首都圏中受・上位女子11校の国語を解いてみての雑感

ツイッターのフォロワーの方は女の子の保護者の方が多いようで、その方々にはいつもお世話になっていますのでその感謝を少しでも表せたらと思い、首都圏女子校の雑感を書いてみました。どの学校も一回目の入試を解いています。少しでもみなさまの受験にお役立ち出来たら幸いです。

○2020雙葉

女子御三家の残り二つと比べると、桜蔭よりはJGよりですかね。一問一問はそんなに重くはないです。じゃあJGのようにテキパキこなしていってねで終わりかというと、そういうわけでもない。自由記述がところどころ出題されていて、妙にウェットな印象がある。そのウェットさも桜蔭のような深さを感じさせるものではなく、優等生的な解答を書いていればいいんでしょというふうに見えてしまう。女子では非常に珍しい論説文一題という出題も含め、桜蔭やJGとの差別化を図ろうとした結果、なんだかよくわからないことになっているなあと思いました。

問題そのものは癖があるという感じではなかったです。解けない悪問はないかな。ただ、条件が緩いぬき出しで抽象表現を答えさせるのかなと思ったら案外答えが具体表現のままで、難しく考えすぎてわからなくなるということがありました。正直、そんなしょうもないこと答えさせる?って感じです。まあ出るものは仕方ないので、過去問で慣れましょう。記述は難しくないのですが、簡潔にまとめるもの・できるだけ詳細に書くもの・自分なりの表現で考えて書くものと、出題される問題の種類は多彩ですね。簡潔にまとめるタイプは簡単だったので、後者二つの訓練が必要でしょう。

○2020吉祥女子

このレベルの女子校にしては首をひねるほどの記号選択問題がない(まあ雙葉は一問もなかったけど)。物語文の問3だけかな、難しく感じたのは。これくらいの記号選択をがんがん出せばいいのにと思ったのですが、平均は低いので記述の量に負けた子が多いのでしょうね。算数は毎年平均点が高く、この年は国語が低かったため国語勝負になったようです。雙葉・フェリス・吉祥女子・東洋英和は自由記述シスターズと記憶していましたが、そこでの100字+記述5問をいかにスピード感を持って書けたかの勝負になっていそうですね。他の学校でも書いたかもしれませんが、自由記述なんて所詮は主張+根拠or具体例というフォーマットに流し込むだけです。本文を読まなくても取れるような問い方になっていることが多いので、類題をこなして100字ぐらいは5分以内で書けるようにしましょう。

以下クレームです。物語文の最後、せっかく弟の行動がわかったことによって張り詰めた主人公の心情が弛緩するのに、なんでそこを問題にしないのか…心情の変化の記述なんてかなり作りやすそうなのに。

○2020洗足

ザ・上位女子校の国語。知識・ぬき出し・記号選択・記述がバランスよく出題されていて、記述がやや難しめ。しかし、超難問や奇問は出ていないので、素直に地力が出る問題です。ここの問題は狂おしいほど好き。選択問題がいいですね。どの選択肢も一定以上の分量があり、ちゃんと精読してどの部分がまちがいなのかを考えないと正解できない。ただ、えげつない引っ掛けはないのでちゃんと読めば正解できるという、ちゃんと読んでくれる女子向けの問題。今年は記述で論説文の問4、物語文の問4で書かれた内容をそのまままとめるというのではなく、設問の意味と文脈を自分でかみ砕いて答えなければいけない問題があって難しかったです。物語文の問6の情景描写の説明も易しくないです。その3問以外をノーミスという考えでも悪くはないのですが、ほかにも記述はありますし、どこかで取りこぼしがあってもおかしくない問題なので、ある程度型にはまったもの以外の難問にも対応しておけるようにしたいです。

冒頭にも書きましたが、ザ・上位女子校の国語です。女子だけで比べても、国語が得意だと言えるような実力が欲しい学校だと思いました。

○2020鷗友

ここも狂おしいほど好き。個人的にはプチ桜蔭という印象があります。出題形式が似ているというのと、基本に忠実に読んでいけば解ける問題が多いというところですかね。大きく異なるのは1問ごとの難易度で、鷗友の難問が桜蔭では標準といったところですかね。100字クラスの記述であっても本文の表現をつなげていくことで解答できるものばかりなので、量に臆せず取り組んでほしいです。

