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自衛とファッションと口を出す人たち

「女性が露出度の高い格好をしていると論争になる」という問題が定期的に起こる。別に某女性DJの例に限らず、最近はモデルの子が露出度の高めな服装に「痴漢に狙われるからやめとけ」みたいなことを言われて「痴漢のほうが悪いのになぜこちらが言われるのか」というようなことを言っていた。

世論としては、というかまあ通常のこととして「犯罪行為を行うほうが圧倒的に悪い」のは確かである。ただ、一定数あるのが「それはそれとして自衛が必要なのでは」という声。正直これも一理あると思っている。なぜか。被害者側は全く悪くはないのだが、被害にあった時に「向こうが悪かったのだからこの被害にも後悔はない。相手が罰せられるならOK」という気持ちになれるのか、という問題があるからである。

実際に被害に遭ったという前提だが、「危険に近づいた結果被害に遭った」という部分だけ取り上げると、構造的には「台風の時に田んぼを見に行って被害に遭った」みたいなところと少し似ている。ただ台風に関しては「犯罪者」が存在しないので、例え作物が心配であろうとなんだろうと「見に行ったほうが悪い」ということになってしまう。危険なことはわかっていたのだから、という論調である。もし仮に性犯罪が多発してます!みたいな治安の悪いエリアに行き、露出度の高い格好をしていて被害に遭った、とするとどうだろう。もちろん悪いのは犯罪者のほうなのだが、「あんな場所であんな恰好をするなんて警戒が足りない」という声が少なからず出るだろう。

先ほどの話に戻るが「仮に被害に遭ったとしても『好きな格好を貫いただけなのだから後悔はない』と言い切れるのか?」という問いは常について回る気がする。かなり昔の漫画だが、吉田秋生(BANANA FISH、海街ダイアリーなどの作者)の作品で、性被害に遭った女子高生が言ったセリフでずっと覚えているものがある。

「犬にかまれたと思って忘れちまえよ、と男たちは言うけど、じゃああんたは犬にかまれたことを忘れられるの?」(詳細はちとうろ覚え)

かなり昔の作品なので、その時代の男が無責任に「犬にかまれたと思って…」と発言する背景もわかる。そこにこのカウンター、確かに犬にかまれたことなんてずっと覚えているものだ。軽々しく他人が済ませられることではないんだな、とその漫画を読んで思ったものだった。この漫画自体はたしか80年代くらいの作品だが、読んだのは自分が親になってからだったので色々感じ方が違うというのもある。漫画タイトルは「河よりも長くゆるやかに」だったかな?

まあ実際、日本で普通に過ごすときでさえ犯罪を気にして、着たい服も着られずに過ごす、というのが正しいとは思わない。件のモデルの子が海外の犯罪多発地域に行った時にはさすがに似たような格好はしないだろうし。犯罪が起こらなければまあそれでいい話なので難しいのだが…。

着たい服や恰好を邪魔する権利は誰にもない。でも、自衛できるのも自分しかいない、ということかな。

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