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もぐら本2 制作裏話/ほとんど接点のない人に話を聞いたら5万字以上になった聞き手の話。

こんにちは。もぐら本2制作チームのふみです。

私は、「もぐらの鉱物採集2 インターネットの外側で拾いあつめた言葉たち 二〇〇〇ー二〇二〇」を形にしていく制作チームに加わるとともに、“聞き手”としても参加ししました。初めての聞き取り、初めての文字起こし、初めての文章推敲……その中でどんなことを感じたのか、みなさまにお伝えしたいと思います。

なぜこのプロジェクトに参加したのか

編集長のエミコさんの文章がとても好きでした。すてきなnoteはたくさんありますが、私はあえてのキムタク推し……

そのエミコさんがもぐら本の編集長に手を挙げたならば、ついていくしかない、一緒にものづくりをしてみたい!とミーハーな気持ちもあり、とにかくエミコさんが作る本に関わりたかった一心で参加を決めました。

聞き手になることを決意する

聞き手としても参加することに決めたものの、

・執筆未経験者である自分が、聞き取りから書くまで遂行することができるのか。

・圧倒的な一人を選び抜けないのは失礼なんじゃないかという気持ち。

・魅力的なもぐら会のメンバーのお話をあますことなく聞き取れるのか。

・自分以外の人がやったらもっと魅力的な聞き取りになるのではないか。

自分なんかがやっていいものなのか……なぜか卑屈になってしまう。

人の人生の話を聞き取ることは、こうも緊張して、大きなプレッシャーや期待を勝手にかけてしまうのかと自分でもびっくりしました。

やりたいけど、どうしよう。そわそわと、自信喪失している私でしたが、エミコ編集長は、生活史を聞き取ることは根本的に“暴力的”であることが大前提であり、「おもしろい話を引き出すことが目的ではないこと」「誰がやるどの原稿もきっと良い原稿になることを私は信じている」と、とても丁寧に繰り返し伝えてくれました。

そうして、私が私のまま語り手さんと同じ時間を過ごすことで十分じゃないか。だってやったことないし、ハードル上げなくても大丈夫と、ふん切りがついたのです。

やろう!と決意すると不安よりも楽しみの方が多くなり、やる気が湧き上がってきました。

聞き取り準備

語り手の方とは、お話し会に同時参加したこともなく、ほとんど接点はありませんでしたが、もぐら会のみなみなに愛されている方ということは知っていたし、お話ししてみたいと思っていた方でした。

突然マンツーマンは緊張するので、その人となりを知っておこうともぐら会のslackをさかのぼったり、noteを読んだりして、具体的に聞きたいイメージを膨らませていきました。

エミコ編集長からは”100個の質問を考えて当日すっぱり忘れる”というアドバイスがありましたので、思いつくまま質問を書き出しながら、キャリア、恋愛・結婚、子どもとのかかわり、ライフスタイル、未来について、猫についての項目に分けて、最終的に100個考えました。これはやっておいてとても良かった。こんなに一人の人のことを考え続けたのは久しぶりです。この段階で語り手さんのことを結構好きになっています。

聞き取り当日

聞き取りをする場所は、語り手さんがリラックスできるようにと場所を選びました。

なにかともぐら会の中では耳にするそのカフェは、私にとって初めて行った場所でしたが、彼女が普段知っている人とおしゃべりする様子など、自然な雰囲気も知ることができてとてもよかったです。なによりプリンがとてもおいしかった。

あれだけ緊張していたはずなのに、いざはじめてみると聞きたいことが自然に出てくるし、私もリラックスしてお話しすることができました。準備した質問の紙を見ることはありませんでしたが、話を聞くうえでイメトレできて参考になりました。

自分の今の状況と重ねたり、未来に希望を見出したり、時間を行ったり来たりしながら話した20年間分の聞き取りは全部で2時間40分。想定していた時間よりだいぶ長くなりましたが、あっという間に時間は過ぎました。

こんなに一人の人の話を時間をかけて聞くなんて、久しぶりです。妙にハイになり、何とも言えない充実感とともに、語り手さんへの愛おしさが増しました。

文字起こし~1万字(完成)へ

これは正直大変でした。特に今回は”そのまま”起こすことが必須となっていて、小さな笑いや相槌まで正確に起こそうとすると『いひひひひひ』『そうそう、そうだね、そうそそうそう』『ふふふふ、そうそう。そう。』みたいな笑い方や相槌をどう表現するか悩みました。(全部そのまま起こしました)完成まで12時間ちょっと、最終的に50,000字以上になりました。

人って10秒間程度でも、ものすごい量の言葉を発しているということも、このとき初めてわかりました。おしゃべりができるって実はものすごく難易度高いものなんじゃないかと思います。

その後、10,000字までエピソードをカットしていくのですが、聞き取りをする/文字起こしをした時点で、もうこの50,000字を愛してしまっている私にとって、本当に大変な作業でとても悩みました。どのエピソードも、どの場面の語り手さんも全部好き。

カットしては戻しを繰り返して繰り返して、10,000字になるまで、何度読み返したかわかりません。10,000字で完成した時は本当にうれしかったし、何度も何度も自分でも読んで、たくさんの人に読んでほしい原稿になりました。

これの原稿は、私が書いたのではなく、すべて語り手さんの言葉そのままなのです。そのままで素敵な原稿になるというエミコ編集長の言葉が、最後にようやくわかりました。

最後に

この聞き取りの途中、過去にした自分の選択、恥ずかしかったこと、幸せについて、これからの希望、毎日の反省など……いろんな感情が沸き起こりました。

そして、当たり前に一人一人は違うんだ。正解もないし、いい悪いもなくて、その人が『ただ今ここにいて話しているという事実で十分』ということに気が付きました。それは自分も同じだということに気が付きます。

今までの自分も今の自分も、あなたもあなたも、今までも今日もいろいろあったけど、でもこうして生きてるじゃんね。という気持ち。スンッと、地に足がついた感覚になりました。

もぐら本2は高校生の私に読んでもらいたかった本です。まわりを見るとみんな颯爽と生きてる人ばっかりに見えるけど、それぞれに決まった道を歩いているわけじゃない。休んでもよくて、違ってもよくて……大丈夫。みんな大丈夫よって知っていたらよかったな。

ぜひご家族に1冊、おうちの本棚に忍ばせていただけるとうれしいです。

もぐら本2、末永くよろしくお願いします。


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