2021 女子御三家 国語の雑感

タイトルの通り、桜蔭・女子学院・雙葉の入試問題を解いた雑感を述べていきます。好きなように書いていくので学校をディスっているような印象を与えることもあるかもしれませんが、私はあくまで国語の問題についてのみ語っているのであり、学校のことやその学校を受験したことを貶める意図は一切ありませんのでご理解くださいー。

◎桜蔭

相変わらず私が大好きなタイプの問題を出題してくれます。字数指定のないボリューミーな記述中心で、簡単な問題は一つもないですが、ちゃんと読めば根拠を持って答えられる問題ばかりです。

例年の桜蔭と比べると、論説文は簡単でした。問二・三は本文の内容をまとめるだけ、問四は具体例の抽象化で、本文の例に使われている言葉を本文中の一般化した言葉に置き換えるだけです。本文の内容を根拠にして書かれていない内容まで記述するという例年なら一問は出るようなレベルのものはなかったので、ほとんどの生徒は論説文でまとまった得点が取れたのではないかと思われます。

一方、物語文はある程度部分点は取れるものの、完璧に書ききろうとしたら難しい問題ばかりでしたね。長めの記述、4問のうち2問は問題文に条件があるのでそれに沿って書くという意識が大切です。字数指定はないのですが、条件に沿うことで出題者がどういう解答を求めているかを察することができますね。

完璧に答えるのが難しいのは、やはり本文に書かれていない心情を解答に入れ込まなければならないところですかね。問五は、大人に言われたことができない、正しくない自分は悪い人間であるという自己嫌悪から解放されたというところまで読み取れますし、問7は自分とペットを重ね合わせ、そしてその上で自分の問題をペットに託すことで自分を客観視するというところまで読み取れます。私は大人だからそこまで書けますが、そもそもそういう概念がない子どもがその答えを作るのは難しいですね。それでも子どもにそういう解答を求めるのが桜蔭という学校なんだと思います。

一番、感嘆したのは問六の表現の意図を答える問題です。「頭のなかでなんどもくりかえしとるうちに、なんや、うち、みるみる元気になってきた」という表現から気持ちの変化を答える問題なんですが、「読点の打ち方に注目して」という条件があるんです。で、傍線前の繰り返している内容をみると、「うちも真紀ちゃんも悪なくて、あかんのは馬や。うちと真紀ちゃんは馬が合わへん。うちと真紀ちゃんは馬が合わへん。うちと真紀ちゃんは馬が合わへん。」なんですね。

これ、傍線部の読点で区切られたパーツと繰り返し部分の文の数が一致していることに気づきなさいってことですよね?特に「なんや、うち、みるみる元気になってきた」が、一つずつ「うちと真紀ちゃんは馬が合わへん」という言葉と対応しているということ。だから答えは「頭のなかでくりかえすたびに苦しみがうすれる」となるわけでしょう。(で、この部分が欠けているためにYの解答はあんまり好きじゃないですw)

いやー、小学生にここまで求めますか?ノーヒントなら捨て問なんですけど、条件を出してヒントを与えるという絶妙なバランス加減。また、読点に注目させるという出題者のセンスに脱帽でした。

総括すると、条件に沿って本文内容をまとめる力・具体的事柄を一般化する力・本文に書かれていない、かつ子どもには理解しがたい心情を書く力・細かい表現の意図に気づく力と国語におけるありとあらゆる能力が求められている問題ですね。この問題を前にすると安易に対策を書くことはむしろ薄っぺらいのではないかと感じました。これをやったら受かるって問題じゃないです。全部やったら受かります。

◎女子学院

簡単でしたね。昨年はちょっと変だな?という問題があって迷うところもありましたが、今年は素直な問題ばかりでした。記述以外はノーミスだったという受験生もたくさんいたのではないかと思われます。昨年も書いたことですが、この難易度なら昨年以上に国語で差はつかず、他教科特に算数勝負という結果になったのではないでしょうか。来年の受験生も国語の勉強にはあまり時間を割かずに、これぐらいの問題では得点を取れるようにしたいですね。

記述は字数が短く、簡潔に答えさせるものばかり出る印象でしたが、今年は字数指定がなく解答欄が三行のものが一問出ましたね。ただ、内容がそんなに難しいものでもなく、JG受ける女子ならいきなり出ても特に戸惑うことはないと思います。

記述の量は増えましたが難問というほどのものは出なかったので、例年通りスピードと正確性の勝負でしたね。読むスピードに関しては、いきなり速読しようとするとそもそも正確に読み取れない子がほとんどなので、6年の前半期は正確性を重視して無理に早く読まず、後半期に過去問をやりながらアジャストするといいと思います。記述に関しては、書いたあとに不要な表現はどこか見直す習慣があるといいと思います。無駄な表現が多い冗長な解答を作るくせがあると、JGの40分という試験時間に対応できないですね。

◎雙葉

昨年解いたときはとりとめのない問題だなあって印象だったのですが、今年はコンセプトがはっきりしてましたね。とにかく記述、それも要約力ではなく、表現力重視ですね。ここで言う要約力とは文章構造を捉えて要点を見つけ出し、正しい日本語でまとめる力で、表現力とは本文に書かれていない、自分で考えた言葉で解答を作る力です。桜蔭はどちらも必要とされますが、100字の自由記述や比喩の説明を連発した雙葉は表現力偏重の入試です。

JGと重なるのは、記述以外の問題の難易度が低いこと。雙葉も記述以外はノーミスの受験生はそこそこいると思われます。

短い記述の空欄補充や記号選択で和語の意味もあるので、高い語彙力は必須です。そして高い語彙力は前述の表現力に直結します。内容がなんとなくわかっても、それを表す言葉が自分の中になければ答えられませんからね。語彙力を強化し、「~はどういうことですか・何ですか」という抽象表現を説明する問題をどんどん解いていきましょう。JGほど圧倒的なスピード感は求められないので、多少冗長になっても構わないので自分の言葉を使って書くことにこだわってください。

◎まとめ

基本的に三校とも例年通りと言っていい問題でしたね。桜蔭は国語に関するありとあらゆる能力を求められる重厚な問題、JGは圧倒的なスピード感と正確性を求められる問題、雙葉は自分なりの言葉で書く表現力重視の問題といったところでしょうか。入試における国語のウェイトは桜蔭>雙葉>JGだと思います。



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