関西中受・6校の国語を解いてみての雑感

関西もやってほしいとのご意見をいただきましたので、学校HPに問題が掲載されているところをやってみました。学校が解答を出していないところもあるので悪しからずです。本当は1年分ずつデータで売ってくれるといいんですけどね……

四天王寺・高槻・西大和という女子軸、西大和・星光という大阪奈良男子軸、白陵・須磨学園の西の共学軸、番外編の西大和県外という観点で読んでいただければと思います。ではいってみましょう。

○2020四天王寺

ほんとにしょうもない。一年間最難関校を目指してきた女子をバカにするかのような薄っぺらい問題。読むスピードさえついていれば5年生でも合格平均は取れる難易度です。平均はそんなに高くないのですが、点数の下げ方が三題構成による文章量や傍線から答えの遠いぬき出し、本質からずれたひっかけなどほんとにしょうもないんですよ…例えば大問3の問6の選択肢ですが、エの「ありふれたことがいとおしくなる」という内容が抽象的に筆者の言いたいことをまとめているのに、設問に「筆者の場合」とあるので「四季の移ろいがわかる」という具体例そのまんまが答えになっているんです。本質はそれじゃないでしょうが!!といったうんぬんありつつも学校解答を見たら、ぬき出しの答えが指示語で始まっていて、私のメンタルは完全に崩壊しました。美しくなさすぎる……

記述も問題数は出るのですが、なぜそれをわざわざ記述にして出題するのかの意図がわからない短い記述ばかり。唯一長めの物語の50字の記述も本文に書いてあることをそのまま書くだけ。書かれていない心情とか背景とか全然いらない。そもそも物語文がおっさんのしみったれた教訓じみた話で、こんなん女子校で何がおもしろいんだっていう。説明文も本文全体をまとめるような問題はないです。首都圏女子が解いたら、この学校なめてんのかとたぶん思いますよ。

対策なんですが、読むスピードをつけて、答えが見つからないぬき出しを後回しにすることさえできれば十分です。それぐらいもうできている女子にとってここは西大和・洛南の前哨戦でしかないでしょうし、そうでない子も国語の勉強はある程度で切り上げて、苦手な理数系にその分注力していい難易度です。

そりゃこんな問題出してたら、優秀な女子は初日午前に高槻受けるよなというのが正直な感想です。ていうか医志で受かるような女子なら、こんな問題を作る国語の教員のことはすぐに見下すんじゃないのと思ってしまいますね。

○2020高槻

共学になって4年目の入試ですかね。まだまだ過渡期という印象はあります。男子校時代より、記号選択・ぬき出しが増加してバランスの良い共学っぽい問題になったと感じています。ただ、これはきついなという問題は一問くらいしかなく、バランス調整には気をつかっているのだろうなと。男子校時代のように60字をこえるような重い記述を出してもいいと思うのですが、そうするとただでさえ6割ちょっとの男子の合格平均がさらに下がってしまいますしね。男子の受験者にとっては適切な難易度、記述の問題数が多めなのである程度の処理能力は必要という問題です。女子の受験者にとっては易しめ、取りこぼしが命取りになる難易度だと思います。男子の受験者のレベルが上がってくるようであればもうちょっと問題を難しくしたいのでしょうけど、A日程は競合する男子校が多すぎますし、女子も洛南・西大和の併願になるということが価値を高めているのを学校は理解しているでしょう。だから、このぎりぎりのバランスの難易度を続けていくのではないでしょうかと予測します。

問題自体はいたって普通の良問。ちゃんと読めばちゃんと取れる、安心して解ける問題です。国語の入試問題だけで判断するなら、四天なんか受けるより高槻受けた方がはるかにいいです。逆にノーマルな良問過ぎて対策は思いつかないパターンです。強いて言うなら、記述は短めのものが多く、文脈に沿ってきっちり説明し切ろうとすると字数オーバーになってしまうなと思いました。50字の物語の記述は背景も含めきっちり書かなければいけませんが、説明文の記述は前置きをあえて削って答えの中心部分を充実させなければいけませんね。

乱文整序を出しているのは、やっぱり西大和を受ける女子を意識しているのかなあ…笑。あと、NのR4の男子の58は高すぎない?私が現役だった2年前はもうちょっと低いゾーンから通っている印象があります。女子は妥当です。

○2020西大和(本校)

