北嶺と海陽の国語を解いた雑感と「前受け」について

質問箱でリクエストいただいていた2校の21年度入試を解いてみました。首都圏の女子校のリクエストもいただいていたのですが、こちらの方が試験日が近いのでご容赦ください。しかし、2校だけでnoteを書くのも分量的に寂しいので、最後に前受けについての私見をつらつら書いてみようと思います。ただ、「前受け」って言葉だけで言葉狩りにあわないかちょっとびくびくもしています笑

◎北嶺

国語ってふわっとした問題とかちっとした問題があると私は思っています。海城とか雙葉が前者で、駒東とか桜蔭が後者です。ふわっとした問題は根拠がふわふわとしていて解説が書きづらかったり、出題の意図が分かりづらかったりで、私個人はふわっとした問題は好きじゃないです。で、久しぶりに北嶺を解きましたが相も変わらずふわふわな問題ですね笑。文章三題構成のうちの物語文の記述が、本文の表現を使って外堀を埋めてさあ心情表現を考えてねというタイプでなく(私の言うかちっとした問題はこういうタイプ)、本文にこう書いてあるよね、じゃあこんな感じと想像できるじゃん、だからまあ本文にはっきり書かれていないけどいい感じにまとめてちょみたいなノリで作られている問題ですね。また、随筆で心情の変化を答えさせる問題があるのですが、ちょっと奇妙な条件で変化後の心情が解答用紙にすでに書いているんですね。変化前の心情ときっかけとなる出来事までを答えるのですが、わざわざこの形にする意図ってある??って感じてしまいました笑。こういうふわっとした問題って塾のテキストにはあんまりないような気がするので(すみません、自分がいたとこ以外はよくわかんないです)、ふわっとした問題こそ過去問で慣れる必要はあるかなと思います。文章三題で時間配分も特殊ですしね。

久しぶりに解いたので近年の傾向をちゃんと見たわけではないですが、文章三題で一つ一つは短め、物語は主人公が受験生と同年代で現代が舞台というよく出るタイプではなく、小学6年生の立場とはちょっと離れた固めの文章を出したがりますね(21年は向田邦子の『あ・うん』)。また、三題構成なので随筆も毎年出るぐらいの心づもりでいいでしょう。これまでの塾の模試で、自分と近い立場の主人公が出てくる物語には強いけど、昔の文章や随筆はちょっと…というタイプの子は注意が必要かもしれません。昔が舞台の文章はとにかく人物関係や時代背景などを抑えること、随筆は事実+感想・意見という構造をつかんだうえでなぜ筆者がそういう視点を持つにいたったかを考える必要がありますね。

前受けとして考えた場合ですが、あんまりオーソドックスな良問って感じじゃないんですよね笑(もちろん他教科はわかりません)。だから、純粋に国語の力をつけるための練習として考えたらあんまりおすすめはしないかなあと。ただ、文章三題構成の問題で前受けできる学校ってそんなにないでしょうし、本番でも文章三題の学校を受ける可能性がある関西勢にとっては意味があると思います。逆に言うと首都圏の学校とは傾向が全然ちがうんですよね。関西では前受けでかなり人数集めている印象なんですが、首都圏で受ける方ってどれぐらいいるんでしょうね。

◎海陽特別給費・Ⅰ

ツイートもしたのですが、たぶん特別給費とⅠは別の先生が作っていると思います。で、特別給費の問題好きじゃないですねー。あの合格ラインでこういう問題出したらいかんでしょと。気になったところをあげていくと…

・大問1問2が傍線①「内からのまなざし」の具体例を選ばせる問題で、問3の答えが「外からのまなざし」。いや、それ一つの問いにまとめられるでしょ。ていうか①で思いっきり意識させてるから、問3の答えが「外からのまなざし」だとはむしろ思わないわ。

・大問1問8 問題文が「どういう感覚でとらえられますか」で、答えが「~実感」。「感覚」と「実感」って少なくとも私は微妙にずれていると感じます…

・大問2問10 人物の行動に線を引き、それは誰の行為かフルネームで答えさせる問題。え、ほんとにr4で68の学校が出す問題ですか…

ってな感じで、ちょっと許しがたいです。まあ全体としてのつくりはオーソドックスですし、平均点がめちゃくちゃになるということはないのですが、この問題を解いて学校に魅力を感じることはないでしょうね

逆に入試Ⅰの方がきちんとした作りで好感が持てました。記号選択・ぬき出し・記述のバランスがよく、記号選択は一つの選択肢が三行にわたる長めのものも出ますし、記述も20字で簡潔にまとめるものから70字の心情の変化、60字の相反する心情の説明を書かせていて、ボリュームゾーン上位の練習としては非常にいい問題でした。あと、説明的文章のロボットがテーマの文章が普通におもしろく(技術を進化させすぎないほうがクオリティが上がるという内容)、親子ともども興味持ってくれそうなFFさんに早速おすすめしました。学校HPに問題載っているので、興味ある方は読んでみてくださいー。

とまあ入試Ⅰを褒めちぎってみたのですが、たぶん問題作成者は持ち回りなんじゃないかと思うので、今年もⅠはいい問題が出るんじゃないですかとは言えないところがなんともまあ…(複数年見て予測するほどの気力はないですw)

