関西中受・6校の国語を解いてみての雑感2021

関西の学校で、HPに入試問題を掲載してくれているところの国語を解いてみました。関西は問題を公開している学校は非常に少ないので、6校とも昨年ども解いたところなので、昨年との印象の違いという話もできるかもしれません。ちなみに灘は筑駒と並べて以前記事を書いていますので、そちらをご参照ください。

◎星光学院

灘には届かない御堂筋沿線の男子が猫も杓子も目指す印象のある学校。問題の印象は、東の駒東、西の星光という感じで、どちらも全体的にかっちりとした作りで、記述に関しては量はあるものの解答の幅は狭くて書きやすいものが出ると思っていました。今年もその印象が大きく変わるまではいきませんでしたが、少々驚きもありましたね。

とりあえず物語の記述二問以外は、男子の最難関校としては簡単です。知識題は関西男子最難関では屈指の平易さだと思われますし、記号選択も一つ一つがそこまで長くもなく、小難しい言葉が使われているのでもなく、まあ普通に解けるでしょと感じました。論説文の記述は、40字の方は段落先頭に「また」があることに気づいて要点を2ヶ所まとめなさいというもの、90字の方は最終段落の筆者の意見をまとめなさいというもの、どちらも本文に書かれていないことをひねり出すような思考の切れは問われず、ちゃんと読んでいれば解けるレベルですね。ここまでの問題で点数をまとめられていれば、国語で大怪我することはないでしょう。

で、物語の記述です。これがあんまり星光っぽく感じなかったですね。基本、大問一つにつき4~50字と100字の記述が出て、短い方は本文の表現を中心にまとめられて、100字の方は心情の変化というイメージでしたが、今年は違いました。まず、短い方の抽象表現の説明の解答の幅がとても広いです。「(弟は)いつもこれだ」を具体的に言い換えるのですが、直前のセリフを受けて「言い訳をする」とも答えられるし、「甘える」という表現もできるし、「無気力だ」という言い回しもできる。そしてそのすべてが本文にはないです。本文に書かれていない心情表現を答えることはこのレベルの学校では当たり前ですけど、本文にない表現で簡潔に言い換えるという麻布チックな表現力を星光で求められるということが珍しかったですね。110字の長い方は(なぜこの指定字数なのかは謎w)、兄弟二人が同時に笑いだした理由を答える問題。二人の関係性の変化が鍵なので、例年通り変化の説明でゴリ押しすることも可能です。まあそれができれば半分はまちがいなく取れるでしょう。学校解答は公表されないので推測ですが、笑い出した理由、つまり何が面白かったのかの説明が残りの半分でしょう。たぶん、大抵の過去問をやり込んできた男子は、変化の説明でゴリ押しでしょうね。満点取れた子はほとんどいないと思いますし、半分取れていれば十分なのは確かです。これをどう解釈するかはみなさま次第。過去問やり込んでいるから最低限取れたと見るか、対応力が足りないのではと見るか。まあこれからの受験生で国語で稼ぎたい子は、この物語の記述2問をどれくらい仕上げられるかが試金石になるでしょう。

◎西大和学園

すみませんが、一回目のスーパーディスりタイムに入ります。

解答が酷い。毎年、記述の解答を見ては解答に首をかしげるのですが、今年は近年で一番よくない。大問1の問8「脳みそのパンとなる学問」とはどのような学問かを答えるものですが、本文には「生物学という~『脳みそのパンとなる学問』」と書かれています。つまり、「生物学」=「脳みそのパンとなる学問」なのです(イコールは言い過ぎでも、「生物学」が「脳みそのパンとなる学問」に含まれるのはまちがいなし)。で、問題の学校解答は「専門分野だけを学んでも得られない~学問のこと。」なんです。まず、筆者は生物学が専門なんじゃないの?というツッコミ。そして本文にある「生物学だけを勉強していたらこういう発想はできない。私はいろんな分野の学問を勉強するうちに、この結論にたどり着いた」という表現で思いっきり矛盾していませんか…他にも物語文の問7で、傍線部の直前に「どうすればいいのかは思いつかないけど」とあるのに、正答の選択肢は「行動した結果をあれこれ考えて」とあるんですよね。結果以前の問題でしょう。

生徒を集めるのに熱心な学校ですし、設備は充実しています。入った後にあまりよくない学校だと感じたという評判はあまり聞きません。私が書いていることはあくまで国語の入試問題から感じたことのみです。ただ、今年の入試問題には形式的なミスの訂正が8ヶ所出されていました。対外的なことに力を入れるあまり、基本的なことがおろそかになっていませんかねと思わざるをえないです。

◎高槻

毎年安定した問題、そして自らの立ち位置をわかっている問題を出すという印象のある学校です。適切な難易度なんですが、論説文は生きることについて考える学問が哲学から生物学、情報学へ変わってきたことについての結構硬めの文章、もう一つの文章は物語ではなくちょっと古めの随筆が出題されていました。論説文は抽象表現の言い換えの問題が多め、記述は全部で5題で最長で70字。過去の入試ときっちり見比べたわけでないのでただの印象論ですが、じりじりと難易度を上げてきている印象がありますね。