さすがにここまで解いてきた二校よりは難しいですね。ただ、難しさの質が問題数であったり、くせのある知識題というところに関西っぽさを感じます。でも、同じ系統の洛南と比べるとずいぶんちゃんと国語をやっているとという気になりますね(隙あらばディスる)。内容に関して言うと、論説文は四天・高槻より難しめ、ただ物語文と設問自体は前の2校と比べても大差ありません。きちんと読んでいれば解ける問題ばかりです。ちょっとくせのある知識題が出ると、その対策をしましょうという流れになりがちですが、ここはむしろ変な知識題はさらっと流して文章題に注力した方が得点になりそうです。逆に季語や慣用句のくせのあるもの以外の知識題は割と簡単なのでここで取りこぼすのはNGです。毎年、出題される乱文整序は指示語・接続語・パラグラフごとのキーワードという攻略法を知っていればできるはずなので、十分訓練しておきましょう。

さあここからディスります。問題としてはいいんだけど、記述の学校解答酷くない?論説文の俳句の効果を説明する問題ですが、本文では「自然・季節感を知る→自然から情感を得る」・「時間の流れが違って感じられる→現代の時間感覚で生きることによって生まれるひずみを癒す」という4つの要素が挙げられているのですが、筆者のもっとも言いたいことである現代社会で生きることに対するヒーリングという要素が答えにない…また、物語文の問6「おばあちゃんはたくましい」とはどういうことですかという問題ですが、何回問題文を読んでも傍線部の抽象表現を説明する問題なんです。だから「呆けているはずなのに体は健康で心も活動的」みたいな答えを書いたら、学校解答は「おばあちゃんのことを主人公は頼もしく思っている」なんですよ…拡大解釈が過ぎます…この答えを導き出したいなら、「この表現から主人公のどのような心情がわかりますか」でしょうが!!記号選択がきっちり作られているだけに記述の残念っぷりが目立ちます。いろんなところで試験ができるようにいろいろ問題を作る前に、まずは一つきちんとしたものを作ったらどうですか?と言いたくなります。まあこの広く浅く生徒を求める姿勢が西大和の西大和たる所以だと個人的には考えています。

○2020大阪星光

星光→西大和って受けていく生徒が多いですが、この2校って傾向全然違いますよね。西大和は問題数が多くて作業感が強いのですが、星光は記述がとんでもなく苦手でなければ時間が余ると思います。問題数が少なくて、ぬき出しもなく、記号選択は簡単だから。国語だけ見たら、西大和と星光片方しか受からないっていう現象は簡単に説明できそうな気がします。処理能力と記述力、どちらに偏っているかということですね。西大和は問題数が多いので、必然的に一問当たりの得点は小さくなると思うのです。だから、記述が書けなかったとしても、処理能力でごり押ししていけばある程度の得点が集まると思うのです。一方、星光は問題数が少なくて記述の字数が長いので、記述の配点は大きいと予想されます。さらに、物語の問6(表現の特徴の問題。駒東もそうだけど、この手の問題は根拠が薄いから出題するのやめてほしい…)以外の記号選択は簡単なので、ほとんど落とさないでしょう。必然的に記述勝負になってしまうのです。

学校解答や塾・出版社が出している解答を見ていないので不確かですが、記述は極めて妥当な難易度。短めの一問を除き、本文中の表現を中心にまとめていく問題です。首都圏の子は慣れっこだと思いますが、関西の子は論説文の問6のような抽象表現を具体化する問題はあまり慣れていないだろうから、ある程度の訓練が必要です。特にずっと上位クラスにいるのではなく、これから上がっていく子はそうかな。やったことがないと傍線部をわかりやすくしなさいという設問の意図すら知らないかもしれないので。物語文の記述は、字数が長いですけど背景・出来事・傍線直前の表現とまとめていけば3/4は得点できると思います。くせのない問題です。関西の男子最難関では際立ってくせのない問題ですよね。入ってくる子も比較的癖がないのか聞いてみたいところです。

ただの偶然ですが、今年は西大和でも星光でも俳句が出ましたね。灘でも出る穴埋めですが、私はあれ嫌いです。韻文出すなら神女や筑駒のようにがっつり記述で出せやと思います。それでこそ細かい表現を味わえる情緒があるか、それをふくらませて書きこめる本当の表現力があるか試されるというものです。ただの穴埋めは作業感あふれる運ゲーって感じで、わざわざそれでふるいにかける意図がよくわからないです。

○2020西大和(東京・東海・岡山入試)

おまけとして解いてみました。本校とはちがいオーソドックス型で、対策をしてきたかよりも地力の有無が問われます。粒ぞろいの問題が出題され、記述もかなり長めのものまで書く必要があり、個人的には渋渋と似たタイプという印象を持っています。札幌・広島・福岡入試だとまた問題のタイプが違うんですよね。確か一題ぐらい100字を超えるようなかなり重たい記述を出していたはず。東京では、西大和に向けた対策をしていない優秀児を獲得したいからオーソドックス型を出すのは分かるのですが、札幌・広島・福岡でなぜああいう問題を出すのかは謎。本校よりも合格のラインはかなり上ですね。過去に西大和県外がだめで灘に合格した子がいたような気がします。女子で県外に合格する子は日本最強クラスの実力の持ち主です笑