特別給費と入試Ⅰで共通点を探すと、どちらも女子学生が主人公の物語を出題していることですかね。特別給費は小学生の女子同士の微妙な人間関係がテーマで、入試Ⅰは陸上で挫折した女子中学生がライフル射撃を志す話だったので、年代は離れていても小6男子には入試Ⅰの方がとっつきやすかったかなと思います。男子校で女子が主人公の物語が出題されるケースは結構増えている印象ですね。もう重松なんかがばんばん出る時代じゃない印象です。これは得意不得意はっきり分かれるでしょう。少なくとも今まで似たような文章を読んだことがあるという経験は、得点に影響を与えてくると思います。国語の訓練は基本的にはきっちり読んで、きっちり解いて、きっちり直しをすることが第一なんですが(きっちりの定義は長くなるんでここでは割愛)、多読という要素も無視はできないよなあと思います。

◎「前受け」について

最後に前受けについての私個人の考えを書きますが、注意してほしいのは私はコロナ前の入試しか知らないということです。ですから、コロナ後の現在には当てはまらないこともあるかもしれません。そこはご了承ください。

とりあえずなんですが、私は前受けは100%、例外なく推奨しますね。どの学校じゃなきゃいけないというのは特にありません。十分に合格できるぐらいの学校を選んでもらえたらそれでいいです。

コロナという別の問題が出てきたので今はこの意見をゴリ押せないのですが、未知の経験をそれぞれのお住まいの地域の入試のスタートまでに極力なくしたいんですよね。今までに模試は何回も受けていますが、模試は所詮模試です。慣れ親しんだ場所、顔ぶれで、合否が突き付けられるわけではないのでやはり甘えがあると思うんですよ。そこからいきなり本番に突入して、普段通りできる子もいれば、緊張してしまう子もいます。問題は、普段通りできるかどうかは本番を迎えてみないとわからないということです。絶対はないんですよね。まあ言ってしまうと第一志望の本番と前受けの本番はまた違います。しかし、そこまで言ったらきりがないですよね。第一志望の第一科目でガチガチに緊張してしまって何がなんだかわからないままで終わるというリスクを極力減らしたいです。無事、第一科目を落ち着いて終えられたとして、それが前受けを受けたからなのかは正直わかりません。前受けしたかどうかなんて一切関係ないという子もいるでしょう。ただ、リスクマネージメントとして、効果が仮にないとしてもできることはすべてやっておきたいので私は100%例外なく推奨します。前受けがよくない作用をもたらすこともあるかもしれませんが、(コロナでなければ)それに気づきさえすれば対処はできます。第一志望の本番にいきなり突入しての失敗には対処ができません。

あと、あえて前受けで落とした方がいい子もいるという意見もありますよね。まあその意見はわかるんですけども、それが当てはまる子供ってたぶん少数派だと思うんですよね。みんながみんな×をつけられて反骨心を持って頑張れるわけじゃないですよ。ちょっと脱線しますが、だからこそ入試本番までにはいっぱい×をつけるべきだと思いますけどね。今まで×がついていないのに本番でいきなり×がついたら心折れますよ。で、これは私の集団塾で働いていたときの経験なんですが、×がついて深刻なダメージを受ける子と〇がついて油断してしまう子なら前者の方がやや多く、かつ油断してしまった子をたしなめるのと精神的ダメージを負った子をケアするのでは労力は圧倒的に後者の方がかかると思っています。そうなると、担任を20人以上持っている集団塾の講師としては前受けは安全に合格させてくださいとなります。最大多数の最大幸福ですよ。うちの子はそれじゃダメだとお思いなら、〇と×どちらもつけてください。それもほぼ同時期に結果が出るといいでしょう。入試直前の子供ってなかなか繊細です。あまりメンタルに過度な刺激は入れない方がいいので、×が続くような入試日程は絶対にダメですね。

前受けで合格して油断するという問題については私は大したことないと思っているのですが、気をつけてほしいのは前受けだったはずの学校が本人の中でいつの間にか第一志望になることですね。それこそ海陽の特別給費の話なんですが、成績的にはちょっと厳しく、第一志望はその後の学校だった子が合格したんですよね。で、その子は海陽に魅力を感じたわけですよ。そしてどうなったかというとそれから気が緩んでもともとの第一志望は不合格だったわけです。まあ本人的にはダメージないですよね笑。行きたい学校に合格しているわけですから。このへんは保護者と塾でメンタルをケアする必要はあります。

最後に、まじめな人は進学する気のない学校を受験するのは失礼と感じるかもしれません。私はそんなこと全然考える必要はないと思っています。そもそも今回解いた海陽とか北嶺とか、あとはラサール系列とか愛光とかはどうしても地理的な問題がありますよね。だから生徒を集めることに対してすごく熱心という印象があります。進学する気が初めはなくても、住んでいる地域の入試でうまくいかなかったりとか、家庭の問題だったりとかで進学することになったという生徒のことを幅広く受け入れたいという気持ちはあるのかなあと。そしてもちろん前受けとしての入試は儲かります。いいじゃないですか、そのお金で進学した生徒がよりよい環境に身を置けるなら。学校は幅広く生徒を集められて、資金も集められる、塾は合格実績を稼げる、各家庭は第一志望に向けての練習ができる。保護者のみなさまの懐事情以外にデメリットはないんですよ。

まあもちろん実際進学するとなったら寮という問題は無視できないですね。合う合わないは当然あります。少なくとも私だったら絶対に嫌です笑。ただ、こういう学校に実際進学した生徒を見ると、この子にとってはこれがよかったんだろうなと思うケースはありますよ。



ってな感じでつらつら書いてみました。コピー代ぐらいはペイできたらと思っていますので、サポートいただけるとうれしいです!11月中に首都圏の女子校についても書けたらなと思いますー。

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