記述は本文中の表現を中心に書けますし、難しめのものには指定語句がついていました。記号選択も問題自体は難解というわけではないです。でも、文章自体が難しいので、ここがボーダーラインの男子はかなり苦戦したのではないかと思われます。合格最低点とかは見つけられなかったのですが、男女の合格者数の比率を見ると、3:2まできているんですね。少しずつ問題自体の難易度が上がっている気がするのと、この男女の比率に学校のいい意味での野心を感じました。四天の受験者層を食って、洛南・西大和とは違う、本当の意味での関西唯一の共学最難関になろうとしていそうですね。ただ、関西は男子校のブランド力がかなり高いと思いますし、そもそもの子供の数が首都圏とは違うので、渋渋・渋幕みたいに男子校トップと遜色ないほどの難易度には将来的にもならないんじゃないかなあとなんとなく感じています。

◎四天王寺

すみませんが、二回目のスーパーディスりタイムに入ります。

まあ例年通りしょうもない問題です。ツイッターにも書きましたが、5年の難易度の問題を6年仕様の分量にしているだけ。一番いらいらしたのは問題の条件がゆるくて、2,3問別解が出ることですね。それも重箱の隅をつつくような別解でなくて、一回読んで解けば答えが2,3個思いつくレベルの別解です。問題のチェックとかしないんですかね…

正直、わざわざ女子の最難関校の入試で出題する必要があるかわからない問題もいくつも出ているんですよね。国語の問題を解く限り魅力は全然感じないです。そもそも塾の四天コースってほんとに四天の対策しているんですかね。対策する必要性があまりないので、清風南海とかの対策ばっかりやっているかもしれません笑

書くことなさすぎて以上です笑

◎須磨学園

ここは毎年なかなかに重厚な問題を出すなあという印象です。選択肢は3行にわたるような長いものが複数出題されますし、毎年120字ぐらいの記述も出ます。論説文の記号選択はどれもなかなか骨がある問題でした。ただ、昨年・一昨年はふわっとした作りの選択問題で困るなあと思ったのですが、今年はそう感じることはなかったので解けない問題という印象はないです。

ここの入試の最大の特徴は文章の短さですね。文章2つともB4一枚で収まってしまうんです。私が解いたら30分で終わって、試験時間の丸々半分余りました。関西の国語って基本処理能力に偏っているのですが(灘・洛南・西大和・四天・六甲で文章3題ですからね。首都圏で文章3題出すところなんてあまり見ないのに)、須磨は処理能力はまったくいらないですね。その代わり、有り余る時間を使って長い選択肢を丁寧に分析できる力、記述を緻密に書き込んでいく力が必要です。ただ、スピード感を持って要領よく解いていく能力よりはつけやすい力だと思います。特別なことはせず、普段から丁寧にじっくり解くことを心がければいいだけですから。ただ、他の受験校とはベクトルがちょっと違うことは注意ですかね。受ける上での意識の持ち方を変えなければいけません。

◎白陵

ツイッターにも書きましたが、関西チックな語句パズルを含む知識題と首都圏チックな字数制限無しで余すことなく詳細に説明したり、解答の幅が広かったりする記述が共存している問題です。首都圏の上位校を目指している方に、夏前の時点で腕試しにどこか入試問題を解いてみたいと言われたら、私は白陵の最初の知識題の大問を除いて残りを60分で解くことをおすすめしますね。

記号選択もそれなりの数が出ていますが、大して難しくもなく、ここで差がつくことはないでしょう。記述でほぼすべて決まりますね。物語の記述は直前の出来事だけでなく背景まできっちり抑えていないといけないものが2つ、抽象的な表現を自分なりの表現で説明しないといけないのが2つで特に後者はなかなかの難易度です。みっちり本文の表現を使って説明する論説文の記述の方が取りやすいです。論説文の記述が書けなかったら勝負にならない可能性もあるかなあ。

物語文の問7の記述は今回解いた中で一番好きな問題です(問8の情景描写の説明はあまりに解答の幅が広くて好きじゃないw)。「ポロポロとあふれ出してきた滴はお母さんのシャツの胸の部分に吸いこまれるように染みこんでいく」という表現を説明する問いで、「滴」(涙)=寂しい気持ちが「お母さんの」・「胸の部分に吸いこまれる」=お母さんに伝わるということを答えます。これぞ文学的文章という、心情を象徴するものを説明する問いでした。いい訓練になる問題なので、ここを受けない人にも解いてほしい問題でした。

ちなみに物語の出典が元SKEの松井玲奈さんの書いた「家族写真」で驚いたとツイートしたら、ドルオタらしき人に引用RTされてウケました。モモコグミカンパニーの書いた文章がもし入試に出たらぼくも大騒ぎすると思うんで、気持ちはわかります笑。あと、大問1で出た干支についての記述の問題が普通に解けなかったので、お母さん方なら、そしてプロのみなさんなら当たり前に解けるのかやってみてほしいですー。


今回、以上になります。感想とかお聞かせいただけるとうれしいです。コピー代がそこそこかかっているんで、下からチャリンとサポートいただけるとうれしいです。

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