2021 豊島岡・フェリス・渋谷学園渋谷 国語の雑感

現在、四谷大塚様のHPで問題を入手できる学校を中心に2021の国語の入試問題を解いていっています。今回は御三家以外の女子が受ける学校です。

◎豊島岡

豊島って国語はあえて難しくしていない、凝った作りにしていないというイメージで、それは今年も変わりません。ただ、自分が想定していたよりもちょっと解きにくかったです。その解きにくさの原因は、ふわっとした選択肢の作りにあります。辞書的な解答ではない語句の意味の問題(大問1問2)、具体的行動まで書いていない△の選択肢とそれが書いてある○の選択肢がある問題(大問1問7)、どの選択肢もピンとこない表現の効果についての問題(大問1問6)などがあって、微妙に惑わされてしまうんですよね。でも、本質的に難しいわけではないのでまあいけるでしょうと思ったら、合格者平均が72で算数と同じ程度で驚きました。75は越えると思ったんですけど、漢字も含め知識が去年より難しかったからかな。

繰り返しますが、女子上位校の中で豊島はくせがまったくない方です。あまり凝った作りでもないので難易度も非常に良心的です。国語が得意な女子で上位校志望なら、6年の夏期前ぐらいで6~7割の点数をまとられるようになっていてほしい難易度です。逆に言うと豊島の問題は試金石です。ここの国語に苦戦するようであれば、他の女子上位校の国語にも苦戦すると思ってください。

ちょっと脱線しますが、学校別の冠講座信仰っていうのが保護者の間にあると思っているのですが、国語って冠講座があった方がいい学校となくていい学校があります。要はくせのある問題かどうかということ。桜蔭や雙葉はあった方がいいけど、JGは家庭で時間配分さえ気をつけて取り組んでいれば冠講座の必要性は高くないと思っています。鷗友なんかは講座でわざわざやるかはともかく、記述特化の専用テキストはほしいなと思いますね。で、豊島は冠講座は正直まったくいらないですね。塾の平常のテキストをやっていれば自然と対応できる、知識・記号選択・抜き出し・60字ぐらいまでの記述がバランスよく出されたオーソドックスな問題です。こういう問題を指して、志望校別対策が効いたとか過去問をやりこんだから合格できたなんて言うのはナンセンスだと個人的には思います。

繰り返しになりますが、オーソドックスな作りだからこそ、上位女子校志望者は実際に受験しなくても豊島の問題を解くことはリトマス紙になると思いますよー。

◎フェリス

豊島と対照的にクセだらけなのがフェリス。後述しますが、塾講師が作ったような問題を出すのが渋渋に対して、いかにも学校の先生が作った問題なのがフェリスです。

まず物語文と論説文で問題のバランスが悪い。物語文は記号選択中心で小問数が多いのに、論説文は記述ばかりで小問数が少ない。はっきり言ってアンバランスで美しくない笑。次に記述の出題ですが、毎年恒例の150~200字程度の自由記述の他に、今年は本文の指定箇所の要約が60字で出題されました。自由記述と要約って、要は解答者に丸投げの問題ですよね笑。入試問題にそっくりの問題を作るときは別ですが、基本的に塾講師はこういう問題を作りません。なぜなら採点が面倒だから笑。これらの面で、学校の思想というものが色濃く出ているのがフェリスの国語ですね。

つまりちゃんと対策してきてねってことです。豊島の国語は対策してこないでいいよ(2/1に受ける学校の対策していいよ)、でも算数できなきゃ合格厳しいからねという意図が見え隠れしますが、フェリスの場合は第一志望としてちゃんと対策してきてくださいねというメッセージを感じました。

じゃあその対策は何かというと、丸投げされてもちゃんと自分で論旨が明確な文章を書ける力をつけることですね。テーマが何で(主語を明確にしてと言ってもいいかな)、最終的な結論は何かがはっきりと伝わる文章を書けるようにしましょう。自由記述はテーマが問いで与えられますが、要約はテーマを自分で読み取らなければならない(主語を自分で決定しなければならない)のでいきなり出てきて戸惑った受験者もいたと思います。自由記述の対策は6年後期からで十分間に合います。ただ、要約が来年は出題されなかったとしても普段の宿題から要約のトレーニングはしてもいいかもしれません。要約は所詮、キーワードを主語にして、要点を繋げ、最後に要旨(筆者の意見)を持ってくることなので、そもそも説明的文章の読解のトレーニングにもなります。また字数にとらわれず論旨が明確な文章を書き慣れておけば、後々自由記述の訓練にも間違いなく役立ちますね。

あと、渋幕ほどではありませんが、舞台設定が昔の物語を出したがるのでそこは注意しておきましょう。もし余裕があったら、現代が舞台でない物語を空いた時間に読ませておくといいですね。

◎渋谷学園渋谷

いやー、難しかったですね。渋渋は豊島よりの問題で、オーソドックス型で特別な対策でどうにかするタイプではないと思っています。ただ、オーソドックス型で単純に難易度が高いです。難しいのは記述よりも圧倒的に記号選択ですね。毎年の特徴ですが、一つ一つの選択肢が長い。学校が作る記号選択問題って、正解にしたい選択肢がある一方、ダミーの作りが甘くて消去法では消しきれず、出題者が正解にしたいのはこっちだろうなと思ってえいやと選ばなければいけないことがあります(豊島はまさにそんな感じです)。しかし、渋渋の問題はそういう要素がほぼないです。長い選択肢をパーツごとに分けていったときに、どこかに明確に間違いと言える要素を含ませています。そういう意味では曖昧な作りをしてしまうと保護者からクレームが来てしまう塾の作問に似ているという印象がありました。

具体的な例をあげると、大問1の問8は非常によく作られています。主人公は鳩レースの是非を悩んでいたという前提+きっかけのできごと+感動という三要素が解答になっています。傍線直前のできごとは、鳩が大地を横断し、海を渡っていくことを想像したこと。正答のイは「大自然の中をひたむきに羽ばたいてゆく彼らの姿を想像して」、ダミーのオは「大地を横切り大海原を渡っていく鳩たちの美しくたくましい姿に目を奪われ」となっています。前提となる悩みの内容と感動という心情はどちらの選択肢もいっしょ、つまり「想像」という一点でしか答えを決定できないのです。こういった細かい分析が必要とされるのが渋渋の記号選択です。普段なんとなく答えを選んで、赤ペンで正答を書いて直しをしたつもりになっている子では解けませんね。なぜ正解か、なぜまちがいかを普段から綿密に分析する必要があります。

ちょっと前述の内容とは矛盾しますが、オーソドックスとはいえ単純に難易度が高いので、一つ一つの選択肢が長い記号選択が多めに集められている渋渋対策に近いテキストは欲しいかなーと思いました。

ちなみに渋幕と比較すると、渋幕の方が文章自体は古典が出て難しいですが記号選択の作りは簡単です。渋渋は文章自体は読みやすいですが、記号選択は渋幕よりずっと難しいです。記述は渋渋が心情の変化や対比の説明で答えのパターンが決まっていて、本文の表現を中心にする書きやすいものだったのに対して、渋幕の方は抽象表現の説明で書きづらいものが出ていました。合う合わないはあるかもしれませんが、トータルの難易度はそんなに変わらないと思っています。


以上になります。またツイッターでアンケートをとって、次に取り上げるものを決めようと思います。ぜひやってほしいものを教えてくださいー。


なんと下にサポートボタンなんてあるらしいですよ……


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