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テンプレートとテンプレート外の話

最近、ある漫画の1巻を読んだ。中世の男性社会の中で女性が奮闘するという内容だったのだが、正直前半を読んでいる頃は「またこういうやつか…」と思っていた。
「気難しい師匠に弟子入りするために頑張る→無理と思われる課題を押し付けられる」という、あんまり新鮮味のない展開。「まさか、徹夜でやって『お前…ほんとにやったのか』パターンじゃないよね?」と思ったがそのパターンだった。
そして弟子入りが認められるが今度は大量に荷物を運ぶ作業を押し付けられる。「まさか、転倒して荷物が道に散乱するパターンじゃないよね?」と思ったがそのパターンだった。

「ヤバい、早々に飽きそうだ」と思ったところから、別のキャラクターとの出会いを経て少し面白くなってきたところで1巻終了。

全くの勝手な推測だが、本当に描きたかったのが後半の出会いくらいからであって、そこまでは「女性が初めての世界で奮闘することの困難を分からせるための下地」だったのではないかと感じた。確かにそういう部分がないと特殊な時代背景であることの説得力がない、となるのだろう。人気漫画でも最初の助走期間ではアンケートがよくなくて後から盛り返したパターンも多いと思う。でも下地を丁寧にやってたからこそ、それが伏線となって説得力が出る…ということはわかるのだが、あまりにも「これ背景説明のために付け足してるな」と思われるとあんまりいい印象がない、というかだいたいシーン自体も冗長になりがちだ。

編集との打ち合わせがもしかしたらこんなのだったのかも。
「この時代女性が弟子入りするのは大変だからそのシーンを入れよう」
「じゃあ何件も回るとか、10件連続断られるとかですかね
「最終的に無理めの課題を押し付けられてそれをクリアかな」
「どうやってクリアする形がいいでしょうか」
「徹夜で根性を見せて師匠が根負けする…とか」
「ふむう」

まあこれだけ漫画やアニメが出てると「ま~たこのパターンか」というものに当たるのは仕方ないのだが、それでも「うぉ、この展開か」というものが出てくるから、突き詰めて考える人は考えているんだろう。
小説でも映画でも、ついでにいうと広告コピーでも同じだ。
「はいはい、また『小さなネジの大きな夢』(朝ドラの舞い上がれ!で出てた)みたいなタイプの対句でしょ?」と思っていてもそこから外したような組み合わせや、そことそこをくっつけるのかあ、みたいなのが出てくるものだ。

「よくあるテンプレ」と「よくあるようでなかった」の違いはどこにあるのか。そこを見極めることが「新しさ」を生む近道と言えるだろう……てなとこで終わる文章を読むと「で、結局その見極め方は何なのよ」と思うもんだが、それを知っているならこっちもバンバン受賞しているわけで、それは各々で考えてみてほしい。

どうでもいいが「各々」が「おのおの」と読むの、どうも一瞬ピンとこないな。

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