トーストを作ってもらえるほどの関係性。
香ばしい香りと、美しい焼き色。
毎朝トーストを食べているが、毎朝新しい感動がある。
「トーストとコーヒー。
こっちは準備が楽だけれど、飽きない?
たまにはホットサンドとか作ろうか?」
眠そうな声で、ヨーグルトの入ったボウルをつつきながら、彼女が言う。
ヨーグルトにスライスしたバナナ、オールブラン、きな粉、はちみつ。
これが彼女の朝食の定番だ。
「トーストが好きなんだ。
それに毎日同じものっていうけれど、日によって焼き加減とか香りとか違うものだよ。」
そう説明しても、彼女はもう興味がなさそうだった。
代り映えのしない、退屈なまでの日常。
繰り返されるトースト。
それがとても美しいのだ。
「それにさ、トースト作ってもらえる関係性ってすごくない。
日常にいるのが当たり前なんだよ。」
不格好なメガネをかけた彼女の表情が、少し明るくなった。
家ではコンタクトを外し、ちょっと不格好なメガネ姿になる彼女の姿は、とってもかわいらしくて好きなのだ。
「そうかしら。
毎日夕食を作ってもらえることのほうが、すごいと思うけど。」
ヨーグルトを食べ終え、やっと少し目が覚めたように彼女が言う。
このあと30分もすれば、きれいにお化粧した、パリっとした姿になる。
家で見る、なんだかふんにゃりした彼女も好きだけれど、パリっとした姿は毎朝惚れ直す。
「今夜はなにかあっさりしたものがいいな。
よろしくね。」
そう言い残して、パリっとした彼女が出かけて行った。
さぁ、僕も今日の日常をはじめよう。
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