ちょっと脱線しますが、じゃあ同じく記述オンリーの男子校の芝なんかもプチ桜蔭になるかといったらそれはちょっと違うんですよね。すごく感覚的な話になるのですが、芝はこの傍線部に対してこの1か所をピンポイントで答えてみたいな、一問一答に感じられる短めの記述が多いんですよね。鷗友、というか女子校はピンポイントというよりは流れを踏まえて複数箇所まとめてねって問題の方が多い印象。だから、逆に言うと芝の最後の100字クラスの問題は鷗友受験者にはいい訓練になるかも。

最高点が94、合格者平均が69.3って記述しか出ていない割に高くないですか?この学校は問題用紙の表紙に校長からのメッセージが毎年載っていて非常に好感を持てます。そのイメージからの色眼鏡かもしれませんが、採点もかなり受験者に寄り添ってやってくれているのではないかという希望的観測を持ちました。

○2020豊島岡

あえて洗足・鷗友の後に持ってきました。洗足・鷗友の国語が上位女子校らしい難易度であるのに対して、豊島岡って学校が持つ偏差値に比べると簡単な問題なんですよね。もちろんめちゃくちゃ簡単というわけではないですし、しっかり練られた記号選択が中心なんですけれども、悪魔的な難しさのものはないですし、記述が分量・質ともに大したことがないので十分な時間があればこのレベルを受ける女子なら正確に解くことができます。そりゃ合格者平均は8割超えますよ。

ってことで完全な算数勝負ですよね。女子校とはいえここまであからさまな算数勝負はなかなかない。国語が得意な女子っぽい女子はアドバンテージがほぼ出せなくて苦しいでしょう。学校がそういうタイプを求めていないのでしょう。

ここからは偏見ですけど、算数できる女子を求める女子校は豪傑タイプが多いですよね。ここのおじさんの教員はきっと生徒にいいように弄ばれていると思うw

○2020立教女学院

毎年の傾向ではないのだろうけれども、論説文は読みづらいけれども問題は簡単というパターンです。文章全体に対して深い理解がなくとも、問いの意味を理解して傍線部付近を丁寧に読めば記述以外は満点を取れますね。物語文はもっと簡単。記述含めてノーミスで解けてもおかしくないです。論説文の記述だけ難しいです。指定語句が二つあるうちの一つは簡単に使えるので、半分は取れます。しかし、もう一つの指定語句の使い方がふわっとしているため、満点は取りづらい。使いづらい方の指定語句をきちんと使おうとすると、私が見た模範解答のように(どこの模範解答かは察してくださいw)、とてもおさまりの悪い解答になってしまうんですよね。で、学校のHPを見たら、最高点が満点なんですよね…あれ、これそこまできっちりとした解答を学校が用意していないのでは?という疑惑があります。

偏差値的にはここで挙げた学校と同等なんですが、問題の質は全然違いますね。どの教科もバランスよくミスなく取ることを求められる、付属っぽい問題だなと感じました。この問題じゃ外部に出る子は集まらないだろうなと思ったら、多くはないけれども外部受験する子もいるんですね。意外。

○2020東洋英和

簡単です。漢字の書き取りで四字・三字熟語が出ていますが、そこさえクリア出来たら満点も取れそうです。物語が新見南吉、説明的随筆が井上靖の文章からの出題なのでちょっと読みづらさは感じるかもしれませんが、どうもこうもならないというレベルではないです。語句の意味や表現技法、修飾関係などちょっと知識題が多めかとは思いますが、普通に塾のカリキュラムをこなしていれば対応できるレベルです。自由記述は、本文中の抽象表現について具体例を挙げるというものであり、設問文の中で抽象表現の意味をかみ砕いてくれてはいないので雙葉や吉祥女子のものより難しいかも。他の問題が難しくないので、自由記述で差がつく恐れはあるかな。

この問題からどういう子が向いているか、どんな子を求めているかを書きたいのですが、いまいち浮かんでこないんですよ。国語ができる女子っぽい子を集めたいようにも見えない、理数系を集めたいわけでもない、そのくせ知識題や図示して説明する問題や自由記述などくせのある問題は出す。意図は感じられないけど凝っているというふんわりとした印象しか持てない問題でした。

○2020頌栄

いやあいい問題。しかもめっちゃ難しい。ここまで解いたなかじゃ一番難しく感じました。また、立教女学院とか東洋英和のとりとめのない問題を解いた後なので主題がはっきりしているのにも感心。死生観と魂のつながり、それを本文に表現のままでなく、比喩の説明の形で自分なりの表現で書かせる。繰り返しますが、ほんとにいい問題。こういう問題を塾のテキストで使用したい。ここはどう考えても情緒豊かな本を読める女子を求めている学校ですわ。

文章一題とはいえ40分で記述6問はなかなか多め。じっくり深く読んで解くだけでなく、相当な処理能力も必要とされます。特に最後の2問の比喩の説明は答えのフォーマットがないタイプの問題なので、こういう問題を書き慣れていないと時間をたくさん使ってしまいそう。記号選択はどのダミーももっともらしいことを述べているのでやっかい。ある程度時間をとって考えたいところですが、記述に時間を取られるとそれも難しそう。非常に高いレベルでの地力・総合力が問われるテストですね。

○2020学習院女子

難しいんですが、私は嫌いな難しさですね…本質的なところでは大きくぶれないのですが、それをどう書き表すかはいくらでも方法があるといった印象。結果として、答えを一つに絞れないんですよね。実際、私が書いた解答と私が見た模範解答は表現の仕方が全然ちがいます。で、救いとしては受験者平均が61点ということは、合格者平均は65~70と推測されるので多様な表現をおそらく認めて採点しているのであろうということ。ただ、採点はブラックボックスなのであまり信用しすぎるのも考えものですしね。

かちっと答えを出せる問題とふわっとしか答えを出せない問題に二分されるので、まずは前者(問1・2・3・5・7あたり)を確実に合わせたいところ。問9はふわっとした答えですが、主題に関わる書きやすく、配点も高いと予想されるところだから抑えておきたいところ。逆に問4なんかは解答の幅が広すぎて答えがまったく絞れないので捨ててもいいです。問4は悪問だと思うんだけどなあ…頌栄もそうなんですが、本文の表現だけでなく自分なりの言葉で書ける表現力は必須ですね。

○2020フェリス

ちょっと古い文章を出すこともある学校という印象はあったのですが、ごりごりの歴史小説出してくるとこはほぼ記憶にないですね。まあ有名すぎるところを題材にしているので、背景知識で差がつくことはありませんが。

ここは過去問演習のしがいのある学校だと思っています。なぜなら、時間配分が独特だから。鷗友もそうなんですが、大問1と大問2で問題数が全然違うので均等に時間を配分するわけにはいかない。問題数が少ない方に自由記述がついてくる年はほぼ均等配分で問題ありませんが、問題数が多い方についているときはちょっと話が変わる。どちらのパターンでも余裕をもって解けるようにしておきたいです。これこそまさにアウトプットの練習たる過去問を取り組む意味ですね。

問題自体は簡単です。平均点は国語より算数の方があからさまに低いです。算数勝負なのに自由記述なんて面倒なものを出しているのが特徴的です。算数勝負でこの偏差値の割に国公立の進学実績がめちゃくちゃ出てるってわけでなく、200字の自由記述を苦にしない生徒が私立大のAO利用しているのかななんてのは穿った邪推ですかね。

○2019白百合

くせのない上位女子校にふさわしい難易度の問題です。40分という時間設定は少し短いですが、それでもあまりにノーマルすぎて特に対策せずとも女子ならある程度取れちゃうだろうなという印象です。記述量は多い方だとは思いますが、どれも素直に傍線近くに本文中の表現を繋げていくことで答えを作れる良問です。くせがなさすぎてそりゃ平均点も上がります。せっかくの良問なんだから、ふるい落とすような難しい記号選択問題をスパイスとして少し入れたら?と物足りなく思ってしまうところもあります笑

平均点を見ると、例年完全な算数勝負ですね。ここの国語は受験する生徒のレベルからすると取れて当たり前ってことです。で、フェリスにも共通することですが、学校の偏差値・算数勝負ということをふまえると国公立の進学実績がさびしく映ります。私のような地方の低所得層出身者からは想像もつかないのですが、いわゆるお嬢様学校にとっては国公立大学なんて東大でもない限り大して価値を持たないのだろうなと思い知らされました…


◎最後に

以上で終了となります。少しでもみなさまのお力になれたでしょうか?次回は関西の学校をやろうかな、どうしようかなって感じです。

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今回は校数があまり多くないのと、好きなタイプの問題が多かったので楽しく終えられましたー。


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