたかは自信がないですね…で、私が答えたこと。詩の中で樫の木が栞にたとえられています。その樫の木の根元に主人公と引っ越した友人は箱を埋めました。詩の最後に「いっしょに掘った穴」・「自分で落ちた」・「しばらく出たくなかった」とあるので、V字型は主人公と友人が掘った穴を連想させ、主人公の沈んだ気持ちを表すものとして解答しました。題名が「栞」なので、Y様の解釈が第一義なのですが、私の解釈も第二義としては成立すると思うのですよね…学校側がどう採点しているか知りたいです。また、心情に関するところでは、Y様の前向き一辺倒の解答は、本文から読み取れる現実逃避という要素や「いつまで憶えていられるのかな」という不安を無視していて、ちょっと紋切り型にすぎないかなと感じました。

ちょっと脱線しますが、灘の国語って救済措置があるなと改めて思いました。比喩や韻文を解釈して表現する力や簡潔にまとめる力など、この両校で求められるものが共通している部分はありますね。でも、灘はあの大量の語句がある。灘に行きたいという強い意志を持って対策してくれば、国語が多少苦手でもいいですよっていうメッセージが感じられます。ていうか合格者の大半はそうだと思うwその点、筑駒の国語は逃げようのない、真の国語力を求められていると感じました。

○2020慶應義塾中等部

THE処理能力でございますね。志望する方には申し訳ないのですが、このタイプの問題は好きになれねえですw女子でJG受けるなら、無理なくどちらもチャレンジできる出題形式です。

知識題はきっちり取りこぼさずという意識はどのテストでもあると思いますが、ここの知識題は少し取りこぼしてもいいぐらいの意識でいいんじゃかいかと思います。まず首都圏では珍しくパズルが出ますし、漢字も「白磁」はちょっときついかな。同意のことわざを答える問題も、ぴったり同意のものが答えになっていないからやりにくいです。登竜門と立身出世を同意で答えさせるのは納得いかねえwそういう微妙なところで考え込んで時間不足になる方が怖いので、とりあえず答えを埋めたら先に行きましょう。

文章題は時間配分さえ気をつければそんなに難しくないですね。脱文挿入は指示語・接続語に注目するというテクニックさえ知っていればできるはず。ただ、随筆の選択問題がかなりふんわり作られているのは要注意。解答ありきで問題が作られている印象で、本文中の根拠を突き詰めようとするとかえってどつぼにはまるかもしれません。正解以外の選択肢は大きく外したら内容にしているので、細かく考えすぎず、素直に選んだ方がいかなあという雑な感想です。

◎最後に

Frikaetterで過去ツイートを探したのですが、消えているのもあったのですよね。過去ツイートを振り返るもっといいツールがあったら教えてもらえたらなと思います。

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