で、本校に引き続いてなんですが、記述の学校解答が気に食わないですねえ。論説文の問7、現代の風潮に流される人はどのような状態かという問題ですが、はっきりここが使えるという部分がなく、本文に書かれている内容を裏返して書きなさいという問題なんです。逆に言うと、条件が緩くて裏返してさえいればどんな答えもあてはまりそうなんですよね…なんか出題者が書かせたい模範解答ありきで緻密さに欠けるなあと。さらに随筆文の問8なんですが、学校解答は友人の女の子を好きなことが男友達にばれるのが恥ずかしいぐらいしか考えてないんだろうなあと思って答えを書いたら、まさにその通りでした。でも、「ぬすみの現行をおさえられたように」・「心についていたものがのぞかれたように感じて」という表現から、好きな女の子が埋めた花に心惹かれ、それを見つけ出すのに執着していたことを無意識に後ろめたく思っていたという解釈もできると思うのです。ていうか、西大和を県外入試で合格できるような子ならそれぐらい深く読み込める子もいると思うのです。果たして学校がそういう答えを想定しているか。想定していなかったとして、許容する懐の広さがあるか。ぼくはここが西大和の限界なんじゃないかなってにらんでいます(根拠はなし)。

○2020白陵

お恥ずかしながら初めて解いたのですが、すごくいい問題です。とりあえずセンスだけでやってきた子供を排除する内容になっています。まず20点分知識題を出すことで、地道な積み重ねをしてきたか見てきます。文章題は試験時間が70分だけあって文章量も記述量もかなりあります。ただ、一問一問はとんでもなく難しいわけではないんです。論説文の対比の記述だけは自分なりの表現を中心に書かなければいけませんが、他は本文の表現を中心に答えを作れます。r4で56という偏差値に適切かやや難しいぐらいの難易度。それが字数指定がなしで8問ほど出ていますから、センスだけで記号選択とぬき出しをあてて、数少ない記述をさらっとそこそこまとめられる子よりも、一問一問向き合って粘り強く綿密な解答を作り上げようとする子が向いています。前に武蔵を解いた時と似たような印象を持ちましたね。武蔵や鷗友、なんなら桜蔭受ける子にもおすすめできる問題かもしれません。

物語文なんですけど、私は人物関係の機微や劣等感など心の中の後ろ暗い部分も理解できるような情緒を持った生徒か確かめる問題が好きです。関西の学校ってそういうところがちょっと物足りなく感じるのですが(今回なら四天は論外w星光と高槻はOK)、そういう観点で見ても白陵はいい問題でした。そういう問題を出すところは勝手に校風も居心地のよいものなんだろうと思ってしまいますね。

○2020須磨学園

学校解答がないのでふわっとした感想になりますが、まず時間配分が妙です。120字の記述があるとはいえ、文章が短すぎます。問題数もそこまで多くないですし、試験時間は60分ですが50分でもおつりがくるような構成ですね。120字の記述も解答に使える直接的な表現がなさそうで一見難しく感じられますが、できごと+背景+問6の記号選択の解答をもう一度利用でさらっと書けました。他の問題がヒントになるという学校はそこそこあるとは思いますけど、ここまであからさまで答えの中心一緒じゃね?っていうのはなかなかないですね(学校解答が発表されていないので、もしかしたら私の想定とはまったく違うのかもしれませんが…)。

19年を解いて雑感を述べたときにも感じたことなんですが、数問記号選択で根拠がはっきりしない問題があります。正直、出題者が答えさせたいことありきで、他の選択肢が消しきれないです。文章・問題のボリュームの割に平均点が高くないですが、それは悪問が混ざっているがゆえの低さだと思います。あとは表現の意図や会話文の空欄補充など、塾の模試として出題したらチェッカーにこの問題を出す意図は何ですかと問い詰められそうなものもいくつかありました。ただ、全部が全部悪いわけではなく、中には練られた良問もあります。分量のことも含め、解いている人間を変に惑わすところがあるなと感じてしまいます。悪問はしかたなしという割り切りが必要な学校ですね。

◎最後に

以上で終了となります。少しでもみなさまのお力になれたでしょうか?ちょっと学校数が少ないことが物足りないですよね。

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灘はいいでしょ……どっかの塾の説明会でたくさん聞けると思うのです